イノベンティア・リーガル・アップデート アーカイブ

将来の給付を求める訴えの適法性及び商標・商品等表示にかかる役務の提供主体の認定に関する「2ちゃんねる」事件知財高裁判決について
2023年3月24日 裁判例情報(商標・不正競争) 飯島 歩 (111)
知的財産高等裁判所第2部(本多知成裁判長)は、本年(令和5年)1月26日、インターネット上の電子掲示板「2ちゃんねる」の創設者が、その商標権を侵害され、また、その商品等表示について周知表示誤認惹起行為・著名表示冒用行為・ドメイン名の不正使用行為をされたとして、「2ちゃんねる」の運用をしていた会社を相手取って提起した訴訟において、被告(被控訴人)に損害賠償を命じる判決をしました。
パブリシティ権を原始的に帰属させる条項等につき公序良俗に反するとし、芸能事務所による芸名の使用の差止めを認められないとした判決
2023年3月15日 裁判例情報(その他知的財産) 秦野 真衣 (10)
東京地方裁判所第44部(飛澤知行裁判長)は、昨年(令和4年)12月18日、芸能事務所である原告が、専属契約の約定に反し芸名を使用して芸能活動を行っているとして、被告の芸名使用の差止めを求めた事案につき、当該専属契約のうち、被告のパブリシティ権を原告に原始的に帰属させる部分、及び当該専属契約の終了後も無期限に原告に本件芸名の使用の諾否の権限を認めている部分は、社会的相当性を欠き、公序良俗に反するものとして、無効であると判示しました。
添付した画像がトリミングされて表示されたツイートにつき引用の成立を認め同一性保持権侵害を否定した知財高裁判決について
2023年3月1日 裁判例情報(著作権) 神田 雄 (18)
知的財産高等裁判所は、令和4年10月19日、他者が著作権を有する画像を添付した投稿したツイートについて、著作権法上の引用が成立して適法である旨の判断をするとともに、添付された画像がトリミング等された状態で表示された点につき、やむを得ないと認められる改変であるとして同一性保持権の侵害を否定しました。
原告商標が商標法4条1項15号に該当することを理由に、拒絶査定不服審判請求を不成立とした審決の判断を支持した知的高等裁判所判決について
2023年2月13日 裁判例情報(商標・不正競争) 平野 潤 (17)
知的財産高等裁判所第4部(菅野雅之裁判長)は、令和4年11月21日、引用商標の周知性や本願商標との類似性の程度が高いことなどを理由として、原告商標が商標法4条1項15号に該当するとした審決判断を支持し、原告の請求を棄却しました。
プロダクト・バイ・プロセス(PBP)クレームについて明確性要件違反を認めた「電鋳管の製造方法及び電鋳管」事件知財高裁判決について
2023年1月11日 裁判例情報(特許・意匠) 飯島 歩 (111)
知的財産高等裁判所(菅野雅之裁判長)は、令和4年11月16日、いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレーム(PBPクレーム)にかかる特許について、特許請求の範囲の記載が、「出願時において当該製造方法により製造される物がどのような構造又は特性を表しているのかが、特許請求の範囲、明細書、図面の記載や技術常識より一義的に明らかな場合」にあたらず、また、「出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情」も存在しないとして、特許無効審判における不成立審決を取り消す判決をしました。
先使用商標の周知性を否定し、商標登録無効審判請求を不成立とした審決判断を支持した知的高等裁判所判決について
2023年1月5日 裁判例情報(商標・不正競争) 平野 潤 (17)
知的財産高等裁判所第3部(東海林保裁判長)は、令和4年10月18日、先使用商標が周知性を有することから、商標法4条1項10号、また、同項19号の不登録事由に該当するとした原告の主張を退け、審決取消請求を棄却しました。
特許権侵害に係る損害賠償額につき特許法102条2項3項の重畳適用を認めた知財高裁大合議判決(マッサージ機事件)について
2022年12月27日 裁判例情報(特許・意匠) 神田 雄 (18)
知的財産高等裁判所特別部(大鷹一郎裁判長)は、令和4年10月20日、特許権侵害に基づく損害額の算定に関し、特許法102条2項による損害額の推定が覆滅される部分に対して、特許権者が実施許諾をすることができたと認められる部分については同条3項に基づく実施料相当額の損害賠償を請求することができる旨の大合議判決をしました。
研究委託契約の成果帰属協議条項違反に基づく損害賠償請求と特許権に関する訴えの専属管轄に関する活性型GcMAF事件大阪高裁判決について
2022年12月6日 裁判例情報(特許・意匠)裁判例情報(紛争解決手続) 飯島 歩 (111)
大阪高等裁判所第8民事部(森崎英二裁判長)は、令和4年9月30日、研究委託契約違反の債務不履行を理由として神戸地方裁判所に提起された損害賠償請求訴訟につき、争点は特許を受ける権利に関係するものであって、契約違反の成否の判断には専門技術的事項の理解を要するものと認められることから、当該事件は民事訴訟法6条1項の「特許権に関する訴え」に該当するとして、管轄違いを理由に、神戸地方裁判所による原判決を取り消した上で、事件を大阪地方裁判所に移送する判決をしました。
他のツイートのスクリーンショット画像を添付したツイートにつき引用の成立を認め著作権侵害を否定した知財高裁判決について
2022年11月29日 裁判例情報(著作権) 神田 雄 (18)
知的財産高等裁判所は、令和4年11月2日、ツイッター上の他のツイートのスクリーンショットを添付して行ったツイートについて、著作権法上の引用が成立する旨の判断をし、スクリーンショットの形で添付されたツイートのプロフィール画像の著作権を侵害することが明白とはいえないとの判決を言い渡しました。
海外に設置されたサーバから日本国内への配信行為が行われていた場合において日本国内における特許権侵害の成立を認めた知財高裁判決について
2022年11月11日 裁判例情報(特許・意匠) 町野 静 (31)
知的財産高等裁判所(本多知成裁判長)は、令和4年(2020年)7月20日、海外に設置されたサーバから日本国内への向けた特許発明の技術的範囲に属するプログラムの提供が行われていた事案において、当該提供行為は、その一部に日本国の領域外で行われる部分があるとしても、これを実質的かつ全体的に考察すれば、日本国の領域内で行われたものと評価するのが相当であると判断し、これが日本国特許法2条3項1号の「提供」に該当するとし、日本国内における特許権侵害の成立を認める判決をしました。
社内イントラネットにおける新聞記事の共有につき公衆送信権等の侵害に基づく損害賠償を命じた東京新聞事件東京地裁判決について
2022年11月9日 裁判例情報(著作権) 飯島 歩 (111)
東京地方裁判所民事第46部(柴田義明裁判長)は、令和4年10月6日、新聞記事をスキャンした多数の画像データを社内イントラネットで共有していた事案につき、新聞社の著作権を侵害するものとして、被告となった会社に対し、損害賠償として、192万3000円と遅延損害金を原告に支払うよう命じる判決をしました。
2022年9月策定「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」について
2022年11月7日 立法・政策動向(環境・コンプライアンス) 角川 博美 (4)
2022年9月、日本政府は「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定しました。 本記事では、本ガイドラインを読むにあたって必要となる前提知識として必要な「ビジネスと人権」に関するこれまでの議論や、SDGs、ESG投資との関係に触れた後、本ガイドラインの要点と実務上の対応について解説します。
被告の動画配信システムにおけるサーバが日本国外に設置されていた場合において特許権侵害の成立を否定した東京地裁判決について
2022年10月27日 裁判例情報(特許・意匠) 町野 静 (31)
東京地方裁判所は、令和4年(2020年)3月24日、物の生産に該当するためには、特許発明の構成要件の全てを満たすものが日本国内において新たに作り出されることが必要であることを理由として、被告の動画配信システムにおけるサーバが日本国外に設置されていた場合において特許権侵害の成立を否定する判決を出しました。
商品の形態が特別顕著性及び周知性を欠くとして「商品等表示」該当性を否定した海釣り用棒うき事件大阪地裁判決について
2022年10月3日 裁判例情報(商標・不正競争) 飯島 歩 (111)
大阪地方裁判所第21民事部(武宮英子裁判長)は、令和4年8月25日、海釣り用の棒うきの形態が不正競争防止法2条1項1号にいう商品等表示に該当するか、という争点に関し、商品の形態は、特別顕著性と周知性がない限り商品等表示には該当しない、との考え方を示すとともに、具体的な事案において、これらの要件のいずれも認められないとの判断を示しました。
ウェブサイト制作の委託先による違法画像アップロードに関する委託元の侵害主体性を認めた「浴衣の写真」事件東京地裁判決について
2022年9月14日 裁判例情報(著作権) 溝上 武尊 (30)
東京地方裁判所民事第29部は、令和4年7月13日、ウェブサイト制作の委託先が原告の写真を基に作成した画像を無断でウェブサイトに掲載したという事案において、被告自らによるアップロードと同視できること、当該写真にはクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの表示等があり、被告には過失が認められることを示しました。
貸画廊を交互に使用する当事者間における画廊名の商標権行使が権利濫用にあたるとした「GALLERY ART POINT」事件知財高裁判決について
2022年9月5日 裁判例情報(商標・不正競争) 飯島 歩 (111)
知的財産高等裁判所第1部(大鷹一郎裁判長)は、令和4年6月30日、共同で建物を賃借し貸画廊を営んでいた夫婦(後日離婚成立)が、その後の関係悪化により、交互に画廊を使用する旨の合意をしていた状況において、紛争が顕在化した後に画廊の商号を含む標章についてそれぞれ商標権を取得し、相互に権利を行使した事案において、いずれの権利行使も権利の濫用にあたるとする判決をしました。
商標審決に見る称呼同一商標の類否判断-商標審決アップデート(特別編Vol.3)
2022年9月1日 審決例情報(商標) 前田 幸嗣 (32)
前回、商標審決アップデートの特別編Vol.1として、過去の称呼同一商標関連の審決例をもとに、いくつかの類型に分けて整理、分析し、類否判断の傾向について説明させていただきました。今回のVol.3では、直近の審決例を前回類型分けした類型1~5に当てはめて、更に分析・検討したいと思います。
住宅地図を著作物と認めて著作権侵害を肯定した東京地裁判決について
2022年8月31日 裁判例情報(著作権) 神田 雄 (18)
東京地方裁判所民事第29部(國分隆文裁判長)は、令和4年5月27日、原告が作成販売する住宅地図を広告物のポスティング等を行う会社である被告が複製等して利用した事案において、住宅地図を著作物と認め、著作権侵害が成立するとの判決を言い渡しました。
独占禁止法との抵触を理由に特許権行使が権利濫用に当たるとした原判決を覆した「トナーカートリッジ」事件知財高裁判決について
2022年8月30日 裁判例・審決例情報(独禁法)裁判例情報(特許・意匠) 溝上 武尊 (30)
知的財産高等裁判所第1部は、令和4年3月29日、電子部品が取り替えられたトナーカートリッジの再生品に対する特許権行使の可否が問題となった事案において、独占禁止法との抵触を理由に電子部品に関する特許権の行使が権利濫用に当たるとした原判決を覆し、権利濫用の成立を否定して、特許権者の請求を一部認容しました。
販売業者による商標の剥離抹消や商品名の変更につき商標権侵害等の成立を否定した「ローラーステッカー」事件大阪高裁判決について
2022年8月10日 裁判例情報(商標・不正競争) 神田 雄 (18)
大阪高等裁判所は、令和4年5月13日、メーカーが製品に付した商品名と別の商品名を卸売業者が付して当該製品を販売した事案において、当該メーカーが付した商品名が商標登録前である場合の不法行為の成立と、商標登録後である場合の商標権侵害の成立を共に否定する判決を言い渡し、製造業者が自ら付した商品名を流通過程で変更されることを防ぐためには、予め商品名の変更を禁止する旨の合意等が必要である旨の原判決の判断を維持しました。