年別アーカイブ: 2022年
フェイスブック上に貼られたインラインリンクが著作権侵害に該当しないとした東京地裁判決について
2022年6月21日 裁判例情報(サイバー法)裁判例情報(著作権) 小和田 敦子 (2)
東京地方裁判所(令和4年4月22日判決平成31年(ワ)8969号)は、フェイスブック上の、ゲームに関する公式ページにおけるインラインリンクの設定行為について、原告画像を有形的に再製するものとも、公衆送信するものともいえないとして、著作権侵害に該当しないと判断しました。
ツイートを引用して批評した書籍における適法引用の成否に関する「#KuToo」事件東京地裁・知財高裁判決について
2022年5月31日 裁判例情報(著作権) 飯島 歩 (129)
知的財産高等裁判所第1部(大鷹一郎裁判長)は、令和4年3月29日、「#KuToo」活動に対する批判的なツイートを引用し、批評した書籍について、引用は適法であって著作権侵害は成立しないとの判断を示しました。原判決である東京地裁令和3年5月26日(佐藤達文裁判長)と合わせて紹介します。
女性の健康課題を解決する「フェムテック」(Femtech) Vol.2 広告表現の留意点②(経血吸水ショーツ等に関する近年の動き)
2022年5月20日 立法・政策動向(知財・IT) 角川 博美 (6)
前号(Vol.1)では、フェムテックにおける広告表現の留意点と、フェムテックが抱えている薬機法上の課題についてご説明しました。 本号では、フェムテックが抱える薬機法上の課題を解決する近年の動きとして、月経カップ、子宮口カップ、経血吸水ショーツ、布ナプキン、骨盤底筋訓練器具、家庭用膣洗浄スポンジを取り上げます。
女性の健康課題を解決する「フェムテック」(Femtech) Vol.1 広告表現の留意点①(導入)
2022年5月17日 立法・政策動向(知財・IT) 角川 博美 (6)
近年、日本でも「フェムテック」が注目されはじめ、今後いっそうの市場拡大が見込まれています。フェムテックは、女性の健康課題やあらゆる社会問題の解決に資する社会的意義の大きな事業です。フェムテックが、国内外に、より広く、良質な状態で普及することを願い、フェムテックの法規制や法的課題について連載します。初回である本号では、広告規制に関する問題を取り上げます。
経済産業省による「標準必須特許のライセンスに関する誠実交渉指針」の策定(令和4年3月31日)について
2022年5月10日 立法・政策動向(知財・IT) 角川 博美 (6)
経済産業省は、令和4年3月31日、「標準必須特許のライセンスに関する誠実交渉指針」を策定しました。 本指針は、ライセンス交渉の透明性・予見可能性の向上を通じて適正な取引環境を実現することを目的として、国内で初めて、国内特許を含む標準必須特許のライセンス交渉に携わる権利者及び実施者が則るべき誠実交渉の規範を示したものです。
懲戒請求に対する反論記事における懲戒請求書へのリンクと著作権・著作者人格権の権利濫用に関する弁護士懲戒請求書事件知財高裁判決について
2022年4月28日 裁判例情報(著作権) 飯島 歩 (129)
知的財産高等裁判所第部(東海林保裁判長)は、令和3年12月22日、懲戒請求を受け、新聞記事にも懲戒請求にかかる記事が掲載された弁護士が、ブログで反論するに際し、別途アップロードした懲戒請求書全文のPDFファイルへのリンクを張った行為につき、懲戒請求人が懲戒請求書にかかる著作権や著作者人格権を主張するのは権利の濫用にあたり、許されないとする判決をしました。
被写体の配置や構成の創作性を検討して商品写真の類似性を否定した「スティック春巻」事件東京地裁判決について
2022年4月21日 裁判例情報(著作権) 溝上 武尊 (32)
東京地方裁判所民事第29部(國分隆文裁判長)は、本年(令和4年)3月30日、被告が商品に付した「スティック春巻」の写真が原告写真に係る著作権を侵害するか否かが問題となった事案において、両写真の共通部分はいずれもありふれたものであるとして類似性を否定し、原告の差止め・損害賠償請求を棄却しました。
商標審決に見る結合商標の類否判断-商標審決アップデート(特別編Vol.2)
2022年4月19日 審決例情報(商標) 前田 幸嗣 (32)
今回の商標審決アップデートでは、前回のVol.1の称呼同一商標と同様に、過去の結合商標に関する審決例をもとに、いくつかの類型に分けて整理、分析し、最近の結合商標の類否判断の傾向について説明します。
女性用ハイヒールの靴底に特定の赤色を付すことが不正競争防止法上の商品等表示に該当しないとした「ルブタン」事件東京地裁判決について
2022年3月30日 裁判例情報(商標・不正競争) 溝上 武尊 (32)
東京地方裁判所民事第40部(中島基至裁判長)は、本年(令和4年)3月11日、被告による赤い靴底を有する女性用ハイヒールの製造販売等が不正競争防止法上の周知表示混同惹起行為等に該当すると主張された事案において、女性用ハイヒールの靴底に特定の赤色を付すという表示は商品等表示に該当しないと判断しました。
商標法4条1項15号に基づく登録無効審判の除斥期間と「不正の目的」の認定に関する「ジャンピング・シーサ」事件知財高裁判決について
2022年3月29日 裁判例情報(商標・不正競争) 飯島 歩 (129)
知的財産高等裁判所第1部(大鷹一郎裁判長)は、令和4年2月22日、除斥期間経過後に請求された商標法4条1項15号に基づく登録無効審判について、除斥期間の例外の要件となる「不正の目的」による商標登録についての認定判断を示す判決をしました。
原告が共同発明者に当たると判断して被告が保有する特許権の持分の2分の1の移転を命じた「魚体内の血液除去」事件大阪地裁判決について
2022年3月25日 裁判例情報(特許・意匠) 溝上 武尊 (32)
大阪地方裁判所第26民事部(杉浦正樹裁判長)は、本年(令和4年)2月28日、魚体内の血液除去に関する発明の発明者の認定が問題となった事案において、原告が被告とともに共同発明者に当たると判断し、特許権の権利者として登録されている被告に対し、その持分の2分の1を原告に移転するよう命じました。
ウクライナ情勢の背景と今後の展開 (1) ー 軍事衝突に至った歴史的な背景
2022年3月14日 外国法制(ロシア) アザマト シャキロフ (10)
2022年2月24日に、ロシアによるウクライナへの軍事行動が始まったことが世界の注目を浴びています。ロシアとウクライナの緊張関係は、数十年前から火種がありました。この紛争の日本企業への影響を考えるにあたっては、まず、両国間の歴史的な背景を理解しておくことが重要です。
他のツイートのスクリーンショット画像を添付したツイートにつき著作権侵害を認め引用の成立を否定した東京地裁判決について
2022年3月4日 裁判例情報(著作権) 神田 雄 (32)
東京地方裁判所は、令和3年12月10日、ツイッター上の他のツイートのスクリーンショットを添付して行ったツイッター上のツイートについて、スクリーンショットの形で添付された投稿の著作権を侵害するものであり、公正な慣行に合致せず正当な目的の範囲内でもないため、著作権法上の引用にも該当しない旨の判決を言い渡しました。
動画テロップの著作権侵害による発信者情報開示を認めた「YouTube動画字幕」事件大阪地裁判決
2022年3月1日 裁判例情報(著作権) 藤田 知美 (31)
大阪地方裁判所第26民事部(杉浦正樹裁判長)は、令和3年9月6日、YouTubeの動画テロップ(字幕)の無断転載行為が著作権侵害に該当するとして、プロバイダに対する発信者情報開示請求を認容しました。
漫画村に広告を出稿する行為が著作権侵害の幇助に該当するとした「漫画村広告」事件東京地裁判決について
2022年2月28日 裁判例情報(著作権) 飯島 歩 (129)
東京地方裁判所民事第47部(田中孝一裁判長)は、令和3年12月21日、漫画村に作品を掲載された漫画家が、漫画村に掲載する広告を募集し、出稿していた会社らに損害賠償を求めた訴訟において、被告らが漫画村に広告を出稿し、広告料を支払った行為は、原告の漫画の公衆送信権の侵害行為を幇助しまたは容易ならしめる行為であるとして、被告らに対し、その損害賠償として、連帯して1100万円を支払うよう命じる判決をしました。
販売業者による商品名の変更につき不法行為及び商標権侵害を否定した「ローラーステッカー」事件大阪地裁判決について
2022年2月25日 裁判例情報(商標・不正競争) 神田 雄 (32)
大阪地方裁判所は、令和3年11月9日、メーカーが製品に付した商品名を卸売業者が変更して当該製品を販売した事案において、当該商品名が商標登録前である場合の不法行為の成立と、商標登録後である場合の商標権侵害の成立を共に否定する判決を言い渡し、製造業者が自ら付した商品名を流通過程で変更されることを防ぐためには、予め商品名の変更を禁止する旨の合意等が必要である旨の判断を示しました。
プリンタにおける互換品インクカートリッジを認識しない構造の採用を独占禁止法違反と判断した「互換品カートリッジ」事件東京地裁判決
2022年2月2日 裁判例・審決例情報(独禁法) 藤田 知美 (31)
東京地方裁判所民事第8部(朝倉佳秀裁判長)は、令和3年9月30日、プリンタ製造・販売会社が、自社のインクジェットプリンタを、互換品インクカートリッジ(非純正品)を認識しない構造にした行為が独占禁止法違反(抱き合わせ販売等)・不法行為に該当するとして、損害賠償請求を認容しました。
特許権侵害訴訟の提起が不法行為にあたるとして被告の特許権者に対する損害賠償請求を認容した漏水位置検知装置事件大阪地裁判決について
2022年1月31日 裁判例情報(特許・意匠) 飯島 歩 (129)
大阪地方裁判所第26民事部(杉浦正樹裁判長)は、令和3年9月6日、特許権侵害訴訟を提起した特許権者が、その主張に根拠がないことを容易に知り得たのに、被告の事業展開を妨げる目的であえて訴訟提起したものとし、訴訟提起が不法行為であるとして、被告の特許権者に対する損害賠償請求を50万円の限度で認容する判決をしました。
特許権侵害を行った会社の取締役について、会社法429条1項に基づき被侵害会社に対する損害賠償責任を認めた大阪地裁判決について
2022年1月25日 裁判例情報(特許・意匠) 村上 友紀 (16)
大阪地方裁判所第21民事部(谷有恒裁判長)は、令和3年9月28日、他社の特許権を侵害した会社の代表取締役及び取締役について、会社法429条1項に基づき、特許権を侵害された他社に対し損害賠償責任を負うとの判断を示しました。本判決は、特許権侵害事案における取締役の善管注意義務の内容を具体的に示した上、取締役らによる第三者への損害賠償責任を認めた重要な判決です。