知的財産高等裁判所第2部(本多知成裁判長)は、令和5年1月26日、インターネット上の電子掲示板「2ちゃんねる」の創設者である「ひろゆき」こと西村博之氏が、その商標権を侵害され、また、その商品等表示について周知表示誤認惹起行為・著名表示冒用行為・ドメイン名の不正使用行為をされたとして、「2ちゃんねる」の運用をしていた会社に対して提起した訴訟の控訴審判決をしました。

この訴訟の原判決は、原告(西村氏)が口頭弁論終結後の損害についてまで賠償を求めていた部分について、不適法な将来給付の請求訴訟であるとして却下したほかは、商品等表示の冒用について差止を認める一方、「2ちゃんねる」や「2ch」の表示が需要者に広く知られた時点でその役務の提供主体は被告であったとして、商標権については先使用権の成立を認め、また、不正競争防止法に基づく損害賠償請求につき、被告は表示の持つ出所、品質等について信用を蓄積するために主要な役割を果たしたといえる者である、つまり、被告が商品等表示にかかる役務の提供主体であったとして、それぞれ請求を棄却していました。

これに対し、本判決は、将来給付の請求訴訟を却下した点について原判決を維持し、また、口頭弁論終結時点で被告(被控訴人)による原告(控訴人)の登録商標や商品等表示の使用はないとして差止請求を全部棄却した一方、「2ちゃんねる」や「2ch」の表示が需要者に広く知られた時点でその役務の提供の主体は原告(控訴人)であったとして、先使用権の成立を否定して商標権の侵害と不正競争行為の双方の成立を認め、被告(被控訴人)に対し、損害元本2億1700万円及び遅延損害金の賠償を命じました。

本件の事実関係はかなり複雑で、しかも、通常の企業間取引をめぐる紛争とは異なり、契約書などの証拠が少ない中で間接事実が積み重ねられた結果、原審と控訴審とで事実認定が異なり、結論も分かれています(なお、下記表の「過去分」で本判決が請求を認容したのは、後述の「本件関与期間」における損害です。)。

請求 原判決 本判決
商標法 差止請求 ○(認容) ×(棄却)
過去分の損害賠償請求 ×(棄却) ○(認容)
将来分の損害賠償請求 ×(却下) ×(却下)
不正競争防止法 商品等表示差止請求 ×(棄却) ×(棄却)
ドメイン名差止請求 ×(棄却) ×(棄却)
過去分の損害賠償請求 ×(棄却) ○(認容)
将来分の損害賠償請求 ×(却下) ×(却下)

ポイント

骨子

将来給付の訴えの適法性について(原判決の引用)
  • 将来の給付を求める訴えは,あらかじめその請求をする必要がある場合に限り認められるところ(民事訴訟法135条),継続的不法行為に基づき将来発生すべき損害賠償請求権については,たとえ同一の態様の行為が将来も継続されることが予測される場合であっても,損害賠償請求権の成否及びその額をあらかじめ一義的に明確に認定することができず,具体的に請求権が成立したとされる時点において初めてこれを認定することができ,かつ,その場合における権利の成立要件の具備については債権者においてこれを立証すべく,事情の変動を専ら債務者の立証すべき新たな権利成立阻却事由の発生として捉えてその負担を債務者に課するのは不当であると考えられるようなものは,将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格を有しないものと解するのが相当である(最高裁昭和56年12月16日大法廷判決・民集35巻10号1369頁,同平成19年5月29日第三小法廷判決・集民224号391頁参照)。
商標の周知時点における役務の提供者(先使用権の成否)について
  • 控訴人が平成11年5月頃に自らプログラムやレンタルサーバを準備した上で本件電子掲示板を開設したこと、その後、利用者の増加に伴い、ボランティアの協力によって本件電子掲示板の維持や機能向上等が図られるようになり、控訴人は不要なデータの削除作業等を行うようになっていったものの、本件電子掲示板のプログラムの修正等に参加する技術的ボランティアは、控訴人から、又は、NTテクノロジー社のサーバの使用を控訴人に申し出て控訴人の了承を得るなどして平成12年頃から本件電子掲示板の運営に関与していたBから、技術的ボランティアとして参加することの許諾を得るなどしていたこと、平成14年頃から平成26年2月に至るまで、本件電子掲示板の広告料収入は控訴人が代表取締役を務める東京プラス社が取得し、その中から控訴人名義でNTテクノロジー社に送金がされるなどしていたこと、平成16年及び平成17年に控訴人が対外的にも本件電子掲示板の管理人として活動し、平成18年5月12日発行の「2ちゃんねる公式ガイド2006」にも控訴人が本件電子掲示板の生みの親であることなどが記載されていたことのほか、その後も控訴人が平成18年当時本件電子掲示板の管理人であったことに沿う事実が認められることを考慮すると、「2ちゃんねる」の標章及び「net」の標章が周知性を獲得したというべき平成18年の時点において、その役務の提供の主体は、控訴人であったというべきである。
著名表示冒用行為について
  • 本件関与期間において、被控訴人は、上記商品等表示と同一又は類似の被告標章1及び2を使用したものであるところ、平成26年2月19日にNTテクノロジー社(A)によって控訴人に無断で控訴人の本件サーバ(NT)へのアクセスが遮断されたこと、被控訴人は、NTテクノロジー社のために本件電子掲示板に関連するプログラミングなどを行う会社として、Aも出資して設立された会社であり、NTテクノロジー社と密接な関係にあり(被控訴人も、NTテクノロジー社と被控訴人を併せて「被控訴人側」などと主張している。)、NTテクノロジー社と被控訴人との間では被控訴人が本件電子掲示板に関連する業務を分担することが合意されていたことがうかがわれること、同日当時、本件ドメイン名の登録名義も被控訴人であったとみられることからすると、本件関与期間において、被控訴人は、控訴人に無断で、著名な控訴人の商品等表示が使用された本件電子掲示板の運営から控訴人を排除して自らがその運営者となり、当該商品等表示と同一又は類似の被告標章1及び2を使用したもので、被控訴人による上記の被告標章1及び2の使用は、被控訴人の商品等表示としての、他人である控訴人の著名な商品等表示の使用であり、また、その使用について、被控訴人には少なくとも過失があったとみるのが相当である。

判決概要

裁判所 知的財産高等裁判所第2部
判決言渡日 令和5年1月26日
事件番号
事件名
令和2年(ネ)第10009号、同年(ネ)第10037号
商標権侵害差止等請求控訴事件、同附帯控訴事件
原判決 東京地判令和元年12月24日平成29年(ワ)第3428号
裁判官 裁判長裁判官 本 多 知 成
裁判官    中 島 朋 宏
裁判官    勝 又 来未子

解説

商標権とその侵害

商標法は、商品や役務について用いられる標章(マーク)のことを商標と呼んでおり、具体的には、以下の同法2条1項に定義を置いています。

(定義等)
第二条 この法律で「商標」とは、人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)
(略)

自己の業務にかかる商品や役務について使用する商標については、以下の商標法3条1項により、同条項に規定する例外にあたらない限り、商標登録を受けることができます。

(商標登録の要件)
第三条 自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。
(略)

商標登録の設定を受けると、以下の商標法18条1項により、商標権が発生します。

(商標権の設定の登録)
第十八条 商標権は、設定の登録により発生する。
(略)

商標権が発生すると、以下の商標法25条第1文により、商標権者は、登録された指定商品・役務について、登録商標を使用する権利を専有します。

(商標権の効力)
第二十五条
 商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。(略)

商標権者が登録商標を使用する権利を専有している場合、その商標を他人が使用するときは、商標権者から許諾を得ることが必要になります。それにもかかわらず、他人が勝手に登録商標を指定商品・役務について使用すると、商標権侵害となります。

商標権侵害に該当する範囲として、以下の商標法37条は、登録されたものと同一の指定商品・役務について同一の商標を使用する場合だけでなく、指定商品・役務と類似の商品・役務について商標を使用する場合や、類似の商標を使用する場合なども商標権侵害とみなす旨規定しています。

(侵害とみなす行為)
第三十七条 次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。
 指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用
 指定商品又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品であつて、その商品又はその商品の包装に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを譲渡、引渡し又は輸出のために所持する行為
 指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供するために所持し、又は輸入する行為
 指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供させるために譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持し、若しくは輸入する行為
 指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をするために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を所持する行為
 指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持する行為
 指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をし、又は使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造し、又は輸入する行為
 登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造するためにのみ用いる物を業として製造し、譲渡し、引き渡し、又は輸入する行為

先使用権とその成立要件

先使用権とは

上述のとおり、他人の登録商標を指定商品・役務について使用すると商標権侵害となりますが、それにはいくつかの例外があり、そのひとつとして、商標を使用する者が先使用権を有している場合が挙げられます。

先使用権とは、特許法や実用新案法、意匠法、商標法といった産業財産法制に見られる制度で、他人が権利出願する前にその権利の目的となる知的財産を用いていた場合に、それが権利化された後も引き続き用いることができる権利のことをいいます。具体的には、特許法79条、実用新案法26条(特許法79条の準用)、意匠法29条、商標法32条、同法32条の2において、通常実施権(特許法、実用新案法、意匠法)ないし通常使用権(商標法)の一種とされています。通常実施権や通常使用権は、権利者からのライセンス付与によって生じるものが最も一般的ですが、先使用権のように、権利者からの許諾によらずに法律に依拠して発生する場合もあり、こういった性質に着目するときは、法定実施権ないし法定使用権と呼ばれます。

特許法・実用新案法・意匠法における先使用権の成立要件

先使用権の成立要件として、特許法、実用新案法、意匠法では、他人が特許出願をした時点で、日本国内で、善意でその出願にかかる発明、考案、意匠の実施である事業をしていたか、または、そういった事業の準備をしていたことが求められています。例えば、特許法では、以下のとおり規定されています。

(先使用による通常実施権)
第七十九条 特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、又は特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して、特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許出願に係る特許権について通常実施権を有する。

商標法における先使用権の成立要件

商標法における先使用権の成立要件は、特許法、実用新案法、意匠法と比較すると、複雑です。具体的には、以下の商標法32条1項に規定があり、①他人の商標登録出願前から、②日本国内で、③不正競争の目的でなく、④指定商品・役務と同一・類似の商品・役務について、登録商標と同一・類似の商標を使用し、⑤その結果、商標登録出願の際にその商標が先使用権者の商品・役務を表示するものとして「需要者の間に広く認識されている」こと、つまり、周知になっていることが求められます。

(先使用による商標の使用をする権利)
第三十二条
 他人の商標登録出願前から日本国内において不正競争の目的でなくその商標登録出願に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についてその商標又はこれに類似する商標の使用をしていた結果、その商標登録出願の際(第九条の四の規定により、又は第十七条の二第一項若しくは第五十五条の二第三項(第六十条の二第二項において準用する場合を含む。)において準用する意匠法第十七条の三第一項の規定により、その商標登録出願が手続補正書を提出した時にしたものとみなされたときは、もとの商標登録出願の際又は手続補正書を提出した際)現にその商標が自己の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、その者は、継続してその商品又は役務についてその商標の使用をする場合は、その商品又は役務についてその商標の使用をする権利を有する。当該業務を承継した者についても、同様とする。
(略)

また、先使用権が成立する場合でも、商標権者は、以下の商標法32条2項により、先使用権者に対し、混同防止のための表示を付すことを求めることができます。

(先使用による商標の使用をする権利)
第三十二条
 (略)
 当該商標権者又は専用使用権者は、前項の規定により商標の使用をする権利を有する者に対し、その者の業務に係る商品又は役務と自己の業務に係る商品又は役務との混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求することができる。

なお、ここでは解説を省略しますが、商標法32条の2は、地域団体商標の商標権についての先使用権について規定しています。

第三十二条の二 他人の地域団体商標の商標登録出願前から日本国内において不正競争の目的でなくその商標登録出願に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についてその商標又はこれに類似する商標の使用をしていた者は、継続してその商品又は役務についてその商標の使用をする場合は、その商品又は役務についてその商標の使用をする権利を有する。当該業務を承継した者についても、同様とする。
 当該商標権者は、前項の規定により商標の使用をする権利を有する者に対し、その者の業務に係る商品又は役務と自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務との混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求することができる。

不正競争防止法による商品等表示の保護

商品等表示とは

上述のとおり、商品や役務に関して用いられる標章は、商標として登録を受けることができ、その場合、商標権者として、登録商標を使用する権利を専有することができます。他方、商標登録がない場合であっても、一定の要件を満たせば、不正競争防止法上の「商品等表示」として、登録商標に近い保護を受けられることがあります。

商品等表示は、後述の不正競争防止法2条1項1号において、「人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するもの」と定義されており、「商標」や「標章」よりも広く、氏名や商号、商品の容器・包装なども含まれます。また、商品のほか、「営業」を表示するものも商品等表示にあたります。

他方、ある表示が商品等表示にあたるためには、その表示が商品や営業の出所を示し、他人の商品や営業と識別するものであることを要します。例えば、私が所属する法律事務所の名称である「イノベンティア」は、私の事務所の営業を他の事務所の営業と識別することができる表示にあたりますが、「知財・法務サービス」といった表示は、特定の事務所の営業を指すものとはいえないため、商品等表示にはあたりません。

周知表示混同惹起行為

商品等表示の保護として、不正競争防止法2条1項1号は、以下のとおり、「需要者の間に広く認識されている」他人の商品等表示を使用するなどして、他人の商品や営業との混同を生じさせる行為(周知表示混同惹起行為)を「不正競争」にあたるものとし、規制しています。

(定義)
第二条
 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
 他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為

「需要者の間に広く認識されている」(周知)といえるためには、全国的に知られているまでの必要はないものの、一定の地域で広く知られていることが必要とされます。また、必ずしも消費者全般に知られているまでの必要はなく、一定の需要層に広く知られていれば足りると解されています。

著名表示冒用行為

商品等表示の保護のもうひとつの類型として、不正競争防止法2条1項2号は、以下のとおり、他人の「著名な」商品等表示を使用するなどする行為(著名表示冒用行為)を「不正競争」にあたるものとしています。

(定義)
第二条
 (略)
 自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為
(略)

「著名」といえるためには全国的に広く知られている必要があるため、その立証は容易ではありませんが、著名性の立証に成功すれば、混同を生じたか否かを問うことなく、不正競争行為として規制することが可能になります。

ドメイン名の不正取得等の規制

不正競争防止法2条1項19号は、以下のとおり、他人の特定商品等表示と同一または類似のドメイン名を取得、保有、使用する行為を規制しています。

(定義)
第二条
 (略)
十九 不正の利益を得る目的で、又は他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章その他の商品又は役務を表示するものをいう。)と同一若しくは類似のドメイン名を使用する権利を取得し、若しくは保有し、又はそのドメイン名を使用する行為
(略)

ここで、「特定商品等表示」は、「人の業務に係る氏名、商号、商標、標章その他の商品又は役務を表示するもの」と定義されており、周知表示混同惹起行為や著名表示冒用行為で対象となる商品等表示と比較すると、「商品の容器若しくは包装」が含まれていません。これは、ドメイン名が文字からなる記号であるため、容器や包装と同一・類似のドメイン名は観念できないことによるものです。

この規定の適用を受ける上で、周知性や著名性、混同惹起といった事実を立証する必要はありませんが、ドメイン名の不正取得等が「不正の利益を得る目的」または「他人に損害を加える目的」で行われたものであることを証明する必要があります。

なお、他人の登録商標をドメイン名に用いた場合には、商標権侵害となる可能性があり、これを認めた裁判例としてモンシュシュ事件判決(大阪地判平成23年6月30日平成22年(ワ)第4461号大阪高判平成25年3月7日平成23年(ネ)第2238号、平成24年(ネ)第293号)がありますが、ドメイン名は早い者勝ちで誰でも登録できるため、登録された指定商品・役務と関係のない商品・役務に関して用いられることも多く、また、ドメイン名の使用が商標法上の使用に該当しないこともあるため、ドメイン名が登録商標と類似していても、必ずしも商標権を行使できるとは限りません。

商標権侵害行為・不正競争防止法違反行為に対する救済

商標権侵害行為・不正競争防止法違反行為に対する救済として実務的にしばしば行われるのは、差止請求権と損害賠償請求権の行使です。

差止請求権

商標権者は、商標権の侵害者に対し、以下の商標法36条1項に基づき、侵害行為の停止及び予防を請求することができ、また、同条2項に基づき、侵害行為を組成した物の廃棄や、侵害行為に供した設備の除却等を求めることができます。これらの請求権は、差止請求権と呼ばれます。

(差止請求権)
第三十六条 商標権者又は専用使用権者は、自己の商標権又は専用使用権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2 商標権者又は専用使用権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。

不正競争防止法3条も、不正競争行為に対し、同様の規定を置いています。

(差止請求権)
第三条 不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
 不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(侵害の行為により生じた物を含む。第五条第一項において同じ。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の停止又は予防に必要な行為を請求することができる。

損害賠償請求権

商標権の侵害は不法行為にあたるため、商標権者は、商標権を侵害した者に対し、以下の民法709条に基づき、損害賠償請求をすることもできます。

(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

もっとも、商標権侵害に基づく損害の性質は逸失利益であり、その立証が困難であるため、商標法は、以下のような損害推定規定を設けています。

(損害の額の推定等)
第三十八条 商標権者又は専用使用権者が故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した商品を譲渡したときは、次の各号に掲げる額の合計額を、商標権者又は専用使用権者が受けた損害の額とすることができる。
 商標権者又は専用使用権者がその侵害の行為がなければ販売することができた商品の単位数量当たりの利益の額に、自己の商標権又は専用使用権を侵害した者が譲渡した商品の数量(次号において「譲渡数量」という。)のうち当該商標権者又は専用使用権者の使用の能力に応じた数量(同号において「使用相応数量」という。)を超えない部分(その全部又は一部に相当する数量を当該商標権者又は専用使用権者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量(同号において「特定数量」という。)を控除した数量)を乗じて得た額
 譲渡数量のうち使用相応数量を超える数量又は特定数量がある場合(商標権者又は専用使用権者が、当該商標権者の商標権についての専用使用権の設定若しくは通常使用権の許諾又は当該専用使用権者の専用使用権についての通常使用権の許諾をし得たと認められない場合を除く。)におけるこれらの数量に応じた当該商標権又は専用使用権に係る登録商標の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額
 商標権者又は専用使用権者が故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、商標権者又は専用使用権者が受けた損害の額と推定する。
 商標権者又は専用使用権者は、故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対し、その登録商標の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。
(略)

不正競争行為に対しては、以下の不正競争防止法4条が損害賠償請求権を定めています。

(損害賠償)
第四条 故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。

また、商標法と同様、不正競争防止法も、以下の同法5条に損害の推定規定を置いています。

(損害の額の推定等)
第五条 第二条第一項第一号から第十六号まで又は第二十二号に掲げる不正競争(同項第四号から第九号までに掲げるものにあっては、技術上の秘密に関するものに限る。)によって営業上の利益を侵害された者(以下この項において「被侵害者」という。)が故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した物を譲渡したときは、その譲渡した物の数量(以下この項において「譲渡数量」という。)に、被侵害者がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、被侵害者の当該物に係る販売その他の行為を行う能力に応じた額を超えない限度において、被侵害者が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を被侵害者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。
 不正競争によって営業上の利益を侵害された者が故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、その営業上の利益を侵害された者が受けた損害の額と推定する。
 第二条第一項第一号から第九号まで、第十一号から第十六号まで、第十九号又は第二十二号に掲げる不正競争によって営業上の利益を侵害された者は、故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対し、次の各号に掲げる不正競争の区分に応じて当該各号に定める行為に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。
 第二条第一項第一号又は第二号に掲げる不正競争 当該侵害に係る商品等表示の使用
(略)
 第二条第一項第十九号に掲げる不正競争 当該侵害に係るドメイン名の使用
(略)

将来の給付を求める訴え

将来の給付を求める訴えの適法性

民事訴訟法135条は、将来の給付、つまり、訴訟の審理の終結時点(口頭弁論終結時)において、まだ求めることができない給付については、「あらかじめその請求をする必要がある場合に限り」訴訟提起ができることを定めています。

(将来の給付の訴え)
第百三十五条
 将来の給付を求める訴えは、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り、提起することができる。

例えば、交通事故で後遺障害が残り、就業に制限が生じた場合、それによって失った所得の補償を求めることができますが、訴訟の審理が集結した後の将来分についても、中間利息を控除した上で請求することが認められています。

逆に、上記規定のもとで訴えを提起できない場合には、訴えが不適法になるため、判決においては、請求が棄却されるのではなく、訴えが却下されることになります。

継続的不法行為と将来給付の訴えの適法性に関する判例

民事訴訟法は平成8年に大改正されていますが、それ以前は、以下のとおり、同法226条に現135条と同様の規定がありました。

第二二六条 将来ノ給付ヲ求ムル訴ハ予メ其ノ請求ヲ為ス必要アル場合ニ限リ之ヲ提起スルコトヲ得

最高裁判所は、この旧民事訴訟法226条の解釈につき、飛行機の離発着の騒音公害の問題が争われた大阪国際空港訴訟事件の大法廷判決(最大判昭和56年12月16日昭和51年(オ)第395号民集35巻10 号1369頁)において以下のとおり述べ、将来の給付を求める訴えが認められる範囲を、審理終結時に権利発生の基礎となる事実関係・法律関係が存在し、期限の到来やほとんど立証負担のない条件の成就を待つ必要があるために将来の給付となっているような場合に限定する解釈を示しました。

民訴法二二六条はあらかじめ請求する必要があることを条件として将来の給付の訴えを許容しているが、同条は、およそ将来に生ずる可能性のある給付請求権のすべてについて前記の要件のもとに将来の給付の訴えを認めたものではなく、主として、いわゆる期限付請求権や条件付請求権のように、既に権利発生の基礎をなす事実上及び法律上の関係が存在し、ただ、これに基づく具体的な給付義務の成立が将来における一定の時期の到来や債権者において立証を必要としないか又は容易に立証しうる別の一定の事実の発生にかかつているにすぎず、将来具体的な給付義務が成立したときに改めて訴訟により右請求権成立のすべての要件の存在を立証することを必要としないと考えられるようなものについて、例外として将来の給付の訴えによる請求を可能ならしめたにすぎないものと解される。

その上で、同判決は、以下のとおり述べ、不法行為が継続するような場合について、不動産を継続的に不法占拠する者に対して賃料相当額の損害を請求するような場合には将来の給付の請求も認められるものの、不法行為の成否や、損害の範囲等が流動性を持つような事例で将来分まで請求することは認められないとしました。将来の給付についての請求を判決で認め、確定してしまうと、もはやそれを変更することはできないため、将来事情が変動し、給付請求権の存否や範囲が変動した場合、給付の義務を課せられる債務者に不利益になる恐れがあることから、そういった流動性のない場合に限って訴えを認めるという考え方です。

このような規定の趣旨に照らすと、継続的不法行為に基づき将来発生すべき損害賠償請求権についても、例えば不動産の不法占有者に対して明渡義務の履行完了までの賃料相当額の損害金の支払を訴求する場合のように、右請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在し、その継続が予測されるとともに、右請求権の成否及びその内容につき債務者に有利な影響を生ずるような将来における事情の変動としては、債務者による占有の廃止、新たな占有権原の取得等のあらかじめ明確に予測しうる事由に限られ、しかもこれについては請求異議の訴えによりその発生を証明してのみ執行を阻止しうるという負担を債務者に課しても格別不当とはいえない点において前記の期限付債権等と同視しうるような場合には、これにつき将来の給付の訴えを許しても格別支障があるとはいえない。しかし、たとえ同一態様の行為が将来も継続されることが予測される場合であつても、それが現在と同様に不法行為を構成するか否か及び賠償すべき損害の範囲いかん等が流動性をもつ今後の複雑な事実関係の展開とそれらに対する法的評価に左右されるなど、損害賠償請求権の成否及びその額をあらかじめ一義的に明確に認定することができず、具体的に請求権が成立したとされる時点においてはじめてこれを認定することができるとともに、その場合における権利の成立要件の具備については当然に債権者においてこれを立証すべく、事情の変動を専ら債務者の立証すべき新たな権利成立阻却事由の発生としてとらえてその負担を債務者に課するのは不当であると考えられるようなものについては、前記の不動産の継続的不法占有の場合とはとうてい同一に論ずることはできず、かかる将来の損害賠償請求権については、冒頭に説示したとおり、本来例外的にのみ認められる将来の給付の訴えにおける請求権としての適格を有するものとすることはできないと解するのが相当である。

この判決の考え方は、民事訴訟法改正後の現在も、判例として踏襲されており、 横田基地夜間飛行差止等請求事件の最高裁判決(最三判平成19年5月29日平成18年(受)第882号集民224号391頁)が、周辺住民の慰謝料請求の訴えのうち、事実審の口頭弁論終結の日の翌日以降の分については不適法であるとの判決をしています。

知的財産権侵害と将来給付の訴え

知的財産権の侵害は、侵害品の製造販売が続いたり、商標の無断使用が続いたりするなど、継続的な不法行為としての性質を持つことがよくあるため、知的財産権が侵害されたとして損害賠償金の支払いを求める場合においては、審理終結後の侵害行為から生じる損害についてまで支払いを求めたくなるところです。

しかし、審理終結後の損害の賠償請求は、将来の給付を求めるものになるところ、例えば、侵害品の仕様変更があった場合に知的財産権の侵害が継続しているといえるかどうか、あるいは、販売を継続しているとしても、売上が毎月変動する場合にどの程度の損害が生じたといえるか、といったことは多分に流動的です。

そのため、一般的には、知的財産権の侵害に基づく損害の賠償について、将来の給付を求める訴訟は認められにくいといえるでしょう。なお、その代わりに、知的財産法制においては、将来の侵害行為に対し、差止請求権が認められています。

控訴と附帯控訴

地方裁判所の第一審終局判決に対して不服があるときは、以下の民事訴訟法281条1項本文に基づき、控訴をすることができます。

(控訴をすることができる判決等)
第二百八十一条 控訴は、地方裁判所が第一審としてした終局判決又は簡易裁判所の終局判決に対してすることができる。(略)

控訴ができる期間は、以下の民事訴訟法285条本文により、判決の送達から2週間と定められています。

(控訴期間)
第二百八十五条 控訴は、判決書又は第二百五十四条第二項の調書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に提起しなければならない。(略)

他方、控訴の定期を受けた被控訴人は、以下の民事訴訟法293条1項に基づき、控訴審の終結判決があるまでの間、附帯控訴をすることができます。

(附帯控訴)
第二百九十三条 被控訴人は、控訴権が消滅した後であっても、口頭弁論の終結に至るまで、附帯控訴をすることができる。
(略)

もっとも、附帯控訴は、控訴が取り下げられたときは、その効力を失います。

(附帯控訴)
第二百九十三条 (略)
 附帯控訴は、控訴の取下げがあったとき、又は不適法として控訴の却下があったときは、その効力を失う。(略)

このような制限があることから、附帯控訴は、一部敗訴した当事者が、積極的に控訴をしたいわけではないものの、相手が控訴するなら自分も控訴する、といった場合に使われる手続きです。

事案の概要

概要

本訴訟の原告・控訴人は、インターネット上の電子掲示板「2ちゃんねる」(「本件電子掲示板」)の創設者である「ひろゆき」こと西村博之氏(裁判所HPの原判決では「A」、控訴審判決では「X」)で、被告・被控訴人は、かつて控訴人とともに本件電子掲示板の運営をしていたジム・ワトキンス氏(原判決では「B」、控訴審判決では「A」とされていますが、ここでは「A」と表記します。)が出資したフィリピン法人で、平成24年5月3日には原告・控訴人が株式を保有するパケット・モンスター社から「2ch.net」のドメイン名を取得し、少なくとも平成26年2月19日から本件電子掲示板の運営に関与していました。

他方、本件電子掲示板のサーバは、Aが設立当時の代表者であった米国法人N.T.テクノロジーインク(「NTテクノロジー社」)が管理をし、本件電子掲示板からの広告料収入は、控訴人が代表取締役を務める東京プラス株式会社(「東京プラス社」)が受領していました。

しかし、NTテクノロジー社は、自ら提供していた2ちゃんねるビューアのサービスが個人情報漏洩に起因して停止に追い込まれたことから厳しい経済状況に陥り、平成26年2月19日、控訴人と東京プラス社が本件電子掲示板のサーバにアクセスできないようにし、自ら広告料収入を取得するようになりました。

その後の平成29年9月30日、被告は、Loki Technology, Inc.(「Loki 社」)に対して本件電子掲示板の運営権を譲渡し、Loki 社は、本件電子掲示板の名称を「5ちゃんねる」とするとともに、ドメイン名を「5ch.net」としました。この5ちゃんねるのサイトには、被告から本件電子掲示板の運営を承継したとの記載がありました。もっとも、その後も、従来のドメイン名であった「2ch.net」をブラウザのアドレスバーに入力すると、「5ch.net」に自動転送されるようになっていました(本稿執筆時点でも転送されます。)。

訴訟では、控訴人らのアクセスが遮断された平成26年2月19日から被告がLoki 社に本件電子掲示板の運営権を譲渡し、名称を「5ちゃんねる」とした平成29年9月30日までの期間を、「本件関与期間」と呼んでいます。

このような背景において、控訴人とA側の企業との間にはいくつかの訴訟やドメイン名をめぐるWIPOの仲裁が争われていますが、本件は、控訴人が登録を受けていた標準文字商標「2ちゃんねる」(「原告商標1」)及び「2ch」(「原告商標2」)について、NTテクノロジー社が控訴人らのアクセスを遮断した平成26年2月19日以降、被控訴人が本件電子掲示板等において標章「2ちゃんねる」(「被告標章1」)及び「2ch.net」(「被告標章2」)を使用することは控訴人の商標権を侵害するものであり、また、被控訴人が被告標章1及び2並びに「2ch.net」というドメイン名(本件ドメイン名)を使用することは不正競争防止法2条1項1号、2号及び19号所定の不正競争行為に該当するとして、差止及び損害賠償を求めた事件です。

商標権

控訴人が本件で商標権を行使したのは、以下の2件の商標登録に基づく権利でした。

【原告商標1】

登録番号 第5851035号
出願日 平成25年1月25日
登録日 平成28年5月20日
商 標 2ちゃんねる(標準文字)
指定商品又は指定役務並びに商品及び役務の区分 第38類 電子掲示板による通信及びこれに関する情報の提供,インターネット利用のチャットルーム形式による電子掲示板通信及びこれに関する情報の提供

第42類 インターネット又は移動体通信端末による通信を利用した電子掲示板用のサーバの記憶領域の貸与及びこれに関する情報の提供,インターネット又は移動体通信端末による通信を利用した電子掲示板へのアクセスのためのコンピュータープログラムの提供及びこれに関する情報の提供

【原告商標2】

登録番号 第5843569号
出願日 平成26年3月27日
登録日 平成28年4月22日
商 標 2ch(標準文字)
指定商品又は指定役務並びに商品及び役務の区分 第38類 電子掲示板による通信及びこれに関する情報の提供,インターネット利用のチャットルーム形式による電子掲示板通信及びこれに関する情報の提供

第42類 インターネット又は移動体通信端末による通信を利用した電子掲示板用のサーバの記憶領域の貸与及びこれに関する情報の提供,インターネット又は移動体通信端末による通信を利用した電子掲示板へのアクセスのためのコンピュータープログラムの提供及びこれに関する情報の提供

損害賠償請求に関しては、控訴人は、得られたはずの広告料収入を基礎に損害計算をしており、口頭弁論終結後のドメイン名の使用から生じる損害、つまり、将来の給付分も請求していました。

原判決

将来の給付を求める部分について

原判決は、まず、将来の給付を求める部分の適法性に関し、最高裁判所の上記裁判例を引用し、「損害賠償請求権の成否及びその額をあらかじめ一義的に明確に認定することができず,具体的に請求権が成立したとされる時点において初めてこれを認定することができ,かつ,その場合における権利の成立要件の具備については債権者においてこれを立証すべく,事情の変動を専ら債務者の立証すべき新たな権利成立阻却事由の発生として捉えてその負担を債務者に課するのは不当であると考えられるようなものは,将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格を有しない」との見解を示しました。

将来の給付を求める訴えは,あらかじめその請求をする必要がある場合に限り認められるところ(民事訴訟法135条),継続的不法行為に基づき将来発生すべき損害賠償請求権については,たとえ同一の態様の行為が将来も継続されることが予測される場合であっても,損害賠償請求権の成否及びその額をあらかじめ一義的に明確に認定することができず,具体的に請求権が成立したとされる時点において初めてこれを認定することができ,かつ,その場合における権利の成立要件の具備については債権者においてこれを立証すべく,事情の変動を専ら債務者の立証すべき新たな権利成立阻却事由の発生として捉えてその負担を債務者に課するのは不当であると考えられるようなものは,将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格を有しないものと解するのが相当である(最高裁昭和56年12月16日大法廷判決・民集35巻10号1369頁,同平成19年5月29日第三小法廷判決・集民224号391頁参照)。

その上で、原判決は、原告(控訴人)が主張する損害の内容である広告料収入は変動すること、被告(被控訴人)は本件ドメイン名を表示・使用して本件電子掲示板を運営しているとは認められないことから、損害賠償請求権の成否及びその額を一義的に明確に認定することはできないとして、将来の給付を求める部分について、原告の訴えを却下しました。

商標権侵害(先使用権の成立)について

商標権侵害については、商標の同一性・類似性は認定しつつも、被告は本件電子掲示板の運営者として先使用権を獲得していたとして、本件関与期間中に生じた損害の賠償請求を棄却しました。

この点に関し、原判決は、本件電子掲示板にかかる役務の提供主体は被告であったと認定しました。原判決は、もともと原告が本件電子掲示板を開設して管理人を名乗り、また、直接・間接に広告料収入を得ていたことを認めつつも、その後、本件電子掲示板を譲渡して管理人を退いたなどと公言していたことや、2005年以降のドメインの登録情報(Whois情報)で、NTテクノロジー社が、技術面のみならず、運営面の連絡先や登録サービス提供者として登録されていたことから、NTテクノロジー社がサービス提供主体であったとしています。その上で、本件電子掲示板のプログラムを提供するなどしていた被告は、ドメイン名を取得した2012年には、NTテクノロジーから本件電子掲示板の運営を承継したと認定したのです。そこでは、後日開設された「5ちゃんねる」に、被告から本件電子掲示板の運営を譲り受けたと記載されていたことも考慮されています。

被告に承継される前の時点において、本件電子掲示板の開設者・管理人であった原告ではなく、NTテクノロジー社が本件電子掲示板の運営主体であった、という点については、原判決は以下のとおり、巨大なサイトである本件電子掲示板の運営管理における被告の役割の大きさを強調し、「NTテクノロジー社が単に原告等の委託を受けてその指示等に基づいて管理業務を行っていたのみであるというのは不合理というほかない」と述べています。

本件電子掲示板は,多種の掲示板から構成された巨大掲示板サイトであり,その性質上,サーバの管理,新たな掲示板や機能の導入,それらの維持,改善等の運営は極めて重要である。また,平成14年頃には利用者が急激に増加していたのであり,遅くともその頃以降,それらの管理,運営等が占める役割には非常に大きいものがあった。そして,それらの管理,運営等は,平成11年以降,NTテクノロジー社が単独で又は被告と共に担っていた。この点について,原告が(略)別件訴訟において提出した陳述書中には,NTテクノロジー社は東京プラス社からサーバの管理業務を受託したにすぎない旨の記載があるが(略),上記の事実関係に照らせば,NTテクノロジー社が単に原告等の委託を受けてその指示等に基づいて管理業務を行っていたのみであるというのは不合理というほかない。

その上で、原判決は、以下のように述べ、被告は、不正競争の目的なく本件電子掲示板にかかる業務を提供していたNTテクノロジーとともに本件電子掲示板にかかる役務を提供していたか、またはNTテクノロジーの地位を承継したものであるとして、被告には、被告標章の使用について不正競争の目的はなかったとしました。

不正競争の目的なくある特定の標章を表示する役務を複数の者が共同して提供していた場合,その複数の者の間で紛争が生じた後であっても,少なくとも,主体的に自己の役務として自ら役務を提供して当該表示の持つ出所,品質等について信用を蓄積するために果たした役割が主要といえる者が,紛争後も提供した当該役務が従前と同様のものであった場合,その者による当該標章の使用は,前記の先使用権の制度趣旨に照らし,不正競争の目的なくされているとするのが相当である。そして,前記に照らせば,NTテクノロジー社は,不正競争の目的なく本件電子掲示板に係る役務を主体的に自らの役務として提供して,当該表示の持つ出所,品質等について信用を蓄積するために主要な役割を果たしたといえる。平成26年2月19日にはそれまで本件電子掲示板に関与していた東京プラス社及び原告が本件電子版のサーバにアクセスできなくなったところ,東京プラス社及び原告の同時点までの本件電子掲示板への関与の内容には不明な部分もあるが,NTテクノロジー社と共に上記提供を行ったか,NTテクノロジー社から本件電子掲示板に係る事業の承継を受けるなどしてその地位を承継した被告は,平成26年2月19日以降も本件電子掲示板に係る役務をそれまでと同様に提供していたことがうかがえ,NTテクノロジー社の果たした上記の役割に照らせば,同日以降平成29年9月30日までの間,被告標章1及び2を本件電子掲示板に係る役務を表示するものとして,不正競争の目的なく使用したと認めることが相当である。

以上の検討の結果として、原判決は、本件関与期間について、被告には先使用権があったとし、商標権侵害に基づく損害賠償請求を棄却しました。

他方、差止請求との関係では、原判決は、平成30年4月以降被告は被告標章1、2を使用していないため、もはや先使用権はなく、被告標章1及び2が使用されなくなるに至った経緯が不明であることや、「5ちゃんねる」の運営における被告との関係が明らかでないことから差止の必要性は認められるとし、これを認容しました。

不正競争行為について

さらに、不正競争防止法にかかる原告の主張について、原判決は、以下のとおり、「主体的に自己の役務として役務を提供して当該表示の持つ出所,品質等について信用を蓄積するために主要な役割を果たしたといえる者」は、その後そのような役割を担った他の者との間に紛争が生じたとしても、同じ役務について商品等表示の使用を継続することが不正競争行為になることはないとの考え方を示した上で、被告は、そのような役割を果たした者であるため、不正競争行為は成立しないとの判断を示しました。

営業表示における不競法1条1項1号又は2号の規定は,営業表示についていえば,当該他人の営業と混同を生じさせる行為等を防止することによって当該表示により示される営業の主体の信用等を保護するものである。上記各規定により保護される者には,当該表示の持つ出所識別機能,品質保証機能及び顧客吸引力を保護発展させるために共同して役務を提供した者や上記の目的のもとに結束していると評価することのできるグループに属する者も含まれ得るところ,上記各規定の上記趣旨等に照らせば,上記の複数の者の間で紛争が生じた後であっても,少なくとも,主体的に自己の役務として役務を提供して当該表示の持つ出所,品質等について信用を蓄積するために主要な役割を果たしたといえる者が,紛争後も提供した役務が従前と同様のものであった場合,関係する契約等があるなどの事情がない限り,その者は,引き続き,上記役務について上記各号による保護を受けることができるほか,上記紛争後のその者による上記役務についての当該表示の使用が,紛争前に結束等していた他の者との関係で上記各号所定の不正競争行為になることはないと解するのが相当である。

以上の認定判断を経て、原判決は、商標権に基づく差止請求は認容したものの、損害賠償請求については、口頭弁論終結時までの分については棄却し、それより後のものについては訴えを却下しました。

これに対し、原告(控訴人)が控訴し、被告(被控訴人)が附帯控訴をしたのが今回紹介する事件です。被告が控訴をせず、原告の控訴を受けて附帯控訴をしたに留まるのは、被告において本件商標を使用する意思がなく、差止命令が発令されても実質的な不都合がなかったからであろうと思われます。

判旨

将来の給付を求める訴えについて

控訴人の請求のうち、将来の給付を求める部分については、本判決も、これを不適法としました。判旨は、形式的な修正はあるものの、原判決を引用するにとどまっています。

なお、控訴審において却下の対象となる訴えとは、事実審である控訴審の口頭弁論終結時より後の損害賠償請求となるのが原則ですが、被控訴人が訴えの却下にかかる原判決の主文の変更を求めていなかったため、原審の口頭弁論終結時を基準とする原判決の主文が維持されています。

先使用権の成立について

他方、本判決は、以下のような事実を認定し、「2ちゃんねる」の標章及び「2ch.net」の標章が周知性を獲得した平成18年時点において、その役務の提供の主体は控訴人であったとし、被控訴人の先使用権の成立を否定しました。

  • 控訴人が平成11年5月頃に自らプログラムやレンタルサーバを準備した上で本件電子掲示板を開設したこと
  • その後、利用者の増加に伴い、ボランティアの協力によって本件電子掲示板の維持や機能向上等が図られるようになり、控訴人は不要なデータの削除作業等を行うようになっていったものの、本件電子掲示板のプログラムの修正等に参加する技術的ボランティアは、控訴人から、又は、NTテクノロジー社のサーバの使用を控訴人に申し出て控訴人の了承を得るなどして平成12年頃から本件電子掲示板の運営に関与していたBから、技術的ボランティアとして参加することの許諾を得るなどしていたこと
  • 平成14年頃から平成26年2月に至るまで、本件電子掲示板の広告料収入は控訴人が代表取締役を務める東京プラス社が取得し、その中から控訴人名義でNTテクノロジー社に送金がされるなどしていたこと
  • 平成16年及び平成17年に控訴人が対外的にも本件電子掲示板の管理人として活動し、平成18年5月12日発行の「2ちゃんねる公式ガイド2006」にも控訴人が本件電子掲示板の生みの親であることなどが記載されていたこと
  • その後も控訴人が平成18年当時本件電子掲示板の管理人であったことに沿う事実が認められること

控訴人が平成11年5月頃に自らプログラムやレンタルサーバを準備した上で本件電子掲示板を開設したこと(略)、その後、利用者の増加に伴い、ボランティアの協力によって本件電子掲示板の維持や機能向上等が図られるようになり、控訴人は不要なデータの削除作業等を行うようになっていったものの、本件電子掲示板のプログラムの修正等に参加する技術的ボランティアは、控訴人から、又は、NTテクノロジー社のサーバの使用を控訴人に申し出て控訴人の了承を得るなどして平成12年頃から本件電子掲示板の運営に関与していたBから、技術的ボランティアとして参加することの許諾を得るなどしていたこと(略)、平成14年頃から平成26年2月に至るまで、本件電子掲示板の広告料収入は控訴人が代表取締役を務める東京プラス社が取得し、その中から控訴人名義でNTテクノロジー社に送金がされるなどしていたこと(略)、平成16年及び平成17年に控訴人が対外的にも本件電子掲示板の管理人として活動し、平成18年5月12日発行の「2ちゃんねる公式ガイド2006」にも控訴人が本件電子掲示板の生みの親であることなどが記載されていたこと(略)のほか、その後も控訴人が平成18年当時本件電子掲示板の管理人であったことに沿う事実が認められること(略)を考慮すると、(略)「2ちゃんねる」の標章及び「2ch.net」の標章が周知性を獲得したというべき平成18年の時点において、その役務の提供の主体は、控訴人であったというべきである。

また、本判決は、原判決が、本件電子掲示板の運営がNTテクノロジー社から被告に承継されたとした時期についても、以下のとおり述べ、各標章がNTテクノロジー社や被控訴人の業務にかかる役務を表示するものになったとは認められないとしました。

他方で、本件全証拠をもってしても、平成18年の時点及びそれ以降平成26年3月27日(原告商標2の出願日)までのいずれかの時点において、「2ちゃんねる」の標章及び「2ch.net」の標章が、NTテクノロジー社又は被控訴人の業務に係る役務を表示するものとなったとみるべき事情は認められない。

これに対し、被控訴人はさまざまな主張をしていますが、本判決は、サーバの提供者が直ちに当該サーバを用いた事業の運営者となるものではないことは明らかであることや、ドメイン名の登録名義と当該ドメインを用いた事業の主体が同一であるという経験則が確固として存在するとは解し難いことなどを指摘して、これらを排斥しています。

なお、被控訴人は、商標法4条1項10号を理由とする商標登録無効の抗弁も主張していましたが、本件標章1、2が広く知られた時点で控訴人が本件電子掲示板の運営者であったことから排斥されています。商標法4条1項10号については、こちらの記事をご覧ください。

著名表示冒用行為に基づく損害賠償請求権ついて

商品等表示の使用について、本判決は、本件関与機関に至るまでに「2ちゃんねる」や「2ch.net」といった商品等表示は需要者に著名であったとした上で、以下のとおり、控訴人の本件サーバへのアクセスが一方的に遮断されたこと、被控訴人とNTテクノロジー社には密接な関係があり、本件電子掲示板に関する業務が分担されていたと伺われること、本件ドメイン名の登録名義が被控訴人となっていたことなどを理由に、被控訴人は各表示を冒用し、かつ、その冒用について少なくとも過失があるとし、控訴人は、被控訴人に対し、損害賠償を求めることができるとの結論を導きました。

本件関与期間において、被控訴人は、上記商品等表示と同一又は類似の被告標章1及び2を使用したものである(略)ところ、平成26年2月19日にNTテクノロジー社(A)によって控訴人に無断で控訴人の本件サーバ(NT)へのアクセスが遮断されたこと(略)、被控訴人は、NTテクノロジー社のために本件電子掲示板に関連するプログラミングなどを行う会社として、Aも出資して設立された会社であり、NTテクノロジー社と密接な関係にあり(略。被控訴人も、NTテクノロジー社と被控訴人を併せて「被控訴人側」などと主張している。)、NTテクノロジー社と被控訴人との間では被控訴人が本件電子掲示板に関連する業務を分担することが合意されていたことがうかがわれること(略)、同日当時、本件ドメイン名の登録名義も被控訴人であったとみられること(略)からすると、本件関与期間において、被控訴人は、控訴人に無断で、著名な控訴人の商品等表示が使用された本件電子掲示板の運営から控訴人を排除して自らがその運営者となり、当該商品等表示と同一又は類似の被告標章1及び2を使用したもので、被控訴人による上記の被告標章1及び2の使用は、被控訴人の商品等表示としての、他人である控訴人の著名な商品等表示の使用であり、また、その使用について、被控訴人には少なくとも過失があったとみるのが相当である。

差止請求権について

他方、本判決は、口頭弁論終結時において被控訴人による使用が認められないとして、ドメイン名の差止請求のほか、原判決が認容していた被告標章1、2の差止請求も棄却しました。

なお、控訴人は、「2ch.net」で Google 検索をすると「2ch.net」というドメイン名及び「5ちゃんねる」という検索結果が表示され、「2ちゃんねる」で Google 検索をすると「5ch.net」というドメイン名及び「5ちゃんねる」という検索結果が表示されることや、ブラウザのアドレスバーに「2ch.net」と入力すると5ちゃんねるのサイトに自動転送されることなどから、被控訴人は「2ch.net」を使用していると主張しましたが、本判決は、いずれの現象についても被控訴人が関与している証拠はないとして、控訴人の主張を排斥しました。

損害について

本判決は、被控訴人が得た広告料収入を基礎に、本件関与期間に控訴人が受けた損害の額は月額500万円を下らないとし、本件関与期間に相当する43か月と12日間分として2億1700万円の損害額を認定しました。

結論

結論として、本判決は、原判決が却下していた原審口頭弁論終結後の損害賠償請求については、やはり却下し、また、原判決が認容していた差止請求は棄却しました。他方、原判決が棄却していた損害賠償請求については、本件関与期間における損害額である2億1700万円及び遅延損害金についてこれを認容しました。

コメント

将来の給付を求める部分はともかくとして、本件は、東京地裁と知財高裁とで対照的な結論になりました。その要因として、関係者の関係が非常に複雑であることや、関係を規律する合意が契約書などの形で書面化されておらず、法律関係の把握が非常に難しかったことがあったのではないかと推測されます。特に、差止の必要性について、原判決が、平成30年4月以降使用されていなかった標章について、使用されなくなるに至った経緯が不明であることや、「5ちゃんねる」の運営における被告との関係が明らかでないことを理由に差止の必要性を肯定したのは、本件の事実関係の不透明さを示すものではないかと思われます。控訴審では、当事者間の関係を推認するため、極めて多くの間接事実が審理・認定されており、令和元年12月24日の原判決から令和5年1月26日の本判決までの期間は、3年あまりにわたっています。

先使用権・不正競争行為の成否については、本件で問題になった「2ちゃんねる」などの標章が周知性を獲得した時点で、「2ちゃんねる」にかかる役務を提供していたのは誰だったのか、が問題とされ、原判決は被告・被控訴人側、本判決は原告・控訴人側であると認定しました。ここで認定が分かれた理由としては、控訴審でより多くの事実が審理されたという事情もあると思われますが、非常に多くの間接事実の中で、それぞれが着目した事実の違いは興味深いところです。

背景として、原判決は、役務の提供に必要な具体的な行為を誰が担っていたのか、という役務提供者側の視点を重視し、本判決は、誰が役務の提供者と認識されているか、という需要者側の視点を重視したのかも知れません。商標法における先使用権においても、商品等表示の周知性においても、対象となる標章は、誰かの商品等であることが識別できれば足り、具体的に誰の商品等であるかが知られていることまでは要求されません。「2ちゃんねる」などの標章に識別力が認められることに争いがない本件では、その出所について、「具体的に誰かは認識されていなくても、現に役務を提供している人」という面を強調すれば原判決の考え方になじみ、「役務を提供していると需要者が認識している特定の人」がいる場合にはその人を出所とみる、という考え方に立てば、本判決の結論に至りやすくなりそうです。

もちろん、この視点も相対的なものではあり、突き詰めれば、契約書など、関係者の法律関係を安定的に認定する証拠資料が乏しかったことが裁判所によって判断が分かれた最大の要因であると考えられますが、その点も含め、商品等表示をめぐる事件における主張・立証を考える上で参考になる事案かも知れません。

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(文責・飯島)