飯島 歩 の投稿記事一覧
競業避止義務及び秘密保持義務に違反した代理店及びその役員に対して限界利益相当額の損害賠償を命じた「レキシル」事件東京地裁判決について
2025年1月22日 裁判例情報(商標・不正競争) 飯島 歩 (131)
東京地方裁判所民事第47部(杉浦正樹裁判長)は、令和6年(2024年)10月10日、代理店契約に違反して競業行為を行った代理店に対し、競業避止義務違反及び秘密保持義務違反があったとし、代理商の競業避止義務違反に関する会社法17条2項を適用して、被告会社が得た限界利益に相当する額の賠償を命じる判決をしました。判決は、被告会社の代表取締役についても、会社法429条1項に基づき同額の損害賠償を命じ、両者の支払義務の関係を連帯債務としています。
営業秘密を理由とする訴訟記録閲覧制限の申立てを却下したテレビ宮崎事件最高裁決定について
2024年12月26日 裁判例情報(紛争解決手続) 飯島 歩 (131)
最高裁判所第一小法廷(深山卓也裁判長)は、令和6年(2024年)7月8日、訴訟記録の記載が不正競争防止法上の営業秘密に該当することを理由とする閲覧制限の申立てを却下する決定をしました。同決定には、深山卓也裁判官による補足意見が付されているところ、同補足意見は、改めて不正競争防止法にいう「営業秘密」の意義を確認し、閲覧制限が認められるためにはその該当性について疎明が求められることを示すとともに、「近年、民事訴訟法92条1項2号による訴訟記録の閲覧等の制限の申立てにおいて、申立てに係る部分が営業秘密に該当することの疎明が十分にされていない事案が少なからず見受けられることに鑑み、本件申立てが却下を免れない所以を補足した次第である。」と述べています。
「Nepal Tiger」の標準文字商標は商標法3条1項3号にも同法4条1項16号にも該当しないとした「Nepal Tiger」事件知財高裁判決について
2024年8月2日 裁判例情報(商標・不正競争) 飯島 歩 (131)
知的財産高等裁判所第3部(東海林保裁判長)は、令和6年(2024年)4月11日、「Nepal Tiger」の文字を標準文字で表してなり、指定商品を第27類「じゅうたん、敷物、マット、ラグ、ヨガ用マット、織物製壁紙、壁掛け(織物製のものを除く。)」とする商標についての商標登録出願にかかる拒絶査定不服審判の審決取消訴訟において、原審決を取り消す判決をしました。同商標出願は、商標法3条1項3号及び同法4条1項16号を理由として拒絶査定を受けていたところ、本判決は、「Nepal Tiger」の語は一体の造語であって、取引者・需要者が指定商品に係る商品の産地、販売地又は品質を表示したものと認識するとはいえず、また、ネパール産のトラ柄のラグ等以外の指定商品に使用されても、商品の品質の誤認を生ずるおそれはないと判断しています。
クレームの数値範囲を備えた実施例がない発明について技術常識に基づきサポート要件の充足を認めた「鋼管杭式桟橋」事件知財高裁判決について
2024年7月29日 裁判例情報(特許・意匠) 飯島 歩 (131)
知的財産高等裁判所第1部(本多知成裁判長)は、令和6年/2024年1月23日、サポート要件違反を理由とする特許庁の無効審決を取り消す判決をしました。特許請求の範囲に記載された数値範囲を備えた実施例が明細書に記載されていない発明について、特許庁はサポート要件に違反するとの判断をしましたが、本判決は、明細書の記載と技術常識に基づいてサポートが認められるとし、無効審決を取り消しました。
登録商標が商標法3条1項3号に該当するとして登録無効審判における不成立審決を取り消した「くるんっと前髪カーラー」事件知財高裁判決について
2024年5月8日 裁判例情報(商標・不正競争) 飯島 歩 (131)
知的財産高等裁判所第2部(清水響裁判長)は、令和5年(2023年)9月7日、登録商標「くるんっと前髪カーラー」について、指定商品である「頭飾品、ヘアカーラー(電気式のものを除く。)」(第26類)との関係で、商品の品質、効能等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるとし、当該商標登録は、商標法3条1項3号に基づき無効にされるべきものであるとの判断を示しました。
ファッション商品写真にかかる著作権及び著作者人格権の侵害に関するBEEPSHEEPSHAMP事件東京地裁判決について
2024年4月3日 裁判例情報(著作権) 飯島 歩 (131)
東京地方裁判所民事第47部(杉浦正樹裁判長)は、令和5年5月18日、ファッション商品の販売のための写真の著作物について著作物性を肯定し、著作権侵害及び著作者人格権侵害を認める判決をしましたが、一部の写真については、「客観的に見て通常の著作者であれば特に名誉感情を害されることがないと認められる程度」の改変は著作者の意に反する改変とはいえないとして、同一性保持権の侵害を否定しました。
拒絶査定不服審判請求時の補正を却下した拒絶審決を取り消した「経皮的分析物センサを適用するためのアプリケータ」事件知財高裁判決について
2024年3月13日 裁判例情報(特許・意匠) 飯島 歩 (131)
知的財産高等裁判所第2部(清水響裁判長)は、令和6年(2024年)1月22日、拒絶査定不服審判の拒絶審決に対する取消訴訟において、特許庁が、新規事項の追加の禁止及び独立特許要件の違反があるとして拒絶査定不服審判の請求と同時にした補正を却下したのは不相当であるとして、審決を取り消す判決をしました。
不使用取消審判の取消審決に対する取消訴訟において新たに登録商標の使用の証明をすることの許否に関する「プレジャー」事件知財高裁判決について
2024年2月29日 裁判例情報(商標・不正競争) 飯島 歩 (131)
知的財産高等裁判所第3部(東海林保裁判長)は、令和6年(2024年)1月30日、商標登録の不使用取消審判において被請求人である商標権者が登録商標の使用の事実を証明しなければ商標登録は取消しを免れない旨規定する商標法50条2項本文の趣旨について、登録商標の使用の事実をもって商標登録の取消しを免れるための要件としつつ立証責任の分配を図ったものであって、商標権者が審決時において使用の事実を証明したことをもって商標登録の取消しを免れるための要件としたものではないとの考え方を示し、審決取消訴訟において商標の使用の事実が証明されたことを根拠として、不使用取消を認めた審決を取り消しました。
意匠法4条2項の新規性喪失の例外と公開意匠の証明書記載の意匠と引用意匠の同一性に関する「バッグ」事件知財高裁判決について
2024年1月26日 裁判例情報(特許・意匠) 飯島 歩 (131)
知的財産高等裁判所第1部(本多知成裁判長)は、令和5年(2023年)12月25日、意匠法4条2項の新規性喪失の例外の適用を受けるために提出される公開意匠の証明書に記載された意匠は、引用意匠と同一であることを要し、仮に相違するとしても、「物品の性質や機能に照らして実質的にみて同一であると十分理解できる範囲内」の相違であることを要するとの考え方を示しました。
親出願の設定登録後の分割出願の可否に関する「ギフト資産管理システム」知財高裁判決について
2023年12月19日 裁判例情報(特許・意匠) 飯島 歩 (131)
知的財産高等裁判所第4部(宮坂昌利裁判長)は、特許法44条1項2号に基づく分割出願が親出願の設定登録後にあったことを理由に当該分割出願を却下した特許庁の処分について、その取消を求めた出願人の主張に理由がないとする判決をしました。
除くクレームと新規事項の追加に関する熱伝達組成物事件知財高裁判決について
2023年11月30日 裁判例情報(特許・意匠) 飯島 歩 (131)
知的財産高等裁判所第2部(清水響裁判長)は、令和5年10月5日、特許無効審判において新規事項の追加を理由に認められなかった「除くクレーム」にかかる訂正について、新規事項の追加には当たらないとの判断をし、審決を取り消す判決をしました。
平成16年改正特許法下の職務発明の相当の対価請求権の消滅時効の中断事由に関する「徐放性経口固形製剤」大阪地裁判決について
2023年10月28日 裁判例情報(特許・意匠) 飯島 歩 (131)
大阪地方裁判所第21民事部(武宮英子裁判長)は、令和5年8月29日、平成16年改正特許法のもとでの職務発明の相当の対価請求訴訟において、消滅時効の中断の成否に関し、会社が発明者に支払っていた技術指導料や贈呈金が相当の対価には該当せず、債務承認があったとは認められないとの判断をしました。
政府機関を出願人とする当該政府機関の印章・記号の商標登録の可能性に関する「MALASIA HALAL」事件知財高裁判決について
2023年9月29日 裁判例情報(商標・不正競争) 飯島 歩 (131)
知的財産高等裁判所第4部(菅野雅之裁判長)は、令和5年3月7日、商標の拒絶査定不服審判の不成立審決に対する取消訴訟において、政府機関の監督・証明用の印章・記号として経済産業大臣が指定したものと同一の構成の商標についての同一の商品にかかる登録出願について、当該政府機関が出願人となる場合であっても、商標法4条1項5号に該当するとの判断を示し、原告(出願人)の訴えを棄却しました。
会社による著作権侵害につき代表取締役に重過失があったとして個人責任を認めた東京地裁判決について
2023年8月29日 裁判例情報(著作権) 飯島 歩 (131)
東京地方裁判所民事第40部(中島基至裁判長)は、令和5年5月18日、各種製品の販売促進資料の制作などを行うデザイン事務所が、第三者の著作物である写真を用いて制作した販売促進資料を自社の実績としてウェブページで紹介するにあたり、著作権者の許諾なく、その写真もウェブページに掲載したことについて、デザイン事務所の運営主体である会社のほか、その代表取締役にも損害賠償を命じる判決をしました。
職務発明の黙示の合意による取得を否定した射出成型装置事件知財高裁判決について
2023年7月28日 裁判例情報(特許・意匠) 飯島 歩 (131)
知的財産高等裁判所第2部(本多知成裁判長)は、令和5年6月22日、職務発明について、会社の求めがあった場合に従業者との協議によって対価を支払うことにより特許を受ける権利を承継する旨の就業規則がある状況において、職務発明を会社が原始取得する旨の黙示の合意があったとは認められず、また、発明完成後に、特許を受ける権利の帰属を原始的に変更することはできないとの判決をしました。
許諾なく社内イントラネット上で大量に共有された新聞記事のうち内容の特定を欠くものの著作物性判断に関する東京新聞事件知財高裁判決について
2023年6月23日 裁判例情報(著作権) 飯島 歩 (131)
知的財産高等裁判所第1部(大鷹一郎裁判長)は、令和5年6月8日、新聞記事をスキャンした多数の画像データを社内イントラネットで共有していたことから著作権侵害が認められた事案の控訴審判決において、報道を目的とする新聞記事が著作物と認められるためには作成者の何らかの個性が発揮されていれば足りるとする一方、その内容には様々なものがあり得ることから、新聞記事であることをもって直ちに著作物ということはできず、また、著作物であるとしても、新聞社の著作物とは限らないことから、内容を確認できない記事について著作物性を認めることはできないとの判決をしました。
特許権侵害訴訟の提起が紛争の蒸し返しに過ぎないとして信義則違反を理由に訴えを却下した「AQUOS Home」事件知財高裁判決について
2023年5月31日 裁判例情報(特許・意匠) 飯島 歩 (131)
知的財産高等裁判所第2部(本多知成裁判長)は、令和5年5月18日、すでに非侵害の確定判決がある製品と実質的に同一の製品について、同一の特許権に基づく損害賠償請求訴訟を提起した事案において、紛争の蒸し返すものであって訴訟上の信義則に反するとし、訴えを却下する判決をしました。
「除くクレーム」と訂正要件に関する「ポリエステル樹脂組成物の積層体」事件知財高裁判決について
2023年4月5日 裁判例情報(特許・意匠) 飯島 歩 (131)
知的財産高等裁判所第4部(菅野雅之裁判長)は、令和5年3月9日、特許異議申立ての決定取消訴訟の判決において、いわゆるオープンクレームに対し、引用発明における課題解決手段であって、対象特許の発明特定事項でも願書添付書類で開示されているものでもない事項を「除く」とした訂正について、特許請求の範囲の減縮に該当し、また、新規の技術事項を導入するものではないとする判断を示しました。
将来の給付を求める訴えの適法性及び商標・商品等表示にかかる役務の提供主体の認定に関する「2ちゃんねる」事件知財高裁判決について
2023年3月24日 裁判例情報(商標・不正競争) 飯島 歩 (131)
知的財産高等裁判所第2部(本多知成裁判長)は、本年(令和5年)1月26日、インターネット上の電子掲示板「2ちゃんねる」の創設者が、その商標権を侵害され、また、その商品等表示について周知表示誤認惹起行為・著名表示冒用行為・ドメイン名の不正使用行為をされたとして、「2ちゃんねる」の運用をしていた会社を相手取って提起した訴訟において、被告(被控訴人)に損害賠償を命じる判決をしました。
商標権行使につき具体的な標章ごとに権利濫用の成否を判断した「守半」事件知財高裁判決について
2023年2月28日 裁判例情報(商標・不正競争) 飯島 歩 (131)
知的財産高等裁判所第2部(本多知成裁判長)は、令和4年11月30日、明治時代に創業された老舗と関連を有し、それぞれ「守半」の標章を商標として使用してきた2社のうち、同標章について商標登録を受けている一方が他方に対して商標権を行使した場合に、商標登録以前から使用されてきた標章またはそれと社会通念上同一といえる標章の使用を対象とする部分について、権利の濫用に該当するとの判断を示しました。他方、「守半總本舗」のように、「守半」に新たな異なる意味合いを付与した標章の使用については、権利の濫用を否定し、商標権侵害を認めています。