東京地方裁判所第40民事部(中島基至裁判長)は、令和3年12月10日、発信者情報開示請求訴訟において、ツイッター上の他の投稿(ツイート)のスクリーンショット画像を添付して行われたツイッター上の投稿(ツイート)について、スクリーンショット画像として添付された投稿の著作権を侵害するものであり、著作権法上の引用にも該当しない旨の判決を言い渡しました。

この判決は、著作権法上の引用の成立を否定する理由を述べる中で、他のツイートのスクリーンショット画像を添付してツイートをする行為がツイッターの規約に違反することを指摘し、公正な慣行に合致しないと判断しています。

本件は、著作権法上の引用の要件について考える上で参考になりますので、ご紹介します。

ポイント

骨子

  • 本件各投稿は、いずれも原告各投稿のスクリーンショットを画像として添付しているところ、ツイッターの規約は、ツイッター上のコンテンツの複製、修正、これに基づく二次的著作物の作成、配信等をする場合には、ツイッターが提供するインターフェース及び手順を使用しなければならない旨規定し、ツイッターは、他人のコンテンツを引用する手順として、引用ツイートという方法を設けていることが認められる。
  • そうすると、本件各投稿は、上記規約の規定にかかわらず、上記手順を使用することなく、スクリーンショットの方法で原告各投稿を複製した上ツイッターに掲載していることが認められる。そのため、本件各投稿は、上記規約に違反するものと認めるのが相当であり、本件各投稿において原告各投稿を引用して利用することが、公正な慣行に合致するものと認めることはできない。

判決概要

裁判所 東京地方裁判所民事第40部
判決言渡日 令和3年12月10日
事件番号 令和3年(ワ)第15819号
裁判官 裁判長裁判官 中島基至
裁判官    吉野俊太郎
裁判官    小田誉太郎

解説

発信者情報開示請求とは

インターネット上で名誉毀損やプライバシー権、著作権等の権利の侵害が行われた場合、侵害者に対して損害賠償などを求めるためには、まず発信者の特定が必要になります。これらのインターネット上の行為は身元を明らかにせず匿名で行われる場合がほとんどであるためです。

この発信者の特定を可能にするため、プロバイダ責任制限法4条1項[1]は、権利を侵害された者がインターネット・サービス・プロバイダ等に対し、発信者の情報の開示を求める権利である発信者情報開示請求権を認めています。

発信者情報開示請求権の要件は、①権利侵害の明白性と、②発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の存在です。

複製権・公衆送信権とは

著作権は、権利の束といわれ、種々の権利によって構成されています。それら個々の権利を支分権といい、代表的な権利としては、複製権や公衆送信権などがあります。

複製権は、著作物の複製、すなわち有形的な再製行為をする権利です。

公衆送信権は、著作物の公衆送信、すなわち公衆によって直接受信されることを目的として無線または有線で著作物の送信をする権利であり、公衆送信にはインターネット上の情報発信が含まれます。

著作権法上の引用とは

著作物を権利者の許諾なくして複製したり公衆送信したりする行為は、著作権侵害となります。ただし、著作権法はいくつもの権利制限規定を設けており、それら権利制限規定の定める行為類型に該当すれば、当該規定基づき著作権侵害を免れることになります。

実務上よく使われる権利制限規定の1つに、著作物の引用があります(著作権法32条)。条文は以下のとおりです。

(引用)
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
 (略)

この条文上、引用に該当する要件には
①公表された著作物であること
②引用であること
③公正な慣行に合致すること
④報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれること
があります。

また、適法な引用の基準として、(i)明瞭区別性と(ii)主従関係性を要求する考え方が判例にあり、解釈上も有力です。明瞭区別性とは、引用している部分と引用されている部分が明瞭に区別されていることです。主従関係性とは、引用している部分が主、引用されている部分が従という関係が存在することです。

ただし、これらの明瞭区別性と主従関係性が、著作権法32条の要件として条文上どこから読み取れるのかは明確ではありません。最近では、その位置づけの再構成を試みる議論もなされており、明瞭区別性と主従関係性には正面から言及せずに判断をする下級審裁判例も見られるようになっています。

事案の概要

本件は、原告が、他者によるツイッター上のツイートにより著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害されたと主張して、当該投稿を行った発信者の情報開示を求める発信者情報開示請求訴訟です。被告はアクセスプロバイダである株式会社NTTドコモです。

原告は、ツイッター上に以下の原告投稿1から4のツイートをしていました。

原告投稿1

こないだ発信者情報開示した維新信者8人のログインIPとタイムスタンプが開示された
NTTドコモ 2人
KDDI 3人
ソフトバンク 2人
楽天モバイル 1人 こんな内訳だった。KDDIが3人で多数派なのがありがたい。ソフトバンクが2人いるのがウザい
しかし楽天モバイルは初めてだな。どんな対応するか?

原告投稿2

@B @C @D >あたかものんきゃりあさんがそういった人たちと同じよう
「あたかも」じゃなくて、木村花さんを自殺に追いやったクソどもと「全く同じ」だって言ってるんだよ。
結局、匿名の陰に隠れて違法行為を繰り返している卑怯どものクソ野郎じゃ
ねーか。お前も含めてな。

原告投稿3

去年の今頃、「@E」とかいう高校3年生の維新信者に絡まれて勝手にブロックされて「何したいんだ、このガキ?」って事が
さっき、あのガキのツイートが目に入ったんだけど受験に失敗して浪人するわ都構想は否決されるわで散々な1年だった様だ
「ざまあ」以外の感想が浮かばない(笑)

原告投稿4

@C アナタって僕にもう訴訟を起こされてアウトなのに全く危機感無くて心の底からバカだと思いますけど、全く心配はしません。アナタの自業自得ですから。

(以上、本件判決別紙原告投稿目録より引用)

その後、他の投稿者が、以下の本件投稿1から4のように、各原告投稿のスクリーンショットを画像として添付したツイートを行いました。

本件投稿1には原告投稿1のスクリーンショット画像が、本件投稿2には原告投稿2のスクリーンショット画像が、本件投稿3には原告投稿2ないし4のスクリーンショット画像が、本件投稿4には原告投稿3のスクリーンショット画像が、それぞれ添付されていました。

本件投稿1(投稿者:本件投稿者1)

この方です(´・ω・`)。。

【スクリーンショット画像が添付された原告投稿1】

本件投稿2(投稿者:本件投稿者2)

私に対してのリプ
何にもしてないのにぃ(ó﹏ò。)

【スクリーンショット画像が添付された原告投稿2】

本件投稿3(投稿者:本件投稿者2)

絡んだ時間順に並べてみました。
暴言はいてます?

【スクリーンショット画像が添付された原告投稿2、3、4】

本件投稿4(投稿者:本件投稿者2)

はい!あなたは私に暴言をはきましたが、私はあなたに暴言を
やめてとかしか言っていません。
具体的に教えていただいてもいいですか?
検索しても出てこないです!
絡んだ順にスクショ置きますね!
どの事でしょうか?

【スクリーンショット画像が添付された原告投稿3】

(以上、投稿文章につき本件判決別紙投稿記事目録より引用)

本件訴訟の主たる争点

本件訴訟にはいくつかの争点がありますが、主たる争点は権利侵害の明白性(プロバイダ責任制限法4条1項1号)です。

原告は、本件投稿が原告投稿のスクリーンショットの画像を添付していることにより、原告投稿の著作権、具体的には複製権と公衆送信権を侵害していると主張しました。

これに対し被告は、原告投稿の著作物性には疑義があると反論し、さらに、本件各投稿は著作権法32条1項の引用に該当する余地があることを理由に、権利侵害の明白性を否定しました。

したがって、本件訴訟の主たる争点は「原告各投稿の著作物性」と「引用の成否」です。

判旨

原告投稿の著作物性

本件判決は以下のように述べ、原告投稿のいずれも原告の思想又は感情を創作的に表現したものであり、言語の著作物(著作権法10条1号)に該当すると判断しました。

原告投稿1は,140文字以内という文字数制限の中,発信者情報の仮の開示を求める仮処分手続を経て,著作権侵害と思われる通信に係る経由プロバイダが明らかになった事実に基づき,当該事実についての感想を口語的な言葉で端的に表現するものであって,その構成には作者である原告の工夫が見られ,また,表現内容においても作者である原告の個性が現れているということができる。

原告投稿2は,140文字以内という文字数制限の中,意見が合わない他のユーザーに対して,短い文の連続によりその意見を明確に修正した上,高圧的な表現で同人を罵倒するものであり,その構成には作者である原告の工夫が見られ,また,表現内容においても作者である原告の個性が現れているということができる。

原告投稿3は,140文字以内という文字数制限の中,かつてツイッター上で特定のユーザーとトラブルとなった経緯のほか,その後,当該ユーザーの政治的主張が採用されなかったこと,当該ユーザーが大学入試に失敗したことを端的に紹介した上で,当該ユーザーが不幸に見舞われたことを「ざまあ」の三文字で嘲笑するものであり,その構成には作者である原告の工夫が見られ,また,表現内容においても作者である原告の個性が現れているということができる。

原告投稿4は,140文字という文字数制限の中,原告に訴訟を提起されたにもかかわらず危機感がないと思われる特定のユーザーの状況等につき,「アナタ」,「アウト」,「バカ」,「自業自得」という簡潔な表現をリズム良く使用して嘲笑するものであり,その構成には作者である原告の工夫が見られ,また,表現内容においても作者である原告の個性が現れているということができる。

引用の成否

本件判決は以下のように述べて、本件各投稿がツイッターの規約に違反していることを認定した上で、本件各投稿において原告各投稿を引用して利用することが公正な慣行に合致しないと判断しました。

本件各投稿は,いずれも原告各投稿のスクリーンショットを画像として添付しているところ,証拠(甲10)及び弁論の全趣旨によれば,ツイッターの規約は,ツイッター上のコンテンツの複製,修正,これに基づく二次的著作物の作成,配信等をする場合には,ツイッターが提供するインターフェース及び手順を使用しなければならない旨規定し,ツイッターは,他人のコンテンツを引用する手順として,引用ツイートという方法を設けていることが認められる。そうすると,本件各投稿は,上記規約の規定にかかわらず,上記手順を使用することなく,スクリーンショットの方法で原告各投稿を複製した上ツイッターに掲載していることが認められる。そのため,本件各投稿は,上記規約に違反するものと認めるのが相当であり,本件各投稿において原告各投稿を引用して利用することが,公正な慣行に合致するものと認めることはできない。

また、引用の目的上正当な範囲内であるか否かについても、本件判決は以下のように述べてこれを否定しました。

本件各投稿と,これに占める原告各投稿のスクリーンショット画像を比較すると,スクリーンショット画像が量的にも質的にも,明らかに主たる部分を構成するといえるから,これを引用することが,引用の目的上正当な範囲内であると認めることもできない。

コメント

本件における原告投稿の著作物性については、本件判決の理由の記載が比較的簡素であるようにもみえますが、結論として著作物であると認めた点には特段の違和感はありません。

著作権法上、著作物は「思想又は感情を創作的に表現したもの・・・」と定義されていますが(同法2条)、言語による著作物については、本件の原告投稿程度の気持ちや考え、あるいは個性の発露とみられる表現であれば、従来の解釈や裁判例に照らしても著作物と認められることが多いでしょう。

本件判決で気になる点は、著作権法上の引用の成否に関する判断です。

この点について本件判決は、本件投稿がツイッターの規約に違反していることを理由として公正な慣行に合致していないと判断しているように読めます。

しかし、ツイッターの規約違反はツイッター社との契約違反を構成するとしても、それが直ちに引用行為における公正な慣行の違反であるとは限らないでしょう。まずは本件の引用行為における公正な慣行は何であるかが問題となるはずであり、運営者の定める規約の内容あるいはそれを遵守した状態がすなわち公正な慣行だと認定できるのかが問題です。

本件判決は、ツイッターが引用ツイートという方法を設けていることも指摘していますが、実態として、ツイッター上で他のツイートに言及するツイートを行う際、引用ツイートではなく他のツイートのスクリーンショットを添付したツイートを行う例は存在すると思われます。

本件が発信者情報開示請求訴訟であることの性質上、被告はインターネット・サービス・プロバイダであって本件投稿をした投稿者自身ではありません。そのような背景もあって、本件訴訟では被告から公正な慣行に関する詳細な主張立証がされなかった可能性もあります。判決文を見る限り、引用の成否に関する両当事者の主張においては、公正な慣行に合致しているか否かにも、ツイッターの規約への違反にも触れられていません。

本件が控訴された場合の高裁における審理や、本件の結果として発信者情報が開示されて本件原告と発信者(本件投稿者)との間の訴訟に発展した場合の審理では、この公正な慣行の解釈や認定が再度大きな争点になるのではないでしょうか。

 

脚注
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[1] 正式名称は「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」

 

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(文責・神田)