商標の審査・審判における判断の傾向は時代により変化しますので、その傾向を把握するためには審決や異議の決定を継続的にチェックする必要があります。商標審決アップデートでは、定期的に注目すべき商標審決をピックアップし、情報提供していきます。

今回は、歴史上の人物名に関する審決と、識別力の有無に関する審決を取り上げております。

不服2018-5959(半平太酒/歴史上の人物名)

審決分類

商標法第4条第1項第7号(公序良俗)

商標及び指定商品・役務

本願商標:半平太酒(標準文字)
指定商品:第33類「泡盛,合成清酒,焼酎,白酒,清酒,直し,みりん,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」

結論

原査定を取り消す。本願商標は、登録すべきものとする。

本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものではないから、本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。

審決等の要点

本願商標は、「半平太酒」の文字を標準文字で表してなるものであるところ、その構成中「半平太」の文字は、「武市瑞山」の見出しの下、幕末の志士、武市瑞山の通称を表すものとして、一般の辞書に掲載されているものであるが、「半平太」の見出しの下では、一般の辞書に掲載されていない。そして、武市瑞山の出生地である高知県には、武市瑞山を祀る神社である「瑞山神社」、同人の業績を伝える「瑞山記念館」、同人の旧宅及び墓である「武市半平太旧宅及び墓」及び「武市半平太(瑞山)像」と称する銅像があり、高知県においては、「武市半平太」「武市瑞山」又は「瑞山」の文字が施設等の名称に使用されていることは認められるものの、「半平太」の文字のみを冠した施設等は見受けられず、また、「半平太」の文字のみが、公益的な機関による地域振興や観光振興の施策に使用されている事実も見いだすことはできない。

さらに、武市瑞山が本願の指定商品と関連の深い人物であるとの事情も見いだすことができない。そうすると、本願商標は、商標の一部に「半平太」の文字を有するものの、請求人が本願商標を出願し、登録を受けることが、地域振興や観光振興のための施策等の名称に「武市半平太」「武市瑞山」又は「瑞山」の文字を使用することに支障を生じさせるとまではいえない。

そして、本願商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではなく、その構成自体がそのようなものではなくとも、それを本願の指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものともいえない。また、本願商標は、他の法律によって、その商標の使用等が禁止されているものではないし、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反するものでもない。さらに、本願商標の登録出願の経緯に社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当すると認めるに足る具体的事実も見いだせない。

コメント

商標審査便覧の「歴史上の人物名(周知・著名な故人の人物名)からなる商標登録出願の取扱いについて」において、本取扱いにおける「歴史上の人物」は周知・著名な実在した故人をいう旨記載されております。審決では、商標の構成中「半平太」の文字のみが使用されている事実がないと述べられていることから、「半平太」の文字はこの周知・著名性を有さず、商標法第4条第1項第7号には該当しないと判断されたものと思われます。氏名(フルネーム)で周知・著名といえるが、名前のみで周知・著名といえない歴史上の人物名に関して参考になる事案です。

不服2018-8343(敦盛/歴史上の人物名)

審決分類

商標法第4条第1項第7号(公序良俗)

商標及び指定商品・役務

本願商標:敦盛(標準文字)
指定商品:第31類「ハオルシア,ハオルシアの苗,ハオルシアの種子」

結論

原査定を取り消す。本願商標は、登録すべきものとする。

本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものではないから、本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。

審決等の要点

本願商標は、「敦盛」の文字を標準文字で表してなるものであるところ、当該文字は、歴史上の人物名である平敦盛を表すものとして、一般の辞書に掲載されているものである。

ところで、一般に歴史上の人物の生誕地やゆかりの地においては、地域振興や観光振興のために、その地の特産品や土産物に歴史上の人物の名称を商標として使用することが多く見受けられる。そこで、当審において職権をもって調査するも、本願の指定商品である第31類「ハオルシア,ハオルシアの苗,ハオルシアの種子」、すなわち、鑑賞用に栽培される多肉植物の一種であるハオルシア並びにその苗及び種子が、地域振興や観光振興における特産品や土産物等として販売されている実情は発見できないことから、本願の指定商品は土産物等の商品と密接な関係性を有するものとはいえず、また、請求人が本願商標を出願し、登録を受けることが、地域振興や観光振興のためのイベントや史跡での紹介等に「敦盛」の名称を利用することに支障を生じさせるとまではいえない。

そして、本願商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではなく、その構成自体がそのようなものではなくとも、それを本願の指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものともいえない。また、本願商標は、他の法律によって、その商標の使用等が禁止されているものではないし、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反するものでもない。さらに、本願商標の登録出願の経緯に社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当すると認めるに足る具体的事実も見いだせない。

コメント

本件では、「敦盛」の文字は平敦盛を表すものとして、一般の辞書に掲載されており、周知・著名性の点を否定されておりませんが、本願指定商品である「ハオルシア,ハオルシアの苗,ハオルシアの種子」が地域振興や観光振興における特産品や土産物等として販売されている実情が発見できず、土産物等の商品と密接な関係性を有するものとはいえないことを理由の一つとして、商標法第4条第1項第7号には該当しないと判断されております。

不服2017-8442(カリッ/商品の品質等、役務の質等)

審決分類

商標法第3条第1項第3号(商品の産地、品質等又は役務の質等)

商標及び指定商品・役務

本願商標:カリッ(標準文字)
指定商品:第30類「菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」

結論

本件審判の請求は、成り立たない。

本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、登録することができない。

審決等の要点

本願商標は、「カリッ」の文字を標準文字で表してなるものであるところ、当該文字は、本願の指定商品との関係においては、「1)比較的かたい物を歯で噛んで、そのかたい物が折れたり砕けたりした時に出る音。2)物が乾燥していたり揚がっていたりする様子。好ましい感じを伴って用いられ、その物を口に入れた場合には、1)の音が出る。」の意味を有する擬音語である「かりっ」を片仮名表記したものとして看取、理解されるものといえる。

そして、「カリッ」の文字は、本願の指定商品を含む食品を取り扱う業界において、商品の品質(上記「かりっ」の擬音語の意味に相応する食感)を表す擬音語の一つとして、一般に広く用いられており、例えば、「菓子」を取り扱う業界においては、商品の包装上に、当該擬音語の意味に即した状態を示す絵図(写真)とともに用いることも少なからず行われている。

そうすると、本願商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、商品の品質(食感)を表したものと認識するにとどまり、商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として認識することはないとみるのが相当である。してみれば、本願商標は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。

コメント

本願商標は、商品の品質を表す擬音語として一般に広く用いられていることを理由に識別力を有しないと判断されております。過去の審決例(不服2004-8524)でも、「ピリッ」の文字を標準文字で表してなる商標(第30類「菓子及びパン」)が、「辛みのある味」を表現する言葉として多数使用されており、識別力を有しないと判断されております。

不服2018-2286(ネットde申請/自他役務識別力)

審決分類

商標法第3条第1項第6号(自他役務識別力)
商標法第4条第1項第16号(品質等の誤認)

商標及び指定商品・役務

本願商標:ネットde申請
指定役務:第42類「インターネットを利用した申請に関する電子計算機用プログラムの提供,インターネットを利用した申請に関するクラウドコンピューティング,インターネットを利用した申請に関するオンラインによるアプリケーションソフトウェアの提供(SaaS),インターネットを利用した申請に関するサーバーのホスティング,インターネットを利用した申請に関するコンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト),インターネットを利用した申請に関するウェブサーバーの貸与,インターネットを利用した申請に関する電子データの保存用記憶領域の貸与,インターネットを利用した申請に関するコンピュータソフトウエアの貸与,インターネットを利用した申請に関する電子計算機の貸与,インターネットを利用した申請に関する電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,インターネットを利用した申請のための電子計算機の性能・操作方法等に関する紹介及び説明」

結論

原査定を取り消す。本願商標は、登録すべきものとする。

本願商標が、商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。

審決等の要点

本願商標は、「ネットde申請」の文字を横書きで一連に表した構成からなるところ、その構成中の「ネット」の文字は、「インターネット」(「コンサイスカタカナ語辞典第4版」株式会社三省堂)の意味を、「申請」の文字は、「国家や公共の機関に向かって一定の行為を求めること」(「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)の意味を有する語である。そして、本願商標から、原審説示のように「インターネットで申請」の意味合いを理解させる場合があるとしても、いまだ漠然としており、また、助詞の「で」を「de」と表示することは、一般に使用され得る表示方法とはいえない。

また、当審において職権をもって調査するも、本願の指定役務を取り扱う業界において、「ネットde申請」の文字が、取引者、需要者に、役務の質等を表示するものとして認識されるなど、自他役務の識別標識としての機能を有しないというべき事情は発見されず、その他、当該文字が取引上、一般に使用されている事実及び本願商標は何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標であるというべき事情も見いだせない。

してみれば、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標とはいえず、その指定役務との関係において、十分に自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものとみるのが相当である。また、本願商標から上記意味合いを理解させる場合があるとしても、本願の指定役務との関係において、役務の質を具体的かつ直接的に表すものとはいえないことからすれば、本願商標をその指定役務に使用しても、役務の質の誤認を生ずるおそれもない。

コメント

本件の他にも、同じ出願人が「ネットde受付」、「ネットde精算」、「ネットdeスケジュール」、「ネットde台帳」を出願しており、審決において登録を認めると判断されております。過去の審決では、以下のとおり、同様の事案に関して判断が分かれております。

・不服2006-12899:商標「ネットde労保」が、商品の品質を容易に看取し得るといえず、識別力を有すると判断された審決例
・不服2009-21596:商標「ケータイdePCメール」が、「携帯電話でパソコンのメール」の意味合いを看取させ、識別力を有しないと判断された審決例

不服2017-650090(WE/簡単でありふれたもの)

審決分類

商標法第3条第1項第5号(簡単でありふれたもの)

商標及び指定商品・役務

本願商標:
指定商品・役務:第9類「ナビゲーション用・誘導用・追跡用・標的化用及び地図製作用装置、すなわち全地球測位システム(GPS)用機器」等
第12類「航空機,鉄道用車両,船舶,航空機」等
第37類「建築工事・建設及び取壊し,建設用及び取壊し用の工具・建設機械及び設備の貸与」等
第38類「電気通信,電気通信,ニュースの収集及び提供(報道をする者に対するニュースの供給)」等
第39類「輸送,物品のこん包及び保管,旅行の手配」等

結論

本件審判の請求は、成り立たない。

本願商標は、商標法第3条第1項第5号に該当し、登録することができない。

審決等の要点

本願商標は、「WE」の欧文字を、普通に用いられる書体により表してなるところ、一般に、欧文字の2文字は、商品及び役務の提供に際し、商品の品番、型番、種別、形式、規格等を表した記号又は符号(以下「商品等の記号又は符号」という。)の一類型として、取引上普通に採択・使用されているのが実情である。

そして、原審で示した使用例に加え、「WE」の欧文字の2文字が、本願商標の指定商品及び指定役務を取り扱う業界並びにそれ以外の業界においても、商品等に一般的に使用されている事実が、インターネット情報からもうかがえる。それらの「WE」の文字の使用例よりすれば、「WE」の文字は、商品等の記号又は符号として普通に使用されているものである。

そうすると、本願商標は、これをその指定商品及び指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、商品及び役務の提供において用いられる商品等の記号又は符号の一類型を表示したものと理解するにとどまり、自他商品役務の識別標識とは認識し得ないものというべきであるから、これは、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標というのが相当である。

コメント

請求人は、「WE」は「我々は,私たち」を意味するものとして極めてよく親しまれている英単語として認識されるため、商品等の記号又は符号を表したものとして認識されるとは言い難い旨主張しましたが、上記のとおり商品等の記号又は符号として使用されている事実があるため、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標というのが相当である、と判断されております。なお、登録第5375989号「We」(第30類「茶,コーヒー及びココア,菓子及びパン」等)は標準文字商標として登録を受けております。当該商標に関しては、「e」を小文字にしたことで、「我々は,私たち」を意味する英単語として認識されると判断された可能性があります。

不服2018-8319(KARATSU 唐津/商品の産地、品質等)

審決分類

商標法第3条第1項第3号(商品の産地、品質等)

商標及び指定商品・役務

本願商標:
指定商品:第3類「化粧品,せっけん類」

結論

本件審判の請求は、成り立たない。

本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、登録することができない。

審決等の要点

本願商標は,「KARATSU」の欧文字及び「唐津」の漢字を二段に書してなるところ,その構成中「唐津」の文字は「佐賀県北西部,唐津湾に臨む市。」の意味を有する語(「広辞苑第六版」 株式会社岩波書店)であり,「KARATSU」の文字はその欧文字表示と認められるものである。 そして,インターネット情報によれば,「唐津」を含む日本各地の地名が,本願商標の指定商品を取り扱う業界において,商品の産地・販売地を表す語あるいは商品の原材料の産地を表す語として,普通に使用されている実情を確認することができる。

インターネットの記事によれば,商品に地名を表示した場合には,一般的に商品の産地等を認識させるものであるといえるところ,本願商標は「佐賀県北西部,唐津湾に臨む市。」の地名を理解,認識させるものであるから,商品の産地等を意味する文字として理解されるものである。そうすると,本願商標は,これをその指定商品に使用したときは,その商品に接する需要者,取引者は,本願商標が「唐津で生産された商品」であるという商品の産地あるいは「唐津で生産されたものを原材料とする商品」であるという商品の品質を表したものとして理解するにとどまり,自他商品の識別標識としては認識し得ないものといわざるを得ない。

してみれば,本願商標は,その商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるというのが相当である。

コメント

日本の地名に関しては、「白山」の文字からなる商標(第29類「肉製品)が、「南部に白山国立公園の一部を抱える石川県南東部にある白山市」を示す語として辞書類に掲載されていることから、商品の産地又は販売地を普通に用いられる方法で表示するにすぎないと判断され、拒絶された審決例があります(不服2016-8719)。本件でも同様に「唐津」は辞書に掲載されている語であり、これらの審決例から、辞書に掲載されている地名の登録は難しいと考えられます。

不服2018-2333(Portland Wool ポートランドウール/商品の産地、品質等)

審決分類

商標法第3条第1項第3号(商品の産地、品質等)
商標法第4条第1項第16号(品質等の誤認)

商標及び指定商品・役務

本願商標:
指定商品:第18類「かばん類,袋物」
第23類「糸」
第24類「織物,メリヤス生地,フェルト及び不織布,布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,ビリヤードクロス」
第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服」

結論

本件審判の請求は、成り立たない。

本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するから、これを登録することはできない。

審決等の要点

本願商標は、「Portland Wool」の欧文字と「ポートランドウール」の片仮名を二段に横書きしてなるところ、その構成中の「Wool」及び「ウール」の文字部分は、「羊毛。毛糸。毛織物。」を意味する語として親しまれているものである(株式会社岩波書店   広辞苑第7版)。そして、本願商標の構成中「Portland」及び「ポートランド」の語は、辞書、新聞記事及びインターネット情報によれば、(ア)我が国の一般的な国語辞書における「ポートランド(Portland)」の項には、米国オレゴン州の都市名(以下、米国オレゴン州のポートランドを「米ポートランド」という。)のみの記載があり、米ポートランドの港は対日輸出の中心港であること、(イ)米ポートランドと札幌市とは1959年(昭和34年)に姉妹都市になっており、長年にわたり交流を続け、米ポートランドは札幌市におけるイベントに招待されていること、(ウ)東京世田谷区は米ポートランドとの都市文化交流を目指していること、(エ)ポートランド観光協会(米ポートランドの観光協会)は、東京に日本事務所開設したこと、(オ)大阪、横浜及び東京において、米ポートランドに関する催しが開催されていることからすると、本願商標の構成中「Portland」及び「ポートランド」の文字部分は、これに接する一般需要者をして、米ポートランドの地名を表したものと理解、認識するというのが相当である。

そして、本願商標の指定商品は、一般需要者を対象とする商品といえるものである。そうすると、本願商標の構成中「Portland」及び「ポートランド」の文字部分は、米ポートランドの地名を表したものと理解、認識させるものであって、本願商標を表示した商品が、米ポートランドにおいて生産され又は販売されているであろうと認識されることが決して少なくないと判断するのが相当であり、そして、本願商標の構成中「Wool」及び「ウール」の文字部分は、「羊毛、毛糸、毛織物」を意味し、本願商標の指定商品との関係では、商品の品質又は普通名称を表したものと認識されるものである。

以上よりすれば、本願商標は、全体として「米ポートランドで製造又は販売されているウール製品」の意味合いを容易に認識させ、商品の品質等を表示するにすぎないし、その態様上顕著な特徴を有するものではないから、商品の品質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標といわなければならず、上記認定以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるものというのが相当である。

コメント

請求人は、「Portland」及び「ポートランド」の語が地名以外のものを指称する語として知られており、また、世界の各地に同じ地名が存在しているため、米国のポートランドという特定の地名と指すものとして認識されない旨主張しましたが、辞書に米国の都市名のみが記載されていることもあって、米ポートランドの地名を表したものと認識するというのが相当であると判断されております。なお、外国の地名に関しては、「RICHMOND」の文字からなる商標が、「アメリカ合衆国バージニア州の州都」を意味する語として認識されるため、識別力を有しないと判断された審決例があります(不服2009-650130)。

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(文責・前田)