東京地方裁判所は、平成29年(2017年)8月31日、原告の製品とデザインの類似するユニットシェルフを販売していた被告に対して、同ユニットシェルフの譲渡等の差し止め及び廃棄を命じる判決を出しました。

本判決は、商品の形態が不正競争防止法2条1項1号の「商品等表示」に該当するための判断基準として、コメダ珈琲事件等で示された従来の基準を踏襲する一方、一般的に機能的な形態と考えられるユニットシェルフが「商品等表示」に該当することを認めた点で、実務上意義があると思われます。

ポイント

骨子

本件は、組み立て式の棚であるユニットシェルフを販売する原告が、これと類似の形態の商品を販売する被告に対し、販売は不正競争防止法2条1項1号の不正競争に当たると主張して、被告に対し、譲渡等の差し止め及び廃棄を求めた事案です。

裁判所は、原告の商品形態は識別力があると認定し、また、販売数や広告活動等を根拠にその周知性を認め、これが不正競争防止法2条1項1号の「周知の商品等表示」であると判断しました。その上で、差止が認められるための他の要件も満たすと判断し、原告の請求を認容しています。

判決概要

裁判所 東京地方裁判所
決定言渡日 平成29年8月31日
事件番号 平成28年(ワ)第25472号 不正競争行為差止請求事件
裁判官 裁判長裁判官  柴 田   義 明
裁判官     萩 原   孝 基
裁判官     大 下   良 仁

解説

商品の形態を保護する法律の規定

商品形態の法律上の保護としては、①意匠法、②商標法、③不正競争防止法2条1項1号、④不正競争防止法2条1項2号、⑤不正競争防止法2条1項3号及び⑥著作権法によるものの6つが考えられます。

このうち、まず、①意匠法については、登録を受けるためには、「工業上利用できる」形態であることが必須であり、かつ、それが新規性及び進歩性を有するものでなければなりません。したがって、一般的な形態以上のものを有しない棚などにつき意匠登録を受けることは容易ではありません。

次に、②商標法上の立体商標として登録を受けるためには、商品または役務との結びつきを表すものとして識別力を有していることが必要となります。したがって、例えば、棚のデザインにつき立体商標の登録を受けるためには、その棚の形態を見て特定の商品または役務を想起させるものでなければなりません。

これらと異なり、不正競争防止法における保護を受けるためには登録は要求されません。しかしながら、類似の形態の商品を販売する者に対して同法2条1項1号及び2号(上記③及び④)を根拠に請求を行うためには、当該形態が「商品等表示」として識別力を有している必要があります。

また、⑤の同法2条1項3号の形態模倣については、商品の形態の保護をストレートに目的としたものですが、日本国内において最初に販売された日から起算して3年を経過した模倣行為には適用されないため、長期間販売されることにより識別力を有することになった商品については同号による保護を受けることができない場合が多いと思われます。

最後に、⑥著作権法によっても商品の形態は保護され得ますが、同法の保護を受けるためには創作的表現である必要があり、伝統的裁判例によると、実用に供される機能的な工業製品ないしそのデザインは、その実用的機能を離れて美的鑑賞の対象となり得るような美的特性を備えていない限り保護の対象とはならないと解されています。

以下は①~⑥の保護の範囲等をまとめたものです。

登録の要否 保護の対象 保護期間
意匠法 工業上利用することができる物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの 設定登録の日から20年
商標法 人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるものであって、商品または役務について使用するもの 設定登録の日から10年。ただし、更新可能。
不競法
2条1項1号
不要 需要者の間に広く認識されている商品等表示 定めなし
不競法
2条1項2号
不要 著名な商品等表示 定めなし
不競法
2条1項3号
不要 商品の形態 定めなし。ただし、日本国内において最初に販売された日から起算して3年を経過した商品について行為については適用されない
著作権法 不要 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの 著作者の死後50年を経過するときまで

 

本件で問題となったユニットシェルフの形態は意匠法または商標法の登録はされていなかったものと思われ、また、商品の販売開始から3年以上が経過していました。

したがって、被告によるユニットシェルフの製造販売を差し止めるためには、不競法2条1項1号、同2号または著作権法に基づく請求が法律上残された選択肢となりますが、商品の形態を問題とする場合にその中では最もハードルの低い不競法2条1項1号に基づく請求が選択されたものと推測されます。

事案の概要及び争点

本件では、2本の棒材を結合して構成された支柱などからなる形態を有する組み立て式の棚であるユニットシェルフを販売する原告が、被告に対し、上記形態が周知の商品等表示であり、被告が上記形態と同一又は類似の形態のユニットシェルフを販売することが不正競争防止法2条1項1号の不正競争に当たると主張して、被告に対し、譲渡等の差し止め及び廃棄を求めた事案です。

争点は、①原告商品形態が周知の商品等表示といえるか、②原告商品と被告商品の類似性及び混同のおそれの有無及び③被告商品における商品等表示の使用の有無ですが、以下ではこのうち①ついて裁判所の判断を紹介します。

判示事項

裁判所は、商品の形態が不正競争防止法上の商品等表示に該当し得るかにつき、以下のような規範を立てました。この規範は、店舗の外観が商品等表示に当たるかが問題となったコメダ珈琲事件における規範と同趣旨のものです。

商品において、形態は必ずしも商品の出所を表示する目的で選択されるものではない。もっとも、商品の形態が客観的に明らかに他の同種の商品と識別し得る顕著な特徴を有し、かつ、その形態が特定の事業者により長期間独占的に使用されるなどした結果、需要者においてその形態が特定の事業者の出所を表示するものとして周知されるに至れば、商品の当該形態自体が「商品等表示」(不正競争防止法2条1項1号)になり得るといえる。

そして、ユニットシェルフの構成につき、側面の帆立、棚板の配置等5つの要素を組み合わせ、かつ、これに付加する要素がないという形態とすることで、特にシンプルですっきりしたという印象を与える外観を有するとの特徴を有するもので、需要者に強い印象を与えるものであることに加え、平成20年頃まで原告商品形態を有する同種の製品があったと認められないことを併せ考えると、平成16年頃の時点において、原告商品形態は客観的に他の同種商品と識別し得る顕著な特徴を有していたと判断しました。

この点につき、被告は、①原告商品形態は特有の機能等を得るために不可避的に採用せざるを得ない形態である、②原告商品のほかにも原告商品形態を有する商品が販売されているから、原告商品形態はありふれたものである等と主張していました。

しかしながら、裁判所は、上記①については、商品の構成として原告商品形態とは異なる構成を採ることができ、かつ、原告商品形態が各個別形態の組み合わせからなることに照らせば、原告商品形態が特定の機能等を得るために不可避的に採用せざるを得ない構成であるとはいえないとしました。

また、上記②については、原告商品と同一の形態を有する商品の販売が開始された時期は早くても平成20年頃であるところ、平成20年より前に原告商品形態がありふれたものであったことを認めるに足りないとしました。また、原告商品形態は、平成16年頃には、原告の商品であることを示す識別力を有したと認められていたと認定の上、被告が指摘する原告商品形態と類似の形態を有する商品があるとしても、その年間の売上高、製造販売期間を考慮すると、この商品によって、原告商品形態がありふれたものになり、他の商品と識別し得る特徴を有することがなくなったとはいえないと述べ、被告の反論を退けています。

更に、原告商品形態の周知性については、特徴のある原告商品形態を有する原告商品が、5年を超える期間にわたり、店舗、チラシ、カタログ、雑誌のような態様等での原告の独占的かつ相当大規模な宣伝販売活動等により、購入者を含む需要者の目に触れてきたことからすると、原告商品形態は、平成16年頃には、原告の出所を示すものとして需要者に認識され、不正競争防止法2条1項1号にいう商品等表示として需要者の間に広く認識されたものとなったものと認めることが相当であると判断し、結論として、原告商品形態が「周知の商品等表示」であると認定しました。

上記争点②及び③については、詳細は割愛しますが、結論としては、原告商品と被告商品の類似性と被告による商品等表示の使用を認め、原告の請求を認容しました。

コメント

商品の形態が不正競争防止法2条1項1号または2号における「商品等表示」として保護されるかどうかについては、それが識別力を有している必要があることから、顕著な特徴があり、かつ需要者に周知であるという要件が課せられると解されていたところ、本件の判断はそういった従前の考え方を踏襲するものであるといえます。

他方で、問題となった原告の商品はユニットシェルフであり、その形態は、一般的にすぐれて機能的であると考えられるものである上、その外観において一見すると特徴的な点があるとは必ずしもいえず、従来の考え方からすると、「商品等表示」であると認められるのは困難と考えられる事案でした。

しかしながら、裁判所は、商品の形態が商品等表示といえるために、「商品の形態が客観的に明らかに他の同種の商品と識別し得る顕著な特徴を有し、かつ、その形態が特定の事業者により長期間独占的に使用されるなどした結果、需要者においてその形態が特定の事業者の出所を表示するものとして周知される」という厳しい要件を課しつつも、本件のユニットシェルフについてはこの要件を満たすものと判断しています。ここでいう「明らかに他の同種商品と識別し得る顕著な特徴」としてどの程度のものが必要かについては、実務上の課題として残るものと思われます。

上記のような判断には、原告が家具、家庭用電気製品、衣料品等の小売業としては大手で、かつ、消費者に広く知れ渡ったメーカーであることも影響していると思われます。地裁段階の判決とはいえ、機能的な形態を有する商品の保護を考える上で、注目されるべき判決といえます。

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(文責・町野)