知財高裁は、平成30年3月29日、ユニットシェルフの形態が周知性のある商品等表示に該当するとして、これと類似する形態の商品を販売する行為が不正競争に該当するとした東京地方裁判所の判決を支持する判決を出しました。

控訴審において、控訴人は、①被控訴人のユニットシェルフの形態には特別顕著性・周知性がないこと、②形態は競争上似ざるを得ない形態であることから、商品等表示に該当しないこと、③被控訴人の商品の販売開始前に出願された第三者の意匠権があることから、被控訴人の請求は権利の濫用に当たると主張していましたが、裁判所はいずれの主張も認めませんでした。

本稿では、控訴審の判断の概要を紹介します。

ポイント

骨子

本件は、組み立て式の棚であるユニットシェルフを販売する原告(被控訴人)が、これと類似の形態の商品を販売する被告(控訴人)に対し、販売は不正競争防止法2条1項1号の不正競争に当たると主張して、被告に対し、譲渡等の差し止め及び廃棄を求めた事案の控訴審判決です。

原審において、東京地方裁判所は、原告の商品形態が不正競争防止法2条1項1号の「周知の商品等表示」であると判断した上で、被告製品がこれと誤認混同を生じさせることも認めて原告の請求を認容しました。

これに対して控訴人が控訴していましたが、知財高裁は控訴人の主張を認めず、控訴を棄却しました。その過程で、「需要者」の意味や、他人の意匠権との関係について、以下のような判示をしています。

  • 控訴人商品及び被控訴人商品が金属製のユニットシェルフの家具であって、一般消費者が卒然と購入に至るような性質の商品でないことを考慮すると、少なくともこれらの商品を含む家具一般について何等かの関心を有する者を「需要者」と解すべきである。
  • 不正競争防止法2条にいう不正競争によって利益を侵害された者が他人の意匠権を侵害する事実が認められる場合であっても、当該意匠権の侵害行為は意匠法が規律の対象とするものであるから、当該事実のみによっては、直ちに被控訴人が不正競争によって利益を害された者による不正競争防止法に規定する請求権の行使を制限する理由とはならない。

判決概要

裁判所 知的財産高等裁判所第1部
判決言渡日 平成30年3月29日
事件番号 平成29年(ネ)第10083号 不正競争行為差止請求控訴事件
裁判官 裁判長裁判官 清 水    節
裁判官    中 島  基 至
裁判官    岡 田  慎 吾

解説

事案の概要及び原判決の判断

事案の概要及び原判決は、原判決のリーガルアップデートをご参照下さい。以下に骨子のみ再掲いたします。

本件は、組み立て式の棚であるユニットシェルフを販売する原告(被控訴人)が、これと類似の形態の商品を販売する被告(控訴人)に対し、販売は不正競争防止法2条1項1号の不正競争に当たると主張して、被告に対し、譲渡等の差し止め及び廃棄を求めた事案です。

原審裁判所は、下記のような規範を定立したうえで、原告の商品形態は識別力があると認定しました。

商品の形態が客観的に明らかに他の同種の商品と識別し得る顕著な特徴を有し、かつ、その形態が特定の事業者により長期間独占的に使用されるなどした結果、需要者においてその形態が特定の事業者の出所を表示するものとして周知されるに至れば、商品の当該形態自体が「商品等表示」(不正競争防止法2条1項1号)になり得るといえる。

さらに、原告の商品の販売数や広告活動等を根拠にその周知性を認め、その形態が不正競争防止法2条1項1号の「周知の商品等表示」であると判断しました。その上で、差止が認められるための他の要件も満たすと判断し、原告の請求を認容しました。

控訴人の理由

上記判決を不服として、被告が控訴をしたのが本件です。控訴人の主張は、①被控訴人の商品形態には特別顕著性・周知性がないこと、②形態は競争上似ざるを得ない形態であることから、商品等表示に該当しないこと、③被控訴人の商品の販売開始前に出願された第三者の意匠権があることから、被控訴人の請求は権利の濫用に当たることの3点を主張していました。

特別顕著性・周知性について

①の特別顕著性・周知性に関する主張は、一般消費者を対象として実施した識別力調査や控訴人と取引関係にある生活用品取り扱い業を対象とする調査では大部分の対象者が被控訴人の商品であると識別できなかったことや、販売実績を重視して周知性を認定する原判決の立論は誤りであることを主張し、商品形態に特別顕著性・周知性を認めた原判決は誤りであるというものです。

競争上の類似回避可能性について

②の競争上の類似回避可能性の主張は、商品市場への参入に当たって競争上似ざるを得ない形態は、商品の出所を識別する商品等表示には該当しないという主張です。

権利の濫用について

③の権利の濫用の主張においては、被控訴人商品の販売を開始する前に第三者により出願された意匠権があったが、被控訴人がこれを侵害する商品を大量販売した実績を奇貨として不正競争防止法に基づく差止請求を行うことは同法の趣旨に反する権利の濫用であり、請求は認められないと主張するものです。

なお、控訴人は、控訴人商品が被控訴人商品との混同を生じさせるとした原審の判断については争っていません。

本判決の判断

裁判所は、控訴人の上記①から③の主張をいずれも認めず、控訴人による控訴を棄却しました。

特別顕著性・周知性について

まず、①(特別顕著性・周知性)については、控訴人が一般消費者に対して行った識別力調査の対象は20代から40代の一般消費者にとどまるところ、控訴人商品及び被控訴人商品が金属製のユニットシェルフの家具であって、一般消費者が卒然と購入に至るような性質の商品でないことを考慮すると、少なくともこれらの商品を含む家具一般について何等かの関心を有する者を「需要者」と解すべきとしました。

また、この調査における質問内容についても具体的な出所の認識を直接の問題とする点で適切ではないとしました。

控訴人は自身の取引先の従業員を対象とした識別力調査も行っていましたが、当該調査の対象者の属性や、その規模も5社10名に留まるから、周知性の有無を裏付ける証拠としては信用性を欠くとしました。

結論として、①(特別顕著性・周知性)については、控訴人が新たない提出した識別力調査の結果によって結果が左右されることはないとしました。なお、販売実績を重視して識別力を認めたことの当否については特に言及していません。

競争上の類似回避可能性について

次に、②(競争上の類似回避可能性)については、控訴人は,被控訴人商品形態のうち、原判決が特徴的部分であると認定した「2本ポール構造、横桟及びクロスバー」は、隣接する棚板同士が干渉しない機能にするために通常選択される構造であると主張していましたが、裁判所は、他の構造を用いることによっても当該機能を果たすことができるとして、これらの構造が必ずしも上記機能を果たすために通常選択される構造であると認めることはできないとしました。

また、被控訴人商品形態は、被控訴人商品形態の特徴として挙げられた6つの要素を全て組み合わせた点において独自の特徴が認められ、この点において特別顕著性を獲得したものであるから、各個別の形態が競争上似ざるを得ないものであるという主張はそもそも特別顕著性に係る当審の判断を左右するものとはならないとしました。

権利の濫用について

最後に、③(権利の濫用)については、物の無体物としての面の利用について定めた商標法、著作権法、不正競争防止法等の知的財産権関係の各法律の趣旨、目的に鑑みると、不正競争防止法2条にいう不正競争によって利益を侵害された者が他人の意匠権を侵害する事実が認められる場合であっても、当該意匠権の侵害行為は意匠法が規律の対象とするものであるから、当該事実のみによっては、直ちに被控訴人が不正競争によって利益を害された者による不正競争防止法に規定する請求権の行使を制限する理由とはならない、と判断しました。

コメント

本件の原判決は、商品形態が不正競争防止法上の商品等表示に当たることを認めたケースとして、控訴審における判断が注目されていましたが、知財高裁が控訴を棄却したことにより、被控訴人製品のような機能的形態についても、「明らかに他の同種商品と識別し得る顕著な特徴」(特別顕著性)が認められる場合には、不正競争防止法により保護され得ることが明確になりました。

本判決及び原判決は、従来法的保護がなされにくかった機能的形態について不正競争防止法2条1項1号または2号による保護を認めた点で意義があるものといえますが、どのような場合に「特別顕著性」を認めるか等については、今後の裁判例の蓄積が待たれるところです。

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(文責・町野)