トランプ大統領の就任式も目前に迫ったところで、TPPと知的財産法シリーズ最終回は、商標法と地理的表示法に触れたいと思います。

※ 末尾にTPP11の発効に伴う国内整備法施行に関する追記をしました(2018年12月30日)

TPPと商標法

概要

商標法に関しては、商標の不正使用行為に対する損害賠償請求に関する規定が新設されました。

商標の不正使用とは

商標の不正使用とは、商標権侵害行為の一類型で、登録商標を指定商品又は指定役務に使用する行為をいいます。この場合において、「登録商標」には、登録商標と社会通念上同一の場合も含まれ、商標法は、以下のような例を挙げています。

  • 書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標
  • 平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる商標
  • 外観において同視される図形からなる商標

商標の不正使用に対する損害賠償請求

商標権者や専用使用権者が商標権・専用使用権侵害に基づいて損害賠償請求をする場合において、侵害行為が商標の不正使用に該当するときは、その商標権の取得及び維持に通常要する費用に相当する額を、商標権者や専用使用権者が受けた損害の額とすることができることとされました。
出願時の費用や、いわゆる年金が対象となります。

TPPと地理的表示法

地理的表示法とは

地理的表示法とは、正式名称を「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」(平成26年法律第84号)といい、地域ごとに長年培われた特別の生産方法や気候・風土・土壌などの生産地の特性により、高い品質と評価を獲得するに至った産品について、地理的な表示を含む名称を知的財産として保護する制度をいいます。
登録された基準を満たす生産者だけが地理的表示を使用でき、また、「GIマーク」を付すことができる一方、不正な使用に対しては取り締まりが行われます。

地理的表示の登録例

具体例として、実際に登録されている地理的表示のうち、登録番号の1から10を例に挙げてみました。

1 あおもりカシス
2 但馬牛
3 神戸ビーフ
4 夕張メロン
5 八女伝統本玉露
6 江戸崎かぼちゃ
7 鹿児島の壺造り黒酢
8 くまもと県産い草
9 くまもと県産い草畳表
10 伊予生糸

法改正の概要

今回の法改正により、生産者が日本で地理的表示の登録を行うことにより、特段の手続きを経ることなく外国でも保護を受けられることとなりました。
保護を受けられる国は、日本と同等の制度のもとで地理的表示が保護され、日本と相互保護の約束をしている国で、一定の条件を満たすことが必要ですので、TPP加盟国すべてが直ちに対象になるわけではありません。
他方、条件を満たす限り、相手国はTPP加盟国に限られません。

地理的表示法の施行見込み

本改正は、TPP関連法案に位置付けられるものの、TPP発効前であっても、相互保護の協定が締結された国との間で適用されます。
そのため、今後TPPが発効するかどうかで施行が左右されることはありません。

今後の解説予定

改正地理的表示法については、TPP関連の他の知財改正法案と異なり、施行されることが決まっています。
そこで、別途、改正内容及び前提となる法制度の基本知識について詳細に解説することを予定しております。

TPP11の施行との関係(2018年12月30日追記)

本稿で取り上げたTPP12は、その後の米国の脱退により発効することはありませんでしたが、TPP12協定に署名した12か国のうちアメリカを除く11か国は新たにTPP11協定を締結し、その国内整備法が2018年12月30日に施行されました。その結果、知的財産法については、本稿で解説した国内整備法と実質的に同一内容の整備法が施行されています。

詳細な経緯については、こちらをご覧ください

本記事に関するお問い合わせはこちらから

(文責・飯島)