知的財産高等裁判所第2部(本多知成裁判長)は、令和4年11月2日、他者のツイートのスクリーンショット画像を添付したツイートによる著作権侵害の成否が争点となった発信者情報開示請求訴訟において、著作権法上の引用に該当し適法である旨の判断をしました。

他者のツイートのスクリーンショット画像を添付したツイートによる著作権侵害の成否が争点となった別の裁判例として、引用の成立を否定した東京地判令和3年12月10日(以下「別件判決」といいます。)があります。事案に違いはあるものの、本件判決は引用の成否に関して別件判決とは異なる判断をしたものといえます。

本件は、著作権法上の引用の要件について考える上で参考になりますので、ご紹介します。

ポイント

骨子

  • 控訴人X1 のツイートを、アイコン画像を含めてそのままスクリーンショットに撮影して示すことは、批評の目的上正当な範囲内での利用であるということができる。
  • 画像をキャプチャしてシェアするという手法が、情報を共有する際に一般に行われている手法であると認められることに照らすと、本件ツイート1における本件控訴人プロフィール画像の利用は、公正な慣行に合致するものと認めるのが相当である。
  • 仮に「引用」に該当するために主従関係があることを要すると解したとしても、主従関係の有無は分量のみをもって確定されるものではなく、分量や内容を総合的に考慮して判断するべきである。
  • そもそもツイッターの運営者の方針によって直ちに引用の適法性が左右されるものではない上、スクリーンショットの投稿がツイッターの利用規約に違反するなどの事情はうかがえない。
  • スクリーンショットにより引用をすることは、批評という引用の目的に照らし必要性があるというべきであり、その余の本件に顕れた事情に照らしても公正な慣行に反するとはいえない。

判決概要

裁判所 知的財産高等裁判所第2部
判決言渡日 令和4年11月2日
事件番号 令和4年(ネ)第10044号
裁判官 裁判長裁判官 本多 知成
裁判官    浅井 憲
裁判官    勝又 来未子
原審判決 東京地判令和4年3月30日・令和3年(ワ)第6266号

解説

発信者情報開示請求とは

インターネット上で名誉毀損やプライバシー権、著作権等の権利の侵害が行われた場合、侵害者に対して損害賠償などを求めるためには、まず発信者の特定が必要になります。これらのインターネット上の行為は身元を明らかにせず匿名で行われる場合がほとんどであるためです。

この発信者の特定を可能にするため、プロバイダ責任制限法(正式名称は「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」)4条1項は、権利を侵害された者がインターネット・サービス・プロバイダ等に対し発信者の情報の開示を求める権利である発信者情報開示請求権を認めています。

発信者情報開示請求権の要件は、①権利侵害の明白性と、②発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の存在です。

送信可能化権とは

著作権は、権利の束といわれ、種々の権利によって構成されています。それら個々の権利を支分権といい、代表的な権利としては、複製権や公衆送信権などがあります。

公衆送信権は、著作物の公衆送信、すなわち公衆によって直接受信されることを目的として無線または有線で著作物の送信をする権利であり、公衆送信にはインターネット上の情報発信が含まれます。

公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うものを自動公衆送信と呼びます。

送信可能化とは、著作権法が定める一定の行為をすることで自動公衆送信され得る状態に置く行為をいい、例えばインターネット上にアップロードする行為も送信可能化にあたります。送信可能化も、法定利用行為の1つである公衆送信に含まれます(著作権法23条1項)。

著作権法上の引用とは

著作物を権利者の許諾なくして複製したり公衆送信したりする行為は、著作権侵害となります。ただし、著作権法はいくつもの権利制限規定を設けており、それら権利制限規定の定める行為類型に該当すれば、当該規定に基づき著作権侵害を免れることになります。

実務上よく使われる権利制限規定の1つに、著作物の引用があります(著作権法32条)。条文は以下のとおりです。

(引用)
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
 (略)

この条文上、引用に該当する要件には
① 公表された著作物であること
② 引用であること
③ 公正な慣行に合致すること
④ 報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれること
があります。

また、適法な引用の基準として、(i)明瞭区別性と(ii)主従関係性を要求する考え方が判例にあり、解釈上も有力です。明瞭区別性とは、引用している部分と引用されている部分が明瞭に区別されていることです。主従関係性とは、引用している部分が主、引用されている部分が従という関係が存在することです。

ただし、これらの明瞭区別性と主従関係性が、著作権法32条の要件として条文上どこから読み取れるのかは明確ではありません。最近では、その位置づけの再構成を試みる議論もなされており、明瞭区別性と主従関係性には正面から言及せずに判断をする下級審裁判例も見られるようになっています。

事案の概要

本件は、控訴人ら(一審原告)が、ツイッター上のツイートによって自らの著作権(送信可能化権)を侵害されたと主張して、当該ツイートを行った発信者の情報開示を求めた発信者情報開示請求訴訟です。

本件で問題とされた行為は、以下の本件ツイート1及び2(以下両者を合わせて「本件ツイート」ともいいます。)のような氏名不詳の投稿者による2件のツイートです。

本件ツイート1

X1’ さん(X1’’)
DM画像捏造してまで友人を悪人に仕立て上げるのやめてくれませんかね?
捏造したところで信用の問題で誰も信じないとは思いますけど
そんなクソDM直に送るような人でもないんですよ、あんたと違って

【スクリーンショット画像として添付された控訴人X1のツイート】

本件ツイート2

ちなみにX 1’ (X1 )さんに触ると
意味不明なクソリプされたり
ツイート文章を改竄して捏造妄想作話するんで要注意だよ!

【スクリーンショット画像として添付された控訴人X1のツイート】

(以上、投稿文章につき本件判決より引用)

 

上記のように、本件ツイートにはいずれも控訴人X1のツイートのスクリーンショット画像が添付されていました(以下、本件ツイート1及び2において添付された控訴人X1のツイートのスクリーンショット画像をそれぞれ「本件投稿画像1」「本件投稿画像2」といいます。)。

本件投稿画像1の中には、控訴人X1のツイッターアカウントのプロフィール画像が3か所表示されていました。本件投稿画像2の中にも、控訴人X1のツイッターアカウントのプロフィール画像が1か所表示されていました。

控訴人X1のツイッターアカウントのプロフィール画像(以下「本件控訴人プロフィール画像」といいます。)の作成過程は、控訴人X2が撮影した控訴人X1の写真に、控訴人X1がスマートフォンのアプリを使って顔のイラストを描き加工して作成したというものでした。

一審の東京地裁において、被告がプロバイダ責任制限法にいう「開示関係役務提供者」に該当しないという理由によって請求が棄却されたため、原告らが控訴しました。

本件訴訟の主たる争点

本件訴訟にはいくつかの争点がありますが、主たる争点は権利侵害の明白性(プロバイダ責任制限法4条1項1号)です。

控訴人らは、本件ツイートの投稿が本件控訴人プロフィール画像を含むスクリーンショット画像を添付していることにより、本件控訴人プロフィール画像に係る著作権(送信可能化権)を侵害すると主張しました。

これに対し被控訴人は、本件控訴人プロフィール画像等の著作物性を争い、さらに、本件ツイートは著作権法32条1項の引用に該当し適法であると主張しました。

控訴人は権利侵害の根拠として本件ツイートの本文が名誉毀損にあたることも主張しており、さらに本件訴訟ではほかにもいくつかの争点がありますが、本稿では著作権法上の引用への該当性に焦点を当てます。

なお、一審判決では、被告がプロバイダ責任制限法にいう「開示関係役務提供者」に該当しないという理由によって請求が棄却されており、著作権法に関わる裁判所の判断はされませんでした。

判旨

本件判決は、本件控訴人プロフィール画像の著作物性を認め、本件ツイートの投稿によって本件控訴人プロフィール画像を送信可能化したと判断したうえで、著作権法上の引用について検討しました。

まず本件判決は、著作権法上の引用の要件につき、以下のとおり判示しました。

適法な「引用」に当たるには、①公正な慣行に合致し、②報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならない(著作権法32条1項)。

そして、②引用の目的上正当な範囲内かどうかについて、本件判決はまず、本件ツイート1が本件投稿画像1を付した目的は、控訴人X1が「DM画像を捏造」してこれをツイートした行為を批評することにあると認定しました。

そのうえで本件判決は、以下のように述べて、プロフィール画像を含めてスクリーンショット画像を添付することは批評の目的上正当な範囲内であると判断しました。

上記控訴人X1 の行為を批評するために、控訴人X1 のツイートに手を加えることなくそのまま示すことは、客観性が担保されているということができ、本件ツイート1の読者をして、批評の対象となったツイートが、誰の投稿によるものであるか、また、その内容を正確に理解することができるから、批評の妥当性を検討するために資するといえる。また、本件控訴人プロフィール画像は、ツイートにアイコンとして付されているものであるところ、本件ツイート1において、控訴人X1 のツイートをそのまま示す目的を超えて本件控訴人プロフィール画像が利用されているものではない。そうすると、控訴人X1 のツイートを、アイコン画像を含めてそのままスクリーンショットに撮影して示すことは、批評の目的上正当な範囲内での利用であるということができる。

また本件判決は、①公正な慣行に合致するかどうかについては、「画像をキャプチャしてシェアするという手法が、情報を共有する際に一般に行われている手法であると認められる」と述べ、本件ツイート1における本件控訴人プロフィール画像の利用は公正な慣行に合致すると判断しました。

この点に関し控訴人は、本件投稿画像1と本件ツイート1の本文とが主従関係にないとの主張をしていましたが、本件判決は以下のように述べてこの主張を退けています。

控訴人らは、本件投稿画像1の分量が本件ツイート1の本文の分量と同等であり、主従関係にないから、引用に当たらないと主張するが、仮に「引用」に該当するために主従関係があることを要すると解したとしても、主従関係の有無は分量のみをもって確定されるものではなく、分量や内容を総合的に考慮して判断するべきである。本件では、本件投稿画像1ではなく、本件控訴人プロフィール画像と本件ツイート1の本文の分量を比較すべきである上、本件投稿画像1は、本件ツイート1の本文の内容を補足説明する性質を有するものとして利用されているといえることから、控訴人らの上記主張は採用できない。

また控訴人は、ツイッターが提供する機能である引用リツイートではなくスクリーンショットによることは、ツイッター社の方針に反するものであって公正な慣行に反すると主張しましたが、本件判決は以下のように述べてこの主張も退けています。

そもそもツイッターの運営者の方針によって直ちに引用の適法性が左右さ れるものではない上、スクリーンショットの投稿がツイッターの利用規約に違反するなどの事情はうかがえない(甲41、乙13、14)。そして、批評対象となったツイートを示す手段として引用リツイートのみによったのでは、元のツイートが変更されたり削除された場合には、引用リツイートにおいて表示される内容も変更されたり削除されることから、読者をして、批評の妥当性を検討することができなくなるおそれがあるところ、スクリーンショットを添付することで、このような場合を回避することができる。現に、令和2年8月7日時点における、本件ツイート1が引用リツイートした控訴人X1 のツイートと本件投稿画像1を比較すると、上記引用リツイートでは、控訴人X1 のユーザー名が変更されており、本件ツイート1が投稿された当時に、同ツイートが批評した控訴人X1 のツイートが当時 のまま表示されているものではないことが認められ(甲3)、引用リツイートのみ によっていたのでは、本件ツイート1の投稿当時の控訴人X1 のツイートを参照することはできなくなっていたといえる。そうすると、スクリーンショットにより 引用をすることは、批評という引用の目的に照らし必要性があるというべきであり、その余の本件に顕れた事情に照らしても公正な慣行に反するとはいえないから、控訴人らの上記主張は採用できない。

本件判決は以上のように判断し、控訴人の他の主張も排斥して、本件ツイート1における本件控訴人プロフィール画像の利用について、控訴人らの著作権侵害が明白であるとはいえないと判断しました。本件ツイート2についても、同様の判断をしています。

もっとも、判決の結論としては、本件ツイートの本文による名誉毀損の成立を認め、権利侵害の明白性ありとして発信者情報開示請求を認容しています。

別件判決について

別件判決では、他者のツイートのスクリーンショット画像を添付して行われたツイートについて、スクリーンショット画像として添付されたツイートの本文の著作権を侵害するものであり、著作権法上の引用にも該当しない旨の判断がされました。

別件判決は、著作権法上の引用の成立を否定する理由を述べる中で、他のツイートのスクリーンショット画像を添付してツイートをする行為がツイッターの規約に違反すると指摘し、公正な慣行に合致しないと判断しています。

別件判決については別稿でご紹介していますので、ご参照ください。

コメント

別件判決は、他者のツイートのスクリーンショット画像を添付したツイートにつき、そうしたツイートがツイッター社の規約に違反していると認定し、公正な慣行に合致していないとの判断をして引用の成立を否定しました。

これに対し本件判決は、「スクリーンショットの投稿がツイッターの利用規約に違反するなどの事情はうかがえない」と認定しつつ、「そもそもツイッターの運営者の方針によって直ちに引用の適法性が左右されるものではない」とも判断しています。

さらに本件判決は、「画像をキャプチャしてシェアするという手法が、情報を共有する際に一般に行われている手法であると認められる」とも述べたうえで、スクリーンショット添付という手段をとることの必要性を詳細に認定して、公正な慣行に反するものではないとの判断をしています。

両判決の事案を比較すると、別件判決ではスクリーンショット画像として添付されたツイートの本文の著作権の侵害及び引用の成否が問題になったのに対し、本件判決ではプロフィール画像の著作権の侵害及び引用の成否が問題になったという違いはあります。

とはいえ、少なくとも、ツイートにおけるスクリーンショット画像の添付と著作権法上の引用の成否を考えるうえで、本件判決がより有力な先例として登場したということはできるでしょう。

また、本件判決において著作権法上の引用の法理一般の観点から注目されるのは、引用の要件として主従関係を考えるとしても主従関係の有無は分量のみをもって確定されるものではなく、分量や内容を総合的に考慮して判断するべきと述べていることです。

実務上、引用の成否を考えるにあたっては、引用する部分の分量が引用される部分の分量よりも大きいかどうかが一つの要素として着目される傾向はありますが、必ずしもそれが決定的な要素でないことが本件判決によって確認されたといえるでしょう。

 

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(文責・神田)