東京地方裁判所民事第47部(田中孝一裁判長)は、令和3年12月21日、漫画村に作品を掲載された漫画家が漫画村に広告を出稿した会社らを相手取って損害賠償を求めた訴訟において、漫画村に広告を出稿し、広告料を支払う行為は、原告の漫画の公衆送信権の侵害行為を幇助しまたは容易ならしめる行為であるとする判決をしました。結論において、判決は、被告らに対し、連帯して1100万円の損害賠償金を支払うよう命じましたが、損害額の算定において、判決は、著作権法の推定規定を用いるのではなく、原告の作品の過去の正当な売上実績から原告が得るべき使用料相当額を算出し、その額に被告らの行為の売上減少への寄与率を乗じるという手法で逸失利益の額を算出しています。

本件は、漫画家の赤松健氏が、国内最大の海賊版サイトといわれた漫画村に広告を出稿していた会社2社を相手取って損害賠償を求めたことで話題になった事件の一審判決です。著作物の違法な利用行為を物理的に容易にする行為ではなく、著作権侵害行為を内容とするサービスに資金源を提供する行為をもって著作権侵害の幇助行為と認定した点で、実務の参考になると思われますので、紹介します。

ポイント

骨子

  • 本件ウェブサイトに広告を出稿しその運営者側に広告料を支払っていた行為は,その構造上,本件ウェブサイトを運営するための・・・経費となるほとんど唯一の資金源を提供することによって,原告漫画を含め,本件ウェブサイトに掲載されている漫画の多くを,著作権者の許諾を得ずに無断で掲載するという本件ウェブサイトの運営者の行為,すなわち,原告漫画の公衆送信権の侵害行為を補助しあるいは容易ならしめる行為(幇助行為)といえるものである。
  • 本件ウェブサイトによる原告漫画が無断掲載されたことにより,原告漫画の正規品の売上が減少することが容易に推察され,原告漫画においても,発売日翌日に本件ウェブサイト上にその新作が掲載されていたことによれば,新作が無料で閲覧できることにより,読者の原告漫画の購買意欲は大きく減退するというべきである一方,被告らの行為は,本件ウェブサイトによる原告漫画の違法な無断掲載を,広告の出稿や広告料支払という行為によって幇助したものにとどまること,原告漫画2の上記累計発行部数は令和2年1月頃までのものであって,本件ウェブサイトが閉鎖された平成30年4月より後の期間における原告漫画2の売上げに関して被告らの行為との間の関連性を認めることができないことその他本件に顕れた一切の事情に照らして検討すれば,被告らの本件における行為が原告漫画の売上減少に寄与した割合は,約1パーセントと認めるのが相当である。

判決概要

裁判所 東京地方裁判所民事第47部
判決言渡日 令和3年12月21日
事件番号 事件名令和3年(ワ)第1333号
著作権侵害事件
原判決 東京地方裁判所令和元年(ワ)第21993号
裁判官 裁判長裁判官 田 中 孝 一
裁判官 小 口 五 大
裁判官 鈴 木 美智子

解説

著作権とは

著作権は、著作者人格権とともに著作者が享有する権利で、その具体的内容として、以下の著作権法17条1項により、同法21条から28条に規定される権利と定義されています。

(著作者の権利)
第十七条 著作者は、次条第一項、第十九条第一項及び第二十条第一項に規定する権利(以下「著作者人格権」という。)並びに第二十一条から第二十八条までに規定する権利(以下「著作権」という。)を享有する。
 (略)

著作権法21条から28条には、著作者が、著作物について専有する権利の内容として、複製や公衆送信、譲渡などといった著作物の利用行為が規定されています。これらの行為は、著作権法によって規制される行為であることから、一般に「法定利用行為」と呼ばれ、著作権者は、それぞれの法定利用行為に対応した権利を有します。それぞれの法定利用行為についての権利は「支分権」と呼ばれ、著作権はその総称であるといえます。

なお、「著作者」は「著作物を創作する者」のことをいいますが(著作権法2条1項2号)、いったん著作物が創作されると、その著作権を譲渡や相続によって移転することができます。また、映画の著作物については、一定の要件を満たす場合に著作者以外の者に著作権が帰属することがあります。そのため、ある著作物について著作権を有する者は、常にその著作物を創作した著作者であるとは限りません。著作権を有する者を指す言葉としては、「著作権者」の語が用いられます。

著作権侵害とは

上述のとおり、著作権の内容は著作権法21条から28条に規定される法定利用行為によって定められており、個々の権利は支分権と呼ばれます。著作権侵害とは、著作物について、著作権者の許諾なく支分権にかかる法定利用行為をすることをいいます。

書籍や漫画を複製したり、複製したデータをネットで配信したりすることは、それぞれ複製権(著作権法21条)、公衆送信権(同法23条1項)といった支分権を侵害することになります。

著作権の「間接侵害」をめぐる問題

著作権が侵害される際に、直接的に侵害行為を行う者のほかに、侵害行為を助長したり誘発したりする行為を行う者が存在することがあります。たとえば、違法に複製された著作物を配信したり、利用者間で交換したりするためのウェブサイトを運営する行為がこれにあたります。そういったウェブサイトの運営者は、自身では個々の著作物の複製や送信を行っているわけではありませんが、著作者の利益には重大な影響を与えるため、一定の場合には著作権法の規制を及ぼすこと必要であると考えられています。

この点、特許法をはじめとする産業財産権法は、第三者による権利侵害を誘発する恐れが大きい行為を類型化し、これらを権利侵害とみなす規定を置いています。これらの規定によって権利侵害とみなされる行為は、一般に「間接侵害」と呼ばれ、例えば、特許法101条は、以下に引用するとおり、侵害とみなされる行為(間接侵害)として6つの類型を列挙しています。

(侵害とみなす行為)
第百一条 次に掲げる行為は、当該特許権又は専用実施権を侵害するものとみなす。
 特許が物の発明についてされている場合において、業として、その物の生産にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
 特許が物の発明についてされている場合において、その物の生産に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
 特許が物の発明についてされている場合において、その物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為
 特許が方法の発明についてされている場合において、業として、その方法の使用にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
 特許が方法の発明についてされている場合において、その方法の使用に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
 特許が物を生産する方法の発明についてされている場合において、その方法により生産した物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為

他方、著作権法には、同法113条にみなし侵害に関する規定があり、一定の場合に直接的に法定利用行為に該当しない行為であっても著作権侵害とみなす規定はあるものの、特許法等と同じ水準で権利侵害を誘発する行為を一般的に類型化し、著作権侵害とみなす規定はありません。

そのため、著作権法の実務では、直接的に法定利用行為をしていない者に対しても、著作権者の利益を害する一定の場合に著作権法上の責任を認める解釈上の工夫が行われてきました。具体的には、規範的観点から物理的な利用行為者以外の者を利用行為の主体と認定するアプローチと、物理的な利用行為者を侵害主体としつつ、その幇助を違法と捉えるアプローチがあります。

規範的評価による利用主体の認定(カラオケ法理)

物理的な利用行為者以外の者を規範的観点から利用行為の主体と認定するアプローチは、古くは、最判昭和63年3月15日民集42巻3号199頁「クラブキャッツアイ」事件最高裁判決に示されました。同判決は、カラオケスナック店が客にカラオケ設備を提供して演奏行為を管理し、利益を増大させていることを理由に、客だけでなく、カラオケ店も歌唱行為の主体と認定し、支分権のひとつである演奏権の侵害を認定しました。このように、管理性と利益性を基礎に利用行為主体を規範的に認定する手法は、事件の舞台がカラオケ店であったことから、「カラオケ法理」と呼ばれています。

カラオケ法理は、物理的な利用行為をしていない者を直接の侵害主体と認定するもので、特許法等に見られるような「間接」侵害の考え方からは離れます。ここでの主体の拡張は、著作権法上違法とされる行為の範囲を、法律の文言の素直な解釈を超えて実質的に拡張することを意味しますので、要件の曖昧さからその適用の是非がしばしば議論になります。

他方、カラオケ法理の適用が問題となる多くの場面で何らかの規制が必要であることについては異論の少ないところと思われ、「デジタル・ミレニアム」などとも呼ばれた2000年代に入ると、同法理は、P2Pファイル交換サービス「ファイルローグ」の提供者を公衆送信権の侵害主体と認定した東京地決平成 14 年 4 月 11 日判時 1780 号 25 頁(仮処分事件における決定)や東京地中間判平成15年1月29日平成14年(ワ)第4249号(本案訴訟中間判決)、東京高判平成17年3月31日平成16年(ネ)第405号(本案訴訟控訴審判決)を嚆矢に、デジタル技術やネットワーク技術を用いたサービスなどの分野で広く適用されてきました。

もっとも、各裁判例に現れる判断基準は必ずしも一様ではなく、単純にクラブキャッツアイ事件最判の判旨が踏襲されているわけではありません。そのため、「カラオケ法理」という名称は、クラブキャッツアイ事件最判に直接的に示された判示事項にとどまらず、物理的な利用行為主体以外の者を規範的に利用行為主体と認定する解釈手法の総称として用いられることもあります。最近では、音楽教室事件において、控訴審判決(知財高判令和3年3月18日令和2年(ネ)第10022号)が原判決を一部覆し、抑制的な適用をしたことが注目されました(同判決の解説はこちら)。

著作権侵害の幇助

「ヒットワン」事件と「ビデオメイツ」事件

幇助アプローチを採用した代表的裁判例は、大阪地判平成15年2月13日平成14年(ワ)第9435号「ヒットワン」事件です。同判決は、JASRACとの間に楽曲の利用許諾契約を締結していないカラオケ店にカラオケ装置のリースをする行為が著作権侵害の幇助にあたるとして、リースを受けているカラオケ店に楽曲データを再生させない措置を命じました。

同判決は、以下のとおり述べ、カラオケ装置のリース業者は、著作物の直接的な利用主体とはいえないものの、「カラオケ装置及び楽曲データをリース契約及び通信サービス提供契約によって提供し、本件各店舗における歌詞・楽曲の演奏ないし上映を可能としているものであり、しかも、本件各店舗の経営者が原告から現に著作物使用許諾を得ていないことを知りながら、これらの提供を継続している」ことを理由に、著作権侵害行為を故意に幇助しているとしました。

管理著作物に係る歌詞・楽曲の演奏・上映行為は、本件各店舗において、その従業員ないし客が楽曲を選択し、カラオケ装置を操作して演奏させ、従業員ないし客が歌唱することによって行われるものであって、被告は、カラオケ装置及び同装置に蓄積された楽曲データをリース契約及び通信サービス提供契約に基づいて提供しているものの、それ以上に、本件各店舗における演奏行為に関与するものではなく、いつ、どの楽曲を演奏するかについて個々のカラオケ楽曲の演奏行為に直接的な関わりを有するものではないから、被告が管理著作物に係る歌詞・楽曲の演奏・上映行為の直接的な行為主体であるということはできない。しかし、被告は、本件各店舗の経営者を主体とする歌詞・楽曲の演奏や上映による著作権侵害行為について、カラオケ装置及び楽曲データをリース契約及び通信サービス提供契約によって提供し、本件各店舗における歌詞・楽曲の演奏ないし上映を可能としているものであり、しかも、本件各店舗の経営者が原告から現に著作物使用許諾を得ていないことを知りながら、これらの提供を継続しているのであるから、本件各店舗の経営者がしている著作権侵害行為を故意により幇助している者であるということができる。

また、同判決は、差止請求を認める理論的根拠として、下記のとおり、妨害排除請求権及び妨害予防請求権といった物権的請求権は、直接的な当該侵害行為者だけでなく幇助者に対しても行使し得ることから、著作権に基づく差止請求もまた幇助者に対して行使し得る、という考え方を示し、さらに、具体的な判断にあたっては、以下のような事情を総合的に考慮するものとしました。

  • 幇助者による幇助行為の内容・性質
  • 現に行われている著作権侵害行為に対する幇助者の管理・支配の程度
  • 幇助者の利益と著作権侵害行為との結び付き

著作権法112条1項にいう「著作権を侵害する者又は侵害するおそれがある者」は、一般には、侵害行為の主体たる者を指すと解される。しかし、侵害行為の主体たる者でなく、侵害の幇助行為を現に行う者であっても、①幇助者による幇助行為の内容・性質、②現に行われている著作権侵害行為に対する幇助者の管理・支配の程度、③幇助者の利益と著作権侵害行為との結び付き等を総合して観察したときに、幇助者の行為が当該著作権侵害行為に密接な関わりを有し、当該幇助者が幇助行為を中止する条理上の義務があり、かつ当該幇助行為を中止して著作権侵害の事態を除去できるような場合には、当該幇助行為を行う者は侵害主体に準じるものと評価できるから、同法112条1項の「著作権を侵害する者又は侵害するおそれがある者」に当たるものと解するのが相当である。けだし、同法112条1項に規定する差止請求の制度は、著作権等が著作物を独占的に支配できる権利(著作者人格権については人格権的に支配できる権利)であることから、この独占的支配を確保する手段として、著作権等の円満な享受が妨げられている場合、その妨害を排除して著作物の独占的支配を維持、回復することを保障した制度であるということができるところ、物権的請求権(妨害排除請求権及び妨害予防請求権)の行使として当該具体的行為の差止めを求める相手方は、必ずしも当該侵害行為を主体的に行う者に限られるものではなく、幇助行為をする者も含まれるものと解し得ることからすると、同法112条1項に規定する差止請求についても、少なくとも侵害行為の主体に準じる立場にあると評価されるような幇助者を相手として差止めを求めることも許容されるというべきであり、また、同法112条1項の規定からも、上記のように解することに文理上特段の支障はなく、現に侵害行為が継続しているにもかかわらず、このような幇助者に対し、事後的に不法行為による損害賠償責任を認めるだけでは、権利者の保護に欠けるものというべきであり、また、そのように解しても著作物の利用に関わる第三者一般に不測の損害を与えるおそれもないからである。

カラオケリース業者の責任に関しては、「ヒットワン」事件判決に先立ち、最判平成13年3月2日民集55巻2号185頁「ビデオメイツ」事件が、楽曲の利用許諾契約を締結していないカラオケ店にカラオケ設備をリースしたことについて、不法行為に基づく損害賠償の義務を認めていました。同最判は、不法行為を認定するにあたり、カラオケリース業者には、リースの実行に先立ち、カラオケ店が楽曲の利用許諾契約を締結しているかを確認すべき注意義務があるとの考え方を示しています。「ヒットワン」事件は、著作権侵害の幇助を根拠に差止が命じられた点においてリーディングケースに位置付けられますが、判決理由の中で、ビデオメイツ事件最判に基づく注意義務違反の存在を認定し、主文に現れた具体的な侵害防止措置の根拠としています。

「Winny」事件

刑事法分野で著作権侵害の幇助が問題になった著名事案としては、「Winny」事件があります。これは、P2P技術を用いたファイル交換ソフトの開発者が著作権侵害の幇助の罪で逮捕、起訴され、京都地裁で罰金150万円の有罪判決(平成18年12月23日京都地裁判決判タ1229号105頁)を受けたという事件ですが、その後、控訴審で無罪判決があり(大阪高判平成21年10月8日平成19年(う)第461号)、最高裁判所でも無罪が維持されました(最三判平成23年12月19日平成21年(あ)第1900号刑集65巻9号1380頁)。

同最判は、以下のとおり、Winnyは適法にも違法にも利用可能な「価値中立ソフト」であることを踏まえ、「単に他人の著作権侵害に利用される一般的可能性があり、それを提供者において認識、認容しつつ当該ソフトの公開、提供をし、それを用いて著作権侵害が行われたというだけで、直ちに著作権侵害の幇助行為に当たると解すべきではない」と判示しました。

Winnyは,1,2審判決が価値中立ソフトと称するように,適法な用途にも,著作権侵害という違法な用途にも利用できるソフトであり,これを著作権侵害に利用するか,その他の用途に利用するかは,あくまで個々の利用者の判断に委ねられている。また,被告人がしたように,開発途上のソフトをインターネット上で不特定多数の者に対して無償で公開,提供し,利用者の意見を聴取しながら当該ソフトの開発を進めるという方法は,ソフトの開発方法として特異なものではなく,合理的なものと受け止められている。新たに開発されるソフトには社会的に幅広い評価があり得る一方で,その開発には迅速性が要求されることも考慮すれば,かかるソフトの開発行為に対する過度の萎縮効果を生じさせないためにも,単に他人の著作権侵害に利用される一般的可能性があり,それを提供者において認識,認容しつつ当該ソフトの公開,提供をし,それを用いて著作権侵害が行われたというだけで,直ちに著作権侵害の幇助行為に当たると解すべきではない。

また、価値中立的なソフトを提供することがどのような場合に幇助犯を構成するか、という点については、以下のとおり、「一般的可能性を超える具体的な侵害利用状況が必要であり、また、そのことを提供者においても認識、認容していることを要するというべきである」としています。

かかるソフトの提供行為について,幇助犯が成立するためには,一般的可能性を超える具体的な侵害利用状況が必要であり,また,そのことを提供者においても認識,認容していることを要するというべきである。すなわち,ソフトの提供者において,当該ソフトを利用して現に行われようとしている具体的な著作権侵害を認識,認容しながら,その公開,提供を行い,実際に当該著作権侵害が行われた場合や,当該ソフトの性質,その客観的利用状況,提供方法などに照らし,同ソフトを入手する者のうち例外的とはいえない範囲の者が同ソフトを著作権侵害に利用する蓋然性が高いと認められる場合で,提供者もそのことを認識,認容しながら同ソフトの公開,提供を行い,実際にそれを用いて著作権侵害(正犯行為)が行われたときに限り,当該ソフトの公開,提供行為がそれらの著作権侵害の幇助行為に当たると解するのが相当である。

少々乱暴なたとえをすると、包丁は、料理の道具にも殺人の道具にもなるものですが、一般的に殺人の道具となると分かっているだけでは包丁の販売が違法になることはないものの、それ以上に殺人が行われる具体的な危険性の認識がある状態で包丁を提供すれば殺人の幇助になりうる、というのと同様の考え方といえるでしょう。

事案の概要

本件の原告は漫画家の赤松健氏で、被告らは、海賊版サイト「漫画村」に広告を出稿していた2つの会社です。原告は、海賊版サイトである漫画村に広告を出稿することは、著作権侵害行為を資金的に幇助するものであるとして、これら2社に対し、損害賠償を求めました。

なお、漫画村の運営者に対しては、刑事訴追がなされ、福岡地方裁判所における有罪判決(福岡地判令和3年6月2日令和元年(わ)第1181号、同第1283号、同第1498号、令和2年(わ)第41号著作権法違反、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件)がすでに確定しています(同判決の解説はこちら)。

判旨

著作権侵害の幇助の成否について

判決は、著作権侵害の幇助を検討するにあたり、まず、漫画村に極めて多数の作品が掲載され、その利用数も膨大なものであったことを認定しました。

本件ウェブサイトの運営実態を見ると,本件ウェブサイトの運営者は,5万冊以上もの漫画作品をインターネット上に掲載していたが,原告漫画を含め,本件ウェブサイトに掲載されている漫画の多くを,著作権者の許諾を得ずに無断で掲載する一方,利用者において無料でそれらの漫画を閲覧することができるようにし,発行翌日に新作閲覧ができるようにするなどのこともして利用者の誘引や閲覧数の増大を図り,費用は広告収入で賄う仕組みを作り上げ,本件ウェブサイトの開設から2年後には,月間の閲覧数が1億7000万にも上るなど,本件ウェブサイトの利用者は相当の規模に上っていたことが認められる。

また、判決は、広告主からの広告料収入が漫画村のほぼ唯一の資金源であったことを認定しました。

本件ウェブサイトは,その利用者からの支払によりこれを運営するための経費(本件ウェブサイトが使用するサーバ等,その維持管理に必要となる費用や本件ウェブサイトの運営者等の得る報酬等)を賄うことが構造上予定されず,その規模を増大させることにより,本件ウェブサイト上での広告掲載効果を期待する事業主を増加させ,その運営資金源のほとんどを,広告事業主から支払われる広告費による広告料によって賄う仕組みであったことがうかがわれるのであって,当該広告料収入がほとんど唯一のその資金源であったというべきである。

その上で、判決は、漫画村の運用実態に照らし、漫画村に対する広告料の支払いは、「公衆送信権の侵害行為を補助しあるいは容易ならしめる行為(幇助行為)といえる」としました。

このような本件ウェブサイトの運営実態からすると,本件ウェブサイトに広告を出稿しその運営者側に広告料を支払っていた行為は,その構造上,本件ウェブサイトを運営するための上記経費となるほとんど唯一の資金源を提供することによって,原告漫画を含め,本件ウェブサイトに掲載されている漫画の多くを,著作権者の許諾を得ずに無断で掲載するという本件ウェブサイトの運営者の行為,すなわち,原告漫画の公衆送信権の侵害行為を補助しあるいは容易ならしめる行為(幇助行為)といえるものである。

判決は、以上の考え方に立ち、以下のとおり、本件において、被告らは著作権侵害の幇助を行なっていたものと認めました。

被告らは,上記「MEDIADⅡ」のシステムを利用して,広告主である事業者から依頼された広告掲載につき,Dを介して本件ウェブサイト上へ掲載するとともに,当該事業主から支払われる広告料をその運営者側に支払っていたのであるから,これらに照らせば,被告らは,客観的にも,主観的にも,共同して本件ウェブサイトへの広告出稿やその運営者側への広告料支払を遂行していたといえ,共同して原告漫画の公衆送信権の侵害行為を容易ならしめる不法行為(幇助行為)を行っていたものといわざるを得ない。

損害について

判決は、損害の認定において、まず、原告作品の対象期間中における売上の実績から、原告が受けるべき使用料相当額を認定しました。

原告漫画1の累計発行部数(紙媒体による書籍,電子書籍及び複数巻を一つにまとめた新装版を含む。以下同じ。)は約2000万部,原告漫画2の累計発行部数は約370万部であり,原告漫画の1冊当たりの販売価格は462円であって,原告漫画の売上額は,およそ109億4940万円となるところ,原告漫画の著作権者であると認められる原告が受けるべき使用料相当額は,原告漫画の上記のような発行部数等に照らし,同売上額の10パーセントと認めるのが相当である。

また、判決は、漫画村に原告の作品が掲載されることで、読者の購買意欲が大きく減退すると述べる一方、被告らの行為は幇助にとどまることなどを考慮し、被告らの行為が原告の漫画の売上減少に寄与した割合は1%であると認定しました。

本件ウェブサイトによる原告漫画が無断掲載されたことにより,原告漫画の正規品の売上が減少することが容易に推察され,原告漫画においても,発売日翌日に本件ウェブサイト上にその新作が掲載されていたことによれば,新作が無料で閲覧できることにより,読者の原告漫画の購買意欲は大きく減退するというべきである一方,被告らの行為は,本件ウェブサイトによる原告漫画の違法な無断掲載を,広告の出稿や広告料支払という行為によって幇助したものにとどまること,原告漫画2の上記累計発行部数は令和2年1月頃までのものであって,本件ウェブサイトが閉鎖された平成30年4月より後の期間における原告漫画2の売上げに関して被告らの行為との間の関連性を認めることができないことその他本件に顕れた一切の事情に照らして検討すれば,被告らの本件における行為が原告漫画の売上減少に寄与した割合は,約1パーセントと認めるのが相当である。

その上で、判決は、過去の原告作品の売上実績に、原告が受けるべき使用料率と、原告作品の売上減少への被告の行為の寄与割合を乗じた約1000万円をもって、原告の損害と認定しました。

これらの事情に鑑みると,本件ウェブサイトによる原告漫画に係る著作権(公衆送信権)侵害行為を被告らが幇助したことと相当因果関係が認められる原告の損害額は,1000万円(≒109億4940万円×0.1×0.01)と認めるのが相当である。

さらに、判決は、上記1000万円の1割に相当する100万円を弁護士費用として損害に加算しています。

結論

以上の認定判断を経て、判決は、結論として、被告らに対し、連帯して1100万円の損害賠償をすることを命じました。

コメント

本判決は、著作権侵害が行われているサイトに広告を出稿し、広告料を支払うことが著作権侵害の幇助にあたるとし、広告出稿者に対し、損害賠償を命じました。判決の中で目を引くポイントは、幇助の認定根拠と、損害計算の手法でしょう。

まず、幇助の認定根拠に関していうと、本件で被告らが提供した広告料は金銭であり、いかなる用途にも用いることができるものですので、カラオケ装置やファイル交換ソフト以上に著作権侵害との結びつきが弱く、この点で、広告料の支払いは、一層「価値中立」的な性質を有しているといえます。

本来的に価値中立的な行為を侵害行為の幇助に位置付けるにあたり、「ヒットワン」事件判決は、ビデオメイト事件最判で示された注意義務を基礎にしてカラオケ装置のリースと侵害行為を結びつけ、また、「Winny」事件最判は、ファイル交換ソフトの提供行為と著作権侵害を結びつけるために、「一般的可能性を超える具体的な侵害利用状況」とその認識認容が必要であるとした上で、結論として幇助の成立を否定しました。

本件では、資金提供という、物理的な法定利用行為との結びつきが極めて弱い行為を侵害行為に結びつけ、幇助を認めたものですが、その根拠となったのは、広告料が漫画村による大規模な著作権侵害を支える唯一の資金源であったという事実だといえます。

次に、損害論についてみると、判決は、原告の作品の過去の正当な売上実績から原告が得るべき使用料相当額を算出し、その額に被告らの行為の売上減少への寄与率を乗じるという手法で逸失利益の額を算出しています。著作権法114条は、著作権侵害における損害計算について規定していますが、いずれも、権利者ではなく、侵害者の利益ないし侵害行為を基礎にするもので、本判決の計算手法は、これらに基づくものではありません。

一般に、知的財産権侵害に基づく損害は逸失利益であって、その証明には困難が伴うため、法律ごとに推定規定が置かれていますが、本判決では、推定規定に依存せず、正面から逸失利益の認定をしたものといえます。具体的な計算手法については議論のあり得るところでしょうが、相当の損害額を認定する上で、他に現実的な計算方法を見出すのは容易でなかったものと推察されます。

現在、インターネット上では、利用者から得る利用料ではなく、広告出稿者からの広告料で収益を確保するモデルが一般化しているため、この判決は、インターネット上の違法行為を抑止する上で、実務的に重要な意味を持つものと思われます。

なお、令和2年の著作権改正では、海賊版サイトの利用者に対する規制が強化されました。従来、侵害コンテンツのダウンロードが違法とされるのは映像と音楽の場合に限られていましたが、同年の改正著作権法30条1項4号のもとでは、著作物全般について、侵害コンテンツであることを知りながらダウンロードする行為が違法とされています(令和2年著作権法改正の解説はこちら)。

(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
(略)
 著作権(第二十八条に規定する権利(翻訳以外の方法により創作された二次的著作物に係るものに限る。)を除く。以下この号において同じ。)を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。以下この号において同じ。)(当該著作権に係る著作物のうち当該複製がされる部分の占める割合、当該部分が自動公衆送信される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。以下この号及び次項において「特定侵害複製」という。)を、特定侵害複製であることを知りながら行う場合(当該著作物の種類及び用途並びに当該特定侵害複製の態様に照らし著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除く。)
(略)

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(文責・飯島)