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イノベンティア・リーガル・アップデート

飯島 歩 の投稿記事一覧

Innoventier Legal Update
イノベンティア・リーガル・アップデートでは、有益な法律情報をいち早くピックアップし、分かりやすく解説します。
 

弁護士職務基本規程57条違反行為と訴訟行為排除の可否に関する「多環性カルバモイルピリドン誘導体」事件最高裁決定

最高裁判所第2小法廷(草野耕一裁判長)は、本年(令和3年)4月14日、弁護士法に違反する場合は別段、訴訟行為が弁護士職務基本規程57条(職務を行い得ない事件)に違反するにとどまる場合には、相手方は、その排除を求めることができないとの判断を示しました。

基礎出願に対する新規事項を含む発明についてのパリ優先権(部分優先)の効果に関するブルニアンリンク作成デバイス事件知財高裁判決について

知的財産高等裁判所第3部(鶴岡稔彦裁判長)は、令和2年(2020年)11月5日、パリ優先権を主張した国内出願にかかる発明において、基礎出願にない新規の構成が含まれていた場合であっても、直ちに優先権の効力が失われて特許が無効になるのではなく、当該構成について引用発明との関係における新規性や進歩性の有無の充足が個別に検討される必要がある旨判示するとともに、部分優先の具体的な適用手法を示す判決をしました。

インターネット上のサービスに使用される役務商標の類似性等に関する「リシュ活」事件大阪地裁判決について

大阪地方裁判所第21民事部(谷有恒裁判長)は、令和3年1月12日、学生の履修履歴等を基礎にした就職・採用活動支援サイトについて「リシュ活」の商標を使用することが、「職業のあっせん」、「求人情報の提供」(第35類)を指定役務とする商標「Re就活」にかかる商標権を侵害するものとして、その使用の差止めや損害賠償などを命じる判決をしました。

特許法148条1項に基づく無効審判参加人の審決取消訴訟における被告適格に関する「止痒剤」事件知財高裁中間判決について

知的財産高等裁判所第2部(森義之裁判長)は、令和2年(2020年)12月2日、特許法148条1項に基づき延長登録無効審判に参加した参加人について、無効審決に対する審決取消訴訟における被告適格が認められるとの判断を示しました。判旨は、延長登録無効審判のほか、特許無効審判、再審の審決に対する取消訴訟にも適用されるものと考えられます。

特許異議申立てにおいて新規事項を理由に訂正請求を認めなかった取消決定を取り消した機械式駐車装置事件決定取消訴訟知財高裁判決について

知的財産高等裁判所第3部(鶴岡稔彦裁判長)は、令和2年(2020年)12月3日、新規事項を含むことを理由に特許異議申立てにおける訂正の請求を否定し、異議申立てにかかる各請求項について、新規性ないし進歩性欠如を理由に特許を取り消した特許庁の決定について、新規事項にかかる判断に誤りがあったものとして、同決定を取り消す判決をしました。

防護標章登録の要件としての「需要者の間に広く認識されている」の解釈を示した「Tuché」事件知財高裁判決について

知的財産高等裁判所第4部(大鷹一郎裁判長)は、令和2年(2020年)9月2日、防護標章登録の要件としての「需要者の間に広く認識されている」の意味について、原登録商標の指定商品の需要者との関係で、原登録商標がその商標権者の業務に係る指定商品を表示するものとして、全国的に認識されており、その認識の程度が著名の程度に至っていることをいうことを意味するとの見解を示しました。

共同出願契約における特許権の「剥奪」の解釈として当事者間における持分権の喪失をもたらすとした「結ばない靴ひも」事件知財高裁判決

知的財産高等裁判所第1部(髙部眞規子裁判長)は、令和3年8月20日、特許権の共有者が当事者となる共同出願契約において、特定の契約違反があると違反当事者の特許権が「剥奪される」との定めがあった場合に、当該違反行為があったときは、違反当事者は、本件各特許権に係る自己の持分権を喪失するものと解するのが相当であるとの判断を示しました。

販売先の債務不存在確認を求める訴えについて確認の利益を否定した「樹脂フィルムの連続製造方法及び装置及び設備」事件最高裁判決について

最高裁判所第2小法廷は、令和2年9月7日、特許権者から通常実施権を受けて製品を製造販売している者が、特許権者に対し、その製品の販売先が特許権侵害に基づく損害賠償債務を負わないことの確認を求めた訴えについて、確認の利益がないとの判断を示しました。

自然法則の利用と発明該当性に関する「電子記録債権の決済方法、および債権管理サーバ」事件知財高裁判決について

知的財産高等裁判所第3部(鶴岡稔彦裁判長)は、令和2年6月18日、拒絶査定不服審判における不成立審決に対する審決取消訴訟において、特許法29条1項柱書の「発明」の該当性に関し、たとえ「特許を受けようとする発明」に何らかの技術的手段が提示されているとしても、全体として考察した結果、その発明の本質が、単なる精神活動、純然たる学問上の法則、人為的な取決めなど自体に向けられている場合には、同規定にいう「発明」に該当するとはいえないとの判断を示しました。

他人の画像を無断でアップロードしたツイートのリツイートと氏名表示権侵害に関するリツイート事件最高裁判決について

最高裁判所第三小法廷(戸倉三郎裁判長)は、本年(令和2年)7月21日、ツイッターにおいて、他人の画像を無断でアップロードしたツイートをリツイートした際に、画像が自動的にトリミングされ、画像に含まれていた著作者の氏名が表示されなくなった場合に、氏名表示権を侵害するとの判断を示しました。

品質等誤認表示において規制の対象となる事項の範囲に関する八ツ橋事件京都地裁判決について

京都地方裁判所第2民事部(久留島群一裁判長)は、令和2年6月10日、不正競争防止法2条1項20号の「その商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示」について、これらの事項は同法が規制する事項を限定列挙したものであるとの解釈を示しました。他方、判決は、そこに列挙されていない事項についての表示であっても、商品の優位性と結びつくことで需要者の商品選定に影響するような表示である場合には、品質、内容等を誤認させる表示となる余地が残るとも述べています。

「AI介護」の標準文字商標につき自他役務識別力を欠くとして拒絶査定不服審判の不成立審決の取消請求を棄却した知財高裁判決について

知的財産高等裁判所第4部(森義之裁判長)は、令和2年3月25日、「AI介護」の文字を標準文字で表してなる商標の商標出願(第44類)につき、自他役務識別力を欠き商標法3条1項3号に該当するとして、同出願を拒絶した拒絶査定に対する不服審判における不成立審決の取消請求を棄却しました。

応用美術の著作物の翻案権侵害を否定した照明用シェード事件東京地裁判決について

東京地方裁判所民事第40部(佐藤逹文裁判長)は、令和2年1月29日、原告の創作にかかる照明用シェードは、美術工芸品に匹敵する高い創作性を有し、その全体が美的鑑賞の対象となる美的特性を備えるとして、美術の著作物に該当するとしつつ、被告の製品からは、原告の照明用シェードの表現上の本質的特徴を直接感得することができないとして、著作権(翻案権)侵害を否定しました。判決は、詳細な検討をしてはいないものの、同じ理由から、著作者人格権(同一性保持権)の侵害も否定しています。

実施可能要件違反を理由とする特許無効の抗弁の成立を認めた「加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置」事件東京地裁判決について

東京地方裁判所民事第46部(柴田義明裁判長)は、令和2年1月30日、発明の名称を「加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置」とする特許について、実施可能要件違反を理由に、その権利行使を否定する判決をしました。

ノウハウの提供と特許発明の実施許諾を内容とする契約の終了後のロイヤルティ支払い義務に関する「WBトランス」事件大阪地裁判決について

大阪地方裁判所第21民事部(谷有恒裁判長)は、令和和元年10月3日、ノウハウの提供や特許発明の実施許諾を目的とする技術提供契約に関し、同契約に基づいて提供されたノウハウは営業秘密に該当せず、契約の実質は特許権に基づく実施許諾契約であるとするとともに、特許権消滅後にロイヤルティの支払いを義務付けることは特許権の本質に反する行為であるとして、対象特許が期間満了により消滅した後の実施行為についてロイヤルティの支払い請求や差止請求を棄却する判決をしました。

UFOの飛行原理の実施可能要件に関する「UFO飛行装置」事件審決取消訴訟知財高裁判決について

知的財産高等裁判所第3部(鶴岡稔彦裁判長)は、令和元年12月25日、発明の名称を「UFOの飛行原理に基づくUFO飛行装置」とする特許出願にかかる拒絶査定不服審判の不成立審決に対する審決取消訴訟において、明細書の記載内容が運動量保存の法則や作用反作用の法則に反し、また、実験結果が示されていないことを理由に、実施可能要件の充足を否定する判決をしました。

現実に適用されている再放送使用料の1.5倍の額を有線放送権侵害に基づく損害額に認定した知財高裁判決について

知的財産高等裁判所第3部(鶴岡稔彦裁判長)は、令和元年10月23日、ケーブルテレビ事業者がテレビ放送事業者から著作権等の管理の委託を受けた著作権等管理事業者の著作権・著作隣接権を侵害した事案において、運用されていない使用料規程に基づく損害計算を否定し、現実に当該著作権等管理事業者とケーブルテレビ事業者の間の使用料を規律している合意に基づき、その1.5倍の額を損害と認定する判決をしました。

専用実施権者に実施義務を認めつつ義務違反は否定した「稚魚を原料とするちりめんの製造法及びその製品」事件知財高裁判決について

知的財産高等裁判所第1部(高部眞規子裁判長)は、本年(令和元年)9月18日、特許権者と専用実施権者との間に、専用実施権者が発明を実施する義務を負う旨の黙示の合意があったことを認定しつつ、当該実施義務の違反は認められないとする判決をしました。

ウェブサイトのリニューアルの委託契約と著作権合意の解釈等に関する「ライズ株式スクール」事件大阪地裁判決について

大阪地方裁判所第21民事部(谷有恒裁判長)は、ウェブサイト制作委託契約の注文書において、ウェブサイト制作者に著作権が帰属する旨の記載があったにもかかわらず、証人尋問の結果に加え、契約の背景や内容などの実態を考慮して、当該記載にかかる合意の成立を否定する判断を示しました。

進歩性判断における予測できない顕著な効果の位置付けに関するドキセピン誘導体含有局所的眼科用処方物事件最高裁判決について

最高裁判所第三小法廷(山崎敏充裁判長)は、医薬化合物の進歩性の判断に際して顕著な効果を考慮するときは、当業者が、進歩性判断の対象となる発明の構成がその効果を奏することを予測できたか、また、当業者の予測を超えた効果を奏するかを判断すべきであるとの考え方を示しました。判決は、条文上の根拠が不明確な顕著な効果の位置付けについて、いわゆる独立要件説に近い考え方を採用したものと考えられます。

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