大阪地方裁判所第21民事部(谷有恒裁判長)は、ウェブサイト制作委託契約の注文書において、ウェブサイト制作者に著作権が帰属する旨の記載があったにもかかわらず、証人尋問の結果に加え、契約の背景や内容などの実態を考慮して、当該記載にかかる合意の成立を否定する判断を示しました。

著作権の帰属の認定において、判旨には少々不明確な部分があると思われますが、ウェブサイトの制作委託契約における、いわゆる著作権合意のあり方という実務的問題について、示唆を含むものと思われます。

ポイント

骨子

ポイント
  • 原告と被告ピー・エム・エーは,以上の内容・性質【原告ウェブサイトの制作は、被告ピー・エム・エーの委託によるものであって、原告の発意によるものではなく、被告ピー・エム・エーの企業活動のために使用されていたこと、原告ウェブサイトのデザイン、記載内容、色調の基礎となったのは旧ウェブサイトであること、原告ウェブサイトは、顧客吸引力を発揮するように構成しているが、被告ピー・エム・エーの企業活動を紹介するもので、その内容は被告ピー・エム・エーに由来し、被告ピー・エム・エーの支持・要望に基づくこと】を有する原告ウェブサイトの制作について,本件制作業務委託契約を締結し,例えば原告ウェブサイトの権利を原告に留保して,原告が被告ピー・エム・エーに使用を許諾し使用料を収受するといった形式ではなく,原告ウェブサイトの制作に対し,対価324万円を支払う旨を約したのであるから,原告が原告ウェブサイトを制作し,被告ピー・エム・エーのウェブサイトとして公開された時点で,その引渡しがあったものとして,原告ウェブサイトに係る権利は,原告が制作したり購入したりした部分を含め,全体として被告ピー・エム・エーに帰属したと解するのが相当である。
  • 原告ウェブサイトの制作の対価を324万円と定める本件制作業務委託契約において,制作後の原告ウェブサイトの権利が原告に帰属するとすることが不合理であることは前記⑵で述べたとおりであり,あえてそのように合意するとすれば,その合意は明確なものでなければならず,本件においてそのような合意が成立したと明確に認めるに足りる証拠がないことは上記ア及びイのとおりであるから,被告ピー・エム・エーと原告の合意によって,原告ウェブサイトの著作権が原告に帰属したと認めることはできない。

判決概要

裁判所 大阪地方裁判所第21民事部
判決言渡日 令和元年10月3日
事件番号 平成30年(ワ)第5427号
事件名 著作権侵害差止等請求事件
裁判官 裁判長裁判官 谷   有 恒
裁判官    野 上 誠 一
裁判官    島 村 陽 子

解説

著作物と著作者の認定

著作物とは

著作権法2条1項1号は、「著作物」を以下のとおり定義しています。

一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

著作物該当性の判断に際しては、この定義に従い、①「思想又は感情」の表現であること、②「創作的」表現であること、③「表現」であること、④「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」であること、という4つの要件を充足するか、という観点で分析が行われます。

著作者とは

著作権法2条1項2号は、「著作者」を以下のとおり定義しています。

二 著作者 著作物を創作する者をいう。

すなわち、「著作者」とは、上述の意味における「著作物」を創作した者であり、その認定においては、誰が創作性ある表現を生み出したか、という観点で判断されます。

法人等の著作者性

法人等の使用者も、著作物が法人等の発意に基づいてその法人の業務従事者による職務著作として創作され、かつ、法人等の名義で公表するものである場合には、著作者になることができます(プログラムについては、公表名義の要件は適用されません。)。

これは、法人が発明者となることができず、職務発明であっても原則として発明者個人が特許を受ける権利を有する特許制度と異なる点といえます。

著作者の推定

上述のとおり、著作者とは著作物を創作した者をいいますが、著作権の紛争が生じた場合において、誰が著作物を創作したかを立証するのは必ずしも容易ではありません。そこで、著作権法は、以下のとおり、実名または周知の変名の表示がある場合には、その者が著作者であると推定する規定を置いています。

(著作者の推定)
第十四条 著作物の原作品に、又は著作物の公衆への提供若しくは提示の際に、その氏名若しくは名称(以下「実名」という。)又はその雅号、筆名、略称その他実名に代えて用いられるもの(以下「変名」という。)として周知のものが著作者名として通常の方法により表示されている者は、その著作物の著作者と推定する。

著作者人格権とその帰属

著作者は、著作物を創作すると、その著作物についての人格的利益を対象とする著作者人格権を有することとされています。著作者人格権の具体的内容としては、①未公表の著作物を公表するか否か、また、どのような時期・態様で公表するかを決定する公表権(著作権法18条1項)、②著作物に実名や変名を表示するかどうかを決定する氏名表示権(同法19条1項)、③意に反して著作物が切除その他の改変を受けない同一性保持権(同法20条1項)、④著作者の名誉声望を害する方法で著作物を利用されない名誉声望権(同法113条6項)が定められています。

上述のとおり、法人も著作権法上の著作者になることができるため、著作者人格権は、法人にも認められます。

なお、著作者人格権は一身専属権ですので(著作権法59条)、譲渡等による移転の対象となることはなく、著作者と著作者人格権の主体は一致します。なお、著作者が死亡等で存しなくなったときは、著作者人格権は消滅しますが、一定の保護は存続し(同法60条)、遺族は固有の権利として差止や名誉回復措置を求めることができます(同法116条1項)。

著作権とその帰属

著作権とは

著作者人格権が著作者の人格的利益を保護する権利であるのに対し、著作権は、著作物についての財産的利用を目的とする権利で、複製、上演、公衆送信、頒布、譲渡、貸与等、利用行為の内容ごとに権利(支分権)が定められています(著作権法21条ないし28条)。そのため、著作権とは、特許権のような単一の権利ではなく、様々な支分権の集合体ということができます。

著作権の帰属に関する著作権法上の定め

著作権の支分権について規定する著作権法21条ないし28条の規定は、権利主体を「著作者」と定めています。したがって、著作権は、原始的には著作者に帰属し、著作者が著作権者にもなります。上述のとおり、職務著作の場合には、法人が著作権者になることができ、その場合には、著作権者にもなることとなります。

例外として、映画の著作物は、著作者ではない「映画製作者」に権利が帰属する場合があります。この点については、こちらの記事(映画の著作物の著作権者の認定及び著作者人格権の侵害の成否に関する婚礼ビデオ事件大阪地裁判決について)の解説をご覧ください。

著作権の移転

一身専属権である著作者人格権とは異なり、著作権は財産権であるため、相続の対象となるほか、譲渡することが認められています(同法61条1項)。したがって、著作権法上は著作者や映画製作者に著作権が帰属しても、合意によって著作権を移転し、第三者を著作権者とすることも可能です。

契約によって著作権が著作者以外の第三者に譲渡されたときは、映画の著作物が著作権者たる映画製作者から著作者に譲渡されるといった特殊な場合を除き、著作者と著作権者が別主体となります。

事案の概要

前提事実

本判決が認定した事実によると、本件は、「ライズ株式スクール」を運営していた被告ピー・エム・エーが訴外彩登に制作させ、訴外ユウシステムに管理させていたウェブサイト(旧ウェブサイト)を、被告ピー・エム・エーからの委託に基づき、原告がレンタルしたサーバに移管するとともにリニューアルし、新しいウェブサイト(原告ウェブサイト)として運用したことに端を発します。

旧ウェブサイトには「Copyright (C) 2013 RISE TRADING SCHOOL PMA LIMITED All rights reserved」との表記があり、原告ウェブサイトには、「RISe TRADING SCHOOL」や連絡先など、被告ピー・エム・エーが営む「ライズ株式スクール」に関する各種表示のほか、「Copyright Ⓒライズ株式スクール All Rights Reserved」といった著作権表示がありました。

上記運用開始後、被告ピー・エム・エーの経営悪化に伴って、サーバのレンタル料を含む原告への料金に遅滞が生じ、原告ウェブサイトのサーバが凍結されるに至りました。被告ピー・エム・エーの事業は原告ウェブサイトに依存していたため、被告ピー・エム・エーは原告に未払金を支払い、原告ウェブサイトの復旧を求めましたが、原告は、容易に原告ウェブサイトを復旧できたにもかかわらず、被告ピー・エム・エーに対し、復旧は不可能であり、高額の再制作費用が必要であると告げました。

そこで、被告ピー・エム・エーは、訴外マークスに依頼して別途ウェブサイト(被告ウェブサイト)を制作し、新たに取得したドメインで公開しましたが、結局被告ピー・エム・エーは事業を廃止することになり、被告ウェブサイトは、被告ピー・エム・エーの役員らが設立した会社である被告インターステラーに承継されました。なお、被告ウェブサイトには「Copyright Ⓒライズ株式スクール All Rights Reserved」との表記がありました。

上記経緯のもと、原告は、被告らが原告ウェブサイトを無断で複製し、公開したものとして、著作権及び著作者人格権等に基づき、ウェブサイトのシャットダウンと損害賠償を求めました。

本件の当事者及び関係者は以下のとおりです。

原告 映像製作等を業として営む個人。被告ピー・エム・エーからの委託に基づき、旧ウェブサイトを自らレンタルするサーバに移管した後に、旧ウェブサイトをリニューアルし、原告ウェブサイトとして公開。
被告ピー・エム・エー 「ライズ株式スクール」を運営していた会社。経営不振により事実上廃業。
被告P3 被告ピー・エム・エーの代表取締役
被告P4 被告ピー・エム・エーの取締役兼被告インターステラーの代表取締役
被告インターステラー 被告ピー・エム・エー廃業と同時期に同社経営者らによって設立された会社で、「株の学校プラスワン」を運営。
被告P5 被告インターステラーの取締役
訴外彩登 旧ウェブサイトの制作会社
訴外ユウシステム 旧ウェブサイトの管理会社
訴外マークス 被告ウェブサイトの制作会社
契約書の記載

旧ウェブサイトを移管し、原告に管理を委託した際の保守業務委託契約書には、同契約に基づいて原告が制作完成したウェブサイトについては、著作権その他の権利が原告に帰属する旨の規定がありました(14条2項)。

また、原告ウェブサイトの制作を委託した際の注文書の「使用」欄には、「全面リニューアル後の成果物の著作権その他の権利」が帰属する旨の記載がありました。

争点

本件の争点は多岐にわたりますが、中心的な論点は著作権の帰属、つまり、原告は、原告ウェブサイトを製作した者として、あるいは、上記契約書の記載に基づき、原告ウェブサイトの著作権に有していたか、という点ですので、この点に焦点を当てたいと思います。

判旨

判決は、著作権の帰属について、「原告ウェブサイトの制作による著作権の帰属」の問題と、「合意による著作権の帰属」の問題の2つに分けて検討しています。

原告ウェブサイトの制作による著作権の帰属について

判決は、原告のウェブサイトの制作による著作権の帰属について、以下の各事情から、被告ピー・エム・エーに属するとの結論を導きました。

① 原告ウェブサイトの制作は、被告ピー・エム・エーの委託によるものであって、原告の発意によるものではなく、被告ピー・エム・エーの企業活動のために使用されていたこと
② 原告ウェブサイトのデザイン、記載内容、色調の基礎となったのは旧ウェブサイトであること
③ 原告ウェブサイトは、顧客吸引力を発揮するように構成しているが、被告ピー・エム・エーの企業活動を紹介するもので、その内容は被告ピー・エム・エーに由来し、被告ピー・エム・エーの支持・要望に基づくこと
④ 原告ウェブサイトの利用の許諾料ではなく、原告ウェブサイト制作にかかる対価が支払われたこと
⑤ 原告ウェブサイト制作後も原告に対する保守料が支払われたこと
⑥ 原告が自ら利用したり、第三者に許諾ないし権利移転したりすることは予定されていないこと
⑦ 原告ウェブサイトの著作権が原告にあるとすると、被告ピー・エム・エーは自由にウェブサイトを移管したり、保守委託先を変更したりできなくなり、不合理であること

判旨を具体的に紹介すると、まず、上記①(原告ウェブサイトの制作は、被告ピー・エム・エーの委託によるものであって、原告の発意によるものではなく、被告ピー・エム・エーの企業活動のために使用されていたこと)については、以下のとおり述べています。

前記認定したところによれば,被告ピー・エム・エーは,旧ウェブサイトを訴外彩登に制作させ,訴外ユウシステムに管理を委託していたところ,集客力の向上のために,まず旧ウェブサイトの本件サーバの移管を原告に委託し,さらにその保守業務を原告に委託した後,本件制作業務委託契約により,旧ウェブサイトを,スマートフォンやタブレットに対応できるようにするなど,全面的にリニューアルすることを求めたことが認められるのであって,原告ウェブサイトの制作は,原告の発意によるものではなく,被告ピー・エム・エーの委託に基づくものであり,原告が自ら使用することは予定せず,被告ピー・エム・エーの企業活動のために使用することが予定されていたものということができる。

また、上記②(原告ウェブサイトのデザイン、記載内容、色調の基礎となったのは旧ウェブサイトであること)については、以下のとおり述べています。

上述のとおり,原告ウェブサイトは,元々被告ピー・エム・エーが訴外彩登に制作させた旧ウェブサイトを,本件サーバへの移管後にリニューアルしたもので,前記認定したところによれば,原告ウェブサイトのデザイン,記載内容や色調の基礎となったのは,リニューアル前の旧ウェブサイトであることが認められる。

上記③(原告ウェブサイトは、顧客吸引力を発揮するように構成しているが、被告ピー・エム・エーの企業活動を紹介するもので、その内容は被告ピー・エム・エーに由来し、被告ピー・エム・エーの支持・要望に基づくこと)については、以下のとおり述べています。

また,前記認定したところによれば,原告は,原告ウェブサイトを制作するにあたり,ワードプレス専用のプラグインやフォント,写真を購入したり,ワードプレスを利用して,原告ウェブサイトが利用しやすく顧客吸引力があるように構成したものと認められるが,一方で,原告ウェブサイトは,被告ピー・エム・エーの株式スクールとしての企業活動を紹介するものであって,その内容は,基本的に被告ピー・エム・エーに由来するというべきであるし,原告が,被告ピー・エム・エーから,その従業員を通じ,仕様や構成について指示及び要望を聞いて制作したものであることは,前記認定のとおりである。

上記④(原告ウェブサイトの利用の許諾料ではなく、原告ウェブサイト制作にかかる対価が支払われたこと)については、以下のとおり述べています。

原告と被告ピー・エム・エーは,以上の内容・性質を有する原告ウェブサイトの制作について,本件制作業務委託契約を締結し,例えば原告ウェブサイトの権利を原告に留保して,原告が被告ピー・エム・エーに使用を許諾し使用料を収受するといった形式ではなく,原告ウェブサイトの制作に対し,対価324万円を支払う旨を約したのであるから,原告が原告ウェブサイトを制作し,被告ピー・エム・エーのウェブサイトとして公開された時点で,その引渡しがあったものとして,原告ウェブサイトに係る権利は,原告が制作したり購入したりした部分を含め,全体として被告ピー・エム・エーに帰属したと解するのが相当である。

上記⑤(原告ウェブサイト制作後も原告に対する保守料が支払われたこと)については、以下のとおり述べています。

上記解釈は,原告ウェブサイト制作後も,原告が被告ピー・エム・エーに保守業務委託料の支払を求めていることとも合致する。すなわち,原告ウェブサイトが原告のものであれば,被告ピー・エム・エーがその保守を原告に委託することはあり得ず,原告ウェブサイトが被告ピー・エム・エーのものであるからこそ,代金を支払ってその保守を原告に委託したと考えられるからである。

上記⑥(原告が自ら利用したり、第三者に許諾ないし権利移転したりすることは予定されていないこと)については、以下のとおり述べています。

また,上述のとおり,原告ウェブサイトは,被告ピー・エム・エーの企業としての活動そのものを内容とするものであるから,原告がこれを自ら利用したり,第三者に使用を許諾したり,あるいは第三者に権利を移転したりすることはおよそ予定されていないというべきであるから,原告ウェブサイトについての権利が原告に帰属するとすべき合理的理由はない。

上記⑦(原告ウェブサイトの著作権が原告にあるとすると、被告ピー・エム・エーは自由にウェブサイトを移管したり、保守委託先を変更したりできなくなり、不合理であること)については、以下のとおり述べています。

さらに,原告ウェブサイトについての権利が原告に帰属するとすれば,被告ピー・エム・エーは,原告の許諾のない限り,原告ウェブサイトの保守委託先を変更したり,使用するサーバを変更するために原告ウェブサイトのデータを移転したりすることはできないことになるが,そのような結果は不合理といわざるを得ない。

以上の検討の結果を経て、原告ウェブサイトの著作権は、被告ピー・エム・エーに属するとの結論を導きました。

以上より,原告が原告ウェブサイトを制作したことを理由に,原告ウェブサイトの著作権が原告に帰属すると考えることはできず,原告ウェブサイトの著作権は,被告ピー・エム・エーに帰属するものと解すべきである。

合意による著作権の帰属について

判決は、続いて合意による著作権の帰属についても検討しています。ここでは、主として、原告の著作権帰属について定めた上述の保守業務委託契約書や注文書の記載の解釈が検討されています。

まず、判決は、保守業務委託契約書の記載について、その適用関係が不明であること及び制作業務に当然に適用されるものではないことを指摘し、原告の著作権取得の根拠とはならないと判断しています。

本件保守業務委託契約において,同契約に基づいて,原告が制作したウェブサイトの著作権その他の権利が原告に帰属する旨の規定(14条2項)があることは前記認定のとおりである。しかしながら,本件保守業務委託契約は,訴外彩登が制作した旧ウェブサイトを本件サーバに移管した後に,その保守業務を被告ピー・エム・エーが原告に委託する際に締結されたものであって,原告がウェブサイトを制作完成することは予定されていないから,上記条項が何を想定したものかは不明といわざるを得ないし,同条項が,その後に締結された本件制作業務委託契約に当然に適用されるとも解されない。

また、判決は、仕様書の記載については、記載された内容の合意を成立させる趣旨で記載されたものではなく、また、他にそのような合意が成立したと認めるに足りる証拠はないとし、これも原告の著作権の根拠とならないと判断しています。

本件制作業務委託契約については,被告ピー・エム・エー名義で作成された本件注文書の「仕様」欄に,「全面リニューアル後の成果物の著作権その他の権利は,制作者のP1に帰属するものとする。」と記載がある。しかしながら,被告P3本人の尋問の結果によっても,被告ピー・エム・エーが,原告と上記記載に係る合意を成立させる趣旨で,本件注文書に上記記載をしたとは認められないし,他に,原告と被告ピー・エム・エーとの間で上記記載に係る合意が成立したと認めるに足りる証拠は提出されていない。

さらに、制作の対価を支払う契約形態で原告に著作権を帰属させるのは不合理であることを前提に、あえて原告に著作権を帰属させるのであれば、その合意は明確なものでなければならない、との考え方を示し、合意によって原告に著作権が帰属したと認めることもできないと結論付けました。

原告ウェブサイトの制作の対価を324万円と定める本件制作業務委託契約において,制作後の原告ウェブサイトの権利が原告に帰属するとすることが不合理であることは前記⑵で述べたとおりであり,あえてそのように合意するとすれば,その合意は明確なものでなければならず,本件においてそのような合意が成立したと明確に認めるに足りる証拠がないことは上記ア及びイのとおりであるから,被告ピー・エム・エーと原告の合意によって,原告ウェブサイトの著作権が原告に帰属したと認めることはできない。

権利の濫用について

なお、判決は、仮に原告が著作権を有するとしても、被告ピー・エム・エーのサーバが凍結された際に、原告が、被告ピー・エム・エーからのサーバの復旧依頼に対し、容易に復旧可能であるにもかかわらず、法外な再制作費用を求めたことなどを理由として、原告による著作権の行使は権利の濫用であると認定しています。

コメント

本件においては、原告の著作権帰属を定めた一応の著作権合意があったにもかかわらず、判決は、原告の立証は不十分として、原告の著作権を否定しました。

結論の当否については、立証活動の内容に関わるため、ここでの検討の限りではありません。しかし、判決は、著作物性に関する被告らの主張にも関わらず、著作権帰属の判断過程において、原告ウェブサイトのどの部分に著作物性があるのか、そして、その創作に誰がどのようにかかわったのか、職務著作の要件は充足するのか、といった著作者の認定に関する事実について具体的な認定はしていません。

本来、「原告ウェブサイトの制作による著作権の帰属」においてなされるべき事実認定は著作者の認定ではないかと思われますが、判決が当該争点に関して引用する事実は、その多くが原告ウェブサイトの利用目的・態様や当事者間の契約関係にかかわるもので、むしろ、「合意による著作権の帰属」における当事者の合理的意思の認定の基礎となる事実のように思われます。また、いわゆる著作権表示についても、事実としては認定されているものの、判断において特に考慮はされていません。

さらに、判決は、著作者人格権に関する主張を排斥するにあたって、以下のとおり、著作者性を否定するのではなく、著作権侵害がないことから、著作者人格権の行使は予定されていない、との認定をしており、原告が著作者であることを前提としているようにも読めます。

被告らが原告の著作権を侵害すると認められないことは前記2のとおりであるから,同様に,原告が被告らに対し著作者人格権を行使することも予定されておらず,被告らの上記の行為が原告の著作者人格権を侵害するということはできない。

以上のように、判決は、著作権者の認定の前提として、誰が著作者であるのかを明確にしておらず、争点の構造との関係で、通常とは異なる認定手法を採用しているようにも思われます。その背景には、旧ウェブサイトの二次的著作物となりうる原告ウェブサイトの位置付けについて、当事者の主張が不明確であるなどの事情もあるのかもしれません。

他方で、著作者の認定にかかる判断全体を著作権合意の解釈の問題について述べたものと捉えると、ウェブサイトの利用態様や契約関係、特に対価のあり方と著作権合意の趣旨の明確性の重要性を示唆するものと理解することができます。いわゆる純粋美術などとは異なり、事業活動に供することを目的とし、実際に制作に従事する受託者の名が前面に現れることが少ないウェブサイトのような著作物については、著作権の帰属を決定するに際し、対価の性質等契約の構造との関係で、明確な合意とすることが望ましいといえるでしょう。

また、様々な関係者の著作物が混在するウェブサイトについては、仮に著作権を留保するとしても、どの部分について権利が留保されるのか、さらに、いわゆるバックグラウンドIPとフォアグラウンドIPをどう区別するかなど、著作権合意の解釈は潜在的に種々の争点を含んでいます。この点において、著作物の内容・性質及び契約の構造から著作権の帰属を判断した本判決は、実務上参考になるものと思われます。

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(文責・飯島)