令和7(2025)年5月、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(GX推進法)及び資源の有効な利用の促進に関する法律(資源法)の一部を改正する法律が成立しました。施行日は、一部を除き、2026年4月1日です。
本稿では、資源法の改正のポイントを解説します。
ポイント
骨子
- 現行の資源法では、①事業者による製品の回収・リサイクルの実施などリサイクル対策とともに、②製品の省資源化・長寿命化等による廃棄物の発生抑制(リデュース)対策や、③回収した製品からの部品等の再使用(リユース)対策(3Rの対策)を講じている。
- 今般、①再生資源の利用義務化、②環境配慮設計の促進、③GXに必要な原材料等の再資源化促進及び④CE(サーキュラーエコノミー)コマースの促進の目的のために必要な改正が行われた。
- ①再生資源の利用義務化ついては、脱炭素化のために利用することが特に必要な再生資源として政令で定めるものを「脱炭素化再生資源」と、これを原材料として利用することが資源の有効利用及び製品の脱炭素化を図る上で特に重要であるものとして政令で定める製品を「指定脱炭素化再生資源利用促進製品」とそれぞれ定義し、指定脱炭素化再生資源利用促進製品の製造等を行う事業者(指定脱炭素化再生資源利用促進事業者)が取り組むべき事項についての判断基準を省令で定めることとされた。また、指定脱炭素化再生資源利用促進事業者のうち、生産量や販売量が政令で定める要件に該当する者は、脱炭素化再生資源の利用促進のための計画を策定して主務大臣に提出をするほか、計画の実施状況を毎年報告しなければならない。
- ②環境配慮設計の促進については、主務大臣が対象製品についての指針を定め、対象指定製品の製造事業者は、製品が指針に適合していることにつき認定を受けることができる。認定を受けた製品については、国等のクリーン購入において配慮をされるほか、認定事業者は、産業廃棄物処理事業振興財団の保証による助成を受けることができるというインセンティブがある。
- ③GXに必要な原材料等の再資源化促進については、指定再資源化事業者であって、使用済指定再資源化製品の自主回収及び再資源化のための製品の自主回収やリサイクルを行う事業者が、自主回収・再資源化計画につき主務大臣を受けることにより、グリーン調達における配慮や廃棄物処理法の特例といったメリットを享受することができる。
- ④CE(サーキュラーエコノミー)コマースの促進については、指定省資源化事業者の範囲が指定省資源化製品等の製造、加工、修理のほかに、販売及び賃貸を行う事業者にも拡大され、今後取り組むべき措置が定められることになる。
解説
資源有効利用促進法の概要
資源法は、2000年に再生資源利用促進法(1991年制定)の全面改訂により成立しました。法目的は、資源の有効な利用の確保と使用済み物品・副産品の排出抑制、再生資源・再生部品の利用促進を図ることであり(資源法1条参照)、いわゆる3R(リユース・リデュース・リサイクル)の促進のための対策を規定しています。
資源法では、①事業者による製品の回収・リサイクルの実施などリサイクル対策とともに、②製品の省資源化・長寿命化等による廃棄物の発生抑制(リデュース)対策や、③回収した製品からの部品等の再使用(リユース)対策を講じています。
また、産業廃棄物対策としても、副産物の発生抑制(リデュース)とリサイクルを促進することにより、循環型経済システムの構築を目指すとされ、10業種・69品目が法律の対象となります。これは、一般廃棄物及び産業廃棄物の約5割をカバーするとされます。
資源法における措置は製品対策と副産物対策に大別され、更に、製品対策は製品のライフサイクルの段階に対応した施策が設けられています。
以下、現行の資源法の概要を紹介します。
製品対策
製品対策としては、以下の図のとおり、①製造・流通段階、②分別回収段階、及び、③再使用・再生利用の各段階における措置が講じられています。

出典:経済産業省ウェブサイト
製造・流通段階
製造・流通段階では、廃棄物の排出抑制のため、製品の設計に関する事項(いわゆる環境配慮設計)が定められており、以下の3つがあります。
1つ目は、指定省資源化製品(パソコン、自動車、家電など19品目)を取り扱う業種について、使用済物品等の発生の抑制に関する判断の基準となるべき事項を定めるものです(資源法18条)。同基準は、省令において、軽量化、小型化、長寿命化などリデュースに資する設計を求める品目ごとに具体的な製品設計が定められています。
2つ目は、指定再利用促進製品(パソコン、自動車、家電、複写機、システムキッチンなど50品目)を取り扱う業種について、指定再利用促進製品に係る再生資源又は再生部品の利用を促進するための判断の基準となるべき事項を定めるものです(資源法21条)。こちらも、省令により、原材料の工夫、分別のための工夫などリユース、リサイクルに資する設計を求める品目ごとに具体的な製品設計が定められています。
3つ目は、特定再利用業種(紙製造業、ガラス容器製造業、建設業など5業種)につき、再生資源または再生部品の利用に関して判断の基準となるべき事項を定めるものです(資源法15条)。対象となる業種は、再生部品や再生資源の利用目標などを定めることが求められます。
分別回収段階
分別回収段階では、リサイクルの促進のため、以下の2つの施策が設けられています。
まず、指定再資源化製品(パソコン、小型二次電池)の再生資源又は再生部品の利用を促進するため、その製造、加工、修理又は販売の事業を行う者(指定再資源化事業者)の判断の基準となるべき事項を定めることとされています(資源法26条)。判断基準を定める省令では、自主回収の実施方法、再資源化の目標の設定などを行うことが求められています。
また、指定表示商品(スチール・アルミ缶など7品目)につき、再生資源の利用促進のため、指定表示製品毎に表示方法を定めることとされています(24条)。例えば、以下のような表示は資源法に基づくものです。

副産物対策
副産物対策は、以下の2つです。
1つ目は、特定省資源化業種(パルプ・紙製造等5業種)につき、原材料使用の合理化による副産物の発生抑制や副産物の再生資源としての利用促進のための判断の基準となるべき事項を定めるものです(資源10条)。省令では、排出抑制の目標設定、設備の整備などが定められています。
2つ目は、指定副産物(電気業の石炭灰、建設業の土砂・コンクリート塊・木材等)につき、再生資源の利用の促進に関する判断の基準となるべき事項を定めるものです(資源法34条)。省令では、計画の設定、指定副産物の分別などが定められています。
改正の内容
改正の背景
2010年代に問題となった海洋のプラスチックごみ問題等を契機として、EU諸国を初めとする先進国においては、循環経済/サーキュラーエコノミー(持続可能(Sustainable)な形で資源を利用することで環境負荷を低減化しつつ価値を生み出す経済)の実現を目指す取組が進むようになりました。
EUでは、2015年12月に発行された「EU新循環経済政策パッケージ」において、循環経済を実現することにより新たな産業、雇用の創出を目指すとされ、以降、循環経済を実現するための行動計画や指針の策定等様々な施策が講じられています。
我が国でも、経済産業省が2023年3月に「成長志向型の資源自律経済戦略」を策定し、自国の資源自律性(経済安全保障を含む)、廃棄物やCO2排出等の環境問題といった課題解決の目的に加え、資源自律経済への対応の遅れは国としての成長機会を削ぎ、経済的損失に繋がるという観点から、サーキュラーエコノミーへの転換に向けた取組を進めています。
2025年2月には、経済産業省より、「成長志向型資源自立経済戦略の実現に向けた制度見直しに関する取りまとめ」が公表され、制度の具体的な方向性についての考え方が示されました。
上記取りまとめで示されたのは以下の4点であり(20頁)、これらを法制度に落とし込むため、今般、資源法が改正されるに至ったものです。
① 再生資源の利用義務化
② 環境配慮設計の促進
③ GXに必要な原材料等の再資源化促進
④ CE(サーキュラーエコノミー)コマースの促進
以下で改正の概要を説明します。
目的規定の改正
前述のとおり、資源法の目的は、資源の有効な利用の確保と使用済み物品・副産品の排出抑制、再生資源・再生部品の利用促進を図ることでしたが、今回の改正では目的規定が改正され、GX推進法とあいまって、脱炭素化再生資源の有効利用を促進等により脱炭素化を図るための措置を講ずることが法目的として追記されました。
改正後の目的規定は以下のとおりです(下線部が改正箇所)。
(目的)
第1条
この法律は、主要な資源の大部分を輸入に依存している我が国において、近年の国民経済の発展に伴い、資源が大量に使用されていることにより、使用済物品等及び副産物が大量に使用されていることにより、使用済物品等及び副産物が大量に発生し、その相当部分が廃棄されており、かつ、再生資源及び再生部品の相当部分が利用されずに廃棄されている状況に鑑み、資源の有効な利用の確保を図るとともに、廃棄物の発生の抑制及び環境の保全に資するため、使用済物品等及び副産物の発生の抑制並びに再生資源及び再生部品の利用の促進に関する所要の措置を講じ、併せて、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(令和五年法律第三十二号)とあいまって脱炭素化再生資源の有効な利用の促進等により脱炭素化を図るための措置を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
再生資源の利用義務化
サーキュラーエコノミーの実現のためには、再生材(リサイクル素材)の利用率を増やしていく必要があり、そのためには、再生材の供給を増やすとともに、需要も創出していくことが必要です。
再生材の利用義務化は、すでに欧州では複数の規則で導入がされており、再生材利用の需要を生み出し、循環経済を実現するための施策の1つに位置付けられます。
この点、前述のとおり、現行の資源法では、紙製造業やガラス容器製造業等の特定再利用業種は、再生部品や再生資源または再生部品の利用目標などを定めることが求められていますが、対象となるのは5業種に限られている上、再生材等の利用をモニタリングする仕組みがなく、再生材利用の利用を改善することが困難でした。
そこで、改正法では、脱炭素化のために利用することが特に必要な再生資源として政令で定めるものを「脱炭素化再生資源」と、これを原材料として利用することが資源の有効利用及び製品の脱炭素化を図る上で特に重要であるものとして政令で定める製品を「指定脱炭素化再生資源利用促進製品」とそれぞれ定義し(改正資源法2条11項)、指定脱炭素化再生資源利用促進製品の製造等を行う事業者(指定脱炭素化再生資源利用促進事業者)が取り組むべき事項についての判断基準を省令で定めることとされました(改正資源法21条1項)。対象となる事業者の取組が不十分な場合等には指導や助言の対象となります(改正資源法23条)。
また、指定脱炭素化再生資源利用促進事業者のうち、生産量や販売量が政令で定める要件に該当する者は、脱炭素化再生資源の利用促進のための計画を策定して主務大臣に提出をするほか、計画の実施状況を毎年報告しなければなりません(改正資源法23条1項、24条)。取組が不十分な場合には、勧告及び命令の対象となります(改正資源法25条)。
法律の対象となる「脱炭素化再生資源」や「指定脱炭素化再生資源利用促進製品」は今後政省令で指定されることになりますが、これまでの議論の状況から、脱炭素化再生資源にはプラスチックが、指定脱炭素化再生資源利用促進製品には自動車、家電製品、容器包装(食品(飲料PETボトル除く)・医薬品を除く)が指定されることになると見込まれます(第12回産業構造審議会 イノベーション・環境分科会 資源循環経済小委員会 事務局資料参照)。
環境配慮設計の促進
3Rの実現のためには、製品の設計による配慮が重要です。この点、現行の資源法においても製品の環境配慮設計について製品毎に判断基準が定められていますが、より優れた設計が評価され、定常的に全体のレベルを底上げする仕組みにはなっていませんでした。
そこで、改正法では、特に優れた環境配慮設定の認定制度を創設し、認定製品についてインセンティブが受けられる仕組みを作りました。
具体的には、主務大臣は、指定省資源化製品、指定脱炭素化再生資源利用促進及び指定再利用促進製品(以下、これらを併せて「対象指定製品」といいます。)の製造事業者の製品設計に関する指針を策定します。この指針では、3RやCO2排出量の削減等のために取り組むべき事項が定められます(改正資源法29条)。
対象指定製品の製造事業者は、製品が上記指針に適合していることにつき認定を受けることができます(改正資源法30条)。認定を受けた製品については、国等のクリーン購入において配慮をされるほか(改正資源法32条)、認定事業者は、産業廃棄物処理事業振興財団の保証による助成を受けることができます(改正資源法50条参照)。
なお、同様の環境配慮設計の認定制度はプラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律にもありますが、その対象は、プラスチック使用製品の全体に占めるプラスチックの割合が、原則として、重量比又は体積比で過半を占めるものとなっています(プラスチック使用製品設計指針参照)。本法の認定対象は、これに限らずより広い製品が含まれる見込みです。
GXに必要な原材料等の再資源化促進
資源循環を強化し、循環経済を実現するためには、リサイクルの対象となる資源を含む製品の回収率及びリサイクル率を上げていくことも重要です。
改正法では、指定再資源化事業者であって、使用済指定再資源化製品の自主回収及び再資源化のための製品の自主回収やリサイクルを行う事業者は、自主回収・再資源化計画につき主務大臣の認定を受けることができます(改正資源法54条)。
元々、廃棄物を収集運搬または処分(リサイクルを含む)を行うには廃棄物処理法上の許可が必要ですが、上記の計画の認定を受けた事業者は、かかる廃棄物処理法上の許可を得ることなく、対象となる製品の収集運搬や処分を行うことができます(改正資源法57条)。
指定再資源化製品は今後政令改正により新たな製品指定がされることが予定されていますが、これまでの議論の状況から、電源装置、携帯電話用装置及び加熱式たばこデバイスが追加で指定されることになると見込まれます(前記事務局資料参照)。これらの製品の製造販売等を行う事業者は、上記の認定の対象となる一方、新たに判断基準省令が定める基準に沿った措置を採ることが求められる点にも注意が必要です。
CE(サーキュラーエコノミー)コマースの促進
循環経済の実現のためには、製品の設計段階や回収・リサイクルの段階のみならず、消費の段階において、資源循環に資するビジネス(シェアリング、サブスクリプション、リユース等)の健全な発展も重要です。
現行の資源法ではこの消費段階についての措置は講じられていなかったところ、改正法では、こうしたビジネス(CEコマース)の類型を新たに位置づけ、当該事業者に対し、資源の有効利用等の観点から満たすべき基準を設定します。
改正法では、指定省資源化事業者の判断の基準となるべき事項に関して、その対象である指定省資源化事業者の範囲につき、指定省資源化製品等の製造、加工、修理のほかに、販売及び賃貸を行う事業を行う者にも拡大されました(改正資源法18条1項)。
具体的にどのような事業者が新たに指定されるかや、具体的な判断基準は今後政令や主務省令で定められることになります。
コメント
資源法の改正では、循環経済を実現するための更なる資源循環の促進という観点から4つの改正が行われました。特に、一部の製品・事業者につき、再生材の利用が促され、計画や実績の報告義務が課されることや、資源循環を促進とする製品の販売やサービスにつき基準が設けられることは事業者にとっても重要といえるでしょう。
本法で事業者が従うべき基準や対象となる製品、事業者等は2026年4月の改正法施行までに政省令により定められるため、引き続き注視が必要です。
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(文責・町野)






