本年(令和2年)3月10日、内閣より「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律案」が第201回通常国会に提出され、現在、衆議院において審議中です。
本稿では、インターネット上の海賊版対策の強化などを含む今回の改正内容を解説するほか、新型コロナウィルス感染症が拡大する中で、教育現場における著作物の利用をめぐる直近の著作権規制の動向についても言及します。

ポイント

改正法案骨子

  • インターネット上の海賊版対策の強化
  • ① リーチサイト(侵害コンテンツへのリンク情報等を集約したウェブサイト)対策
    ② 侵害コンテンツのダウンロード違法化

  • 著作物の円滑な利用を図るための措置
  • ① 写り込みに係る権利制限の対象範囲の拡大
    ② 行政手続に係る権利制限規定の整備(地理的表示法・種苗法を追加)
    ③ 著作物を利用する権利に関する対抗制度の導入

  • 著作権の適切な保護を図るための措置
  • ① 著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化
    ② 不正使用防止のためのアクセスコントロール技術に関する保護の強化

  • プログラムの著作物に係る登録制度の整備(プログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律)

改正法案概要

法律案名 著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律案
法律番号 未定
成立日 未定
公布日 未定
施行日 令和3年1月1日(一部を除く。)

解説

著作権法

著作権法は、著作物等に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作権者等の権利の保護を図る法律です。
著作権法は明治時代からありましたが、昭和45年に全面的に改正されて以降、目まぐるしい社会・技術の変化とともに改正を繰り返し、特に昭和60年以降は毎年のように改正がなされています。
(以下、特別な記載のない限り、条文番号は著作権法の条文番号です。)

改正の趣旨

本改正は、著作物等をめぐる近時のビジネス動向や社会実態の変化に対応するため、インターネット上の海賊版対策など著作権の適切な保護を図るための措置や、著作物の利用の円滑化を図るための措置を講じるものです。
令和元年に本改正の各項目に関わる法案の提出が検討されていましたが、インターネット上での情報収集が委縮するのではないかといった国民の懸念・不安の声が多かったために法案提出を断念していたところ、国民の理解を得るべく大幅に修正を行い、今般の法案提出に至ったという経緯があります。

改正の項目

1.インターネット上の海賊版対策の強化
① リーチサイト ・リーチアプリ対策
② 侵害コンテンツのダウンロード違法化

2.著作物の円滑な利用を図るための措置
① 写り込みに係る権利制限の対象範囲の拡大
② 行政手続に係る権利制限規定の整備(地理的表示法・種苗法)
③ 著作物を利用する権利に関する対抗制度の導入

3.著作権の適切な保護を図るための措置
① 著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化
② アクセスコントロールに関する保護の強化

4.プログラムの著作物に係る登録制度の整備(プログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律)

インターネット上の海賊版対策の強化

リーチサイト・リーチアプリとは

インターネット上に違法にアップロードされた著作物(侵害コンテンツ・海賊版)による被害が深刻な社会問題となって久しいところですが、「リーチサイト」・「リーチアプリ」が著作権侵害を拡大するものであるとして、これらへの対策が急務となっていました。

「リーチサイト」・「リーチアプリ」は、侵害コンテンツへのリンク情報を集約し、インターネットユーザーを侵害コンテンツに誘導するウェブサイト・アプリですが、サイト・アプリ上に広告が掲示されることから、ユーザーからのアクセス数が増えれば増えるほどサイト運営者・アプリ提供者が得る広告料が増えていく仕組みとなっています。侵害コンテンツとしては、漫画をはじめ、写真集や文芸書、ビジネスソフト、ゲームなど様々なジャンルがあり、それぞれ甚大な被害が生じています。

ちなみに、リーチサイト・リーチアプリの「リーチ」は、“reach”ではなく“leech”に由来するようです。“leech”の本来の意味は、動物のヒルであり、転じて、吸血鬼・他人を食い物にする人という意味にも使われます。なるほど、上記のようなサイト・アプリがリーチサイト・リーチアプリと呼ばれるのも納得です。

上記のとおり、海賊版被害への実効的な対策を講じる一方で、国民の正当な情報収集に萎縮を生じさせないという要請もあるところ、今般の改正では以下のとおりの内容となりました。

(1) リーチサイト・リーチアプリ対策(113条2項~4項、119条2項4号・5号、120条の2第3号等)【施行日:令和2年10月1日】

現行の著作権法では、著作権者の許可なく著作物をインターネットにアップロードすることは違法でしたが、今回の改正により、リーチサイト・リーチアプリに係る次の行為も違法となります。

まず、違法となるリーチサイト・リーチアプリの定義は、次のとおりです。

① 公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト・アプリ(113条2項1号イ・2号イ)
ここでは、サイト運営者・アプリ提供者が、侵害コンテンツの利用を促す文言を表示したり、侵害コンテンツのURLを強調したりする場合が想定されています。

② 主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるウェブサイト・アプリ(113条2項1号ロ・2号ロ)
ここでは、投稿型サイトで、ユーザーが侵害コンテンツのURLを多数掲載するような場合が想定されています。

違法となる行為は、以下のとおりです。

リーチサイト・リーチアプリ において侵害コンテンツへのリンクを提供する行為に対して、民事上の差止請求・損害賠償請求が可能となります。また、刑事罰(3年以下の懲役又は300万円以下の罰金(併科あり))が科されます。

サイト運営者・アプリ提供者についても、リンクを削除できるにもかかわらずリンクの提供を放置するなどの場合には、民事上の差止請求・損害賠償請求が可能となり、また、刑事罰(5年以下の懲役又は500万円以下の罰金(併科あり))が科されます。

プラットフォームサービス提供者(リーチサイトと一般的なウェブサイトを包括している汎用的なウェブサイトのサービス提供者)については、基本的にはこの規制の対象でないことが明記されています。

(2)侵害コンテンツのダウンロード違法化(30条1項4号・2項、119条3項2号・5項等)【施行日:令和3年1月1日】

現行の著作権法では、違法にアップロードされた音楽又は映像を、違法にアップロードされたものだと知りながらダウンロードすることは違法でした。

今回の改正により、音楽や映像に限らず、漫画・雑誌・新聞・コンピュータプログラムなど著作物全般について、違法にアップロードされたものだと知りながらダウンロードすることが違法となり、民事上、損害賠償請求等が可能となりました。また、正規版が有償で提供されており、継続的又は反復してダウンロードする場合には、刑事罰(2年以下の懲役又は200万円以下の罰金(併科あり))が科されます。

もっとも、国民の正当な情報収集を委縮させないという観点から、以下の場合には、侵害コンテンツをダウンロードしたとしても、それぞれ本規制の対象外となり、違法とはなりません 。

① 違法にアップロードされたものであると知らなかった場合
重過失で知らなかった場合も違法とはなりません。

② 二次的著作物
著作物を変形させるなどして創作された二次的著作物を、二次著作物の著作者が原著作者に無断でアップロードしている場合に、違法にアップロードされたものであると知りながらダウンロードしても、違法とはなりません。

③ 軽微なもの
著作物全体の分量からしてごく小部分の場合や、画質が低く不鮮明な場合などは、違法とはなりません。

④ 特別な事情がある場合
著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合には、違法とはなりません。これに該当するかどうかは、著作物の種類・経済的価値といった保護の必要性の程度とダウンロードの目的・必要性といった態様を総合考慮して判断されます。

(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となっている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
①~③ (略)
④著作権(第二十八条に規定する権利(翻訳以外の方法により創作された二次的著作物に係るものに限る。)を除く。以下この号において同じ。)を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であって、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。以下この号において同じ。)(当該著作権に係る著作物のうち当該複製がされる部分の占める割合、当該部分が自動公衆送信される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。以下この号及び次項において「特定侵害複製」という。)を、特定侵害複製であることを知りながら行う場合(当該著作物の種類及び用途並びに当該特定侵害複製の態様に照らし著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除く
2 前項第三号及び第四号の規定は、特定侵害録音録画又は特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行う場合を含むものと解釈してはならない
3 (略)

(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)
第二十八条 二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。

(下線は筆者による)

なお、音楽と映像のダウンロードについての規制は従前のままであり、上記①~④の場合も違法となりますし、また、継続的又は反復した場合でなくても刑事罰が科されます。

著作物の円滑な利用を図るための措置 【施行日:令和2年10月1日】

(1)写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大(30条の2)

現行法では、写真撮影・録音・録画を行う際に著作物の写り込みがある場合、原則としてその写り込みに対しては著作権による保護が制限されていますが、改正法では、スクリーンショットやCG化、インターネットによる生配信などを行う際の物や音の写り込みについても、著作権による保護が制限されることとなります。写り込み規制に係るその他の要件も緩和されたことから、軽微な写り込みについては、正当な範囲内であれば違法となる可能性が低くなります。

(2)行政手続に係る権利制限規定の整備(地理的表示法・種苗法追加)(42条2項)

現行法では、特許審査手続等の行政手続において、必要な範囲で著作物の複製が認められていましたが、改正法では、「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」(地理的表示法)に基づく地理的表示の登録手続や、「種苗法」に基づく品種の登録手続についても、必要な範囲で著作物の複製が認められます。

(3)著作物を利用する権利に関する対抗制度の導入(63条の2)

著作権者から許諾を受けた著作物の利用権は、当該著作物の著作権を取得した者やその他の第三者に対し、登録等の手続なく当然に対抗できることが定められました。特許法等には、既に同様の規定があります。

著作権の適切な保護を図るための措置【施行日:令和3年1月1日】

(1)著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化(114条の3)

訴訟における書類提出命令手続(被疑侵害者が保有する書類を権利者に対し提出させる手続)に関し、①裁判所が実際の書類を見て書類提出の必要性を判断することが可能となるのに加え、②その際に大学教授などの中立的な専門委員が関与できるようになります(インカメラ手続の拡充)。これにより、侵害の有無及び損害額の立証が容易になります。
特許法においては、同様の制度が平成30年改正で導入されていました。

(2)アクセスコントロールに関する保護の強化(2条1項20号・21号、113条7項、120条の2第4号等)

現行法の規定では、アクティベーション等による方式(対価を支払って正規に取得したシリアル番号の入力等により、正規ライセンスを保持していることを認証処理し、利用可能にする方式)を用いたアクセスコントロール(コンテンツ不正利用防止策)に対し、これを回避する行為が著作権法による保護の対象に含まれることが不明確であると言われていました。
改正法では、「著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに」(2条1項20号・21号)との文言を削除し、アクティベーション等による方式を用いたアクセスコントロールの回避行為についても、著作権侵害行為であるとして、著作権法による保護の対象となることが明確になりました。

プログラムの著作物に係る登録制度の整備(プログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律4条、26条等)

(1)プログラム著作物の登録証明の請求【施行日:公布日から1年を超えない範囲で政令で定める日】

プログラムの著作物に関し、著作権者等の利害関係者が、自らの保有する著作物と登録されている著作物が同一であることの証明を請求できるようになります。
訴訟等で活用することにより、相手方のプログラムよりも先に創作した事実が推定されるなどして、著作権侵害の立証が容易になります。

(2)手数料免除規定の廃止【施行日:令和3年1月1日】

国又は独立行政法人が登録を行う場合の手数料の免除規定が廃止されます。

直近の著作権関連規制の動向

授業目的公衆送信補償金制度の早期施行【施行日:令和2年4月28日】

平成30年の著作権法改正で新設され、未施行だった授業目的公衆送信補償金制度(35条)が 、今般の新型コロナウィルス感染症に伴う遠隔授業等の需要拡大に対応するため、当初の予定を前倒しして、令和2年4月28日に施行されました。(平成30年改正についての記事はこちらをご覧ください。)

「授業目的公衆送信補償金制度」は、教育機関の設置者が各分野の権利者団体で構成される「指定管理団体」に一括して補償金を支払うことで、非営利の学校などの授業において、遠隔授業・予復習のための著作物等の送信等を対象として、一定の範囲の利用につき、著作権者に対し個別の許諾を得ることなく、著作物の公衆送信を行えるようにする制度です。

改正前は、対面授業における著作物のコピー・配布や、対面授業の様子を遠隔地に同時中継する遠隔合同授業の際の著作物の送信については、権利者の許諾なく無償で行うことが可能でした。今後は、補償金を支払うことで、権利者の許諾なく、予復習用の資料を生徒にメールで送信したり、配信側に生徒がいないオンライン指導やオンデマンド講義で資料を送信したりすることが可能となります。改正前に無償で行えていた上記の事項については、今後も無償で行うことができます。

令和2年度の無償利用

現在、新型コロナウィルス感染症対策に伴う各教育機関の臨時休業等に伴い、教育機関がICTを活用した遠隔指導や児童・生徒が各自タブレット端末に教材をダウンロードするなどして自習を行う必要性が緊急的に高まっています。

そこで、指定管理団体である一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会は、令和2年4月6日、令和2年度に限り、上記補償金について特例的に無償とすることを決定しました。

また、同月16日、著作物の教育利用に関する関係者フォーラムから、教育現場での著作物利用に関するガイドライン「改正著作権法第35条運用指針(令和2(2020)年度版)」が公表されており、同条の適用の有無等を検討する上で参考になります。

コメント

著作権法は通信技術の進歩等に対応するため、近年ますます条文が難解になってきています。これまで適法だった行為やグレーゾーンだった行為も、法改正によって意図せずに違法行為になることが予想され、反対に、法によって新たに適法な手段が明示されることもあります。本改正においても、施行後1年を目途に、政府が規定について改めて検討し、必要な措置を講じることが明記されているところですので、常に最新の情報をキャッチして事業活動にいかすことが大切です。

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(文責・村上)