商標の審査・審判における判断の傾向は時代により変化しますので、その傾向を把握するためには審決や異議の決定を継続的にチェックする必要があります。商標審決アップデートでは、定期的に注目すべき商標審決をピックアップし、情報提供していきます。
今回ピックアップした審決・異議の決定は、結合商標の類否に関する事案、称呼同一商標の類否に関する事案、周知著名な商標「LINE」に関する事案等です。
不服2017-9423(食彩厨房 いちげん/結合商標の類否)
審決分類
商標法第4条第1項第11号(同一又は類似)
商標
本件商標:
引用商標:一玄、一幻
結論
原査定を取り消す。本願商標は、登録すべきものとする。
本願商標の構成中の「いちげん」の文字部分を分離、抽出し、「イチゲン」の称呼をも生ずるとし、その上で、本願商標と引用商標とが称呼上類似するものとして、本願商標を商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は、妥当ではなく、取消しを免れない。
審決等の要点
本願商標は、上記構成よりなるところ、前半の「食彩厨房」の文字と後半の「いちげん」の文字とは、同書、同大で外観上まとまりよく一体に構成され、観念上も、特に、軽重の差を見いだすことはできないものである。
また、本願商標から生ずると認められる「ショクサイチュウボウイチゲン」の称呼も格別冗長というべきものでなく、無理なく一連に称呼できるものであり、他に本願商標の構成中の「いちげん」の文字部分のみが独立して認識されるとみるべき特段の事情は見いだせない。
そうすると、本願商標の構成中の「いちげん」の文字部分を分離、抽出し、「イチゲン」の称呼をも生ずるとし、その上で、本願商標と引用商標とが称呼上類似するものとして、本願商標を商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は、妥当ではなく、取消しを免れない。
コメント
審査においては、本願商標の構成中「いちげん」の文字部分が要部となり、引用商標「一玄」及び「一幻」に類似すると判断されましたが、審決では、本願商標は外観上まとまりよく一体に構成され、観念上軽重の差が見いだせず、「ショクサイチュウボウイチゲン」一連の称呼のみが生じるため、「イチゲン」の称呼が生じる引用商標とは非類似であると判断されております。なお、引用商標の「一玄」と「一幻」は指定役務において抵触しておりますが、異なる権利者間で併存登録されております。
異議2017-900173(就活LINE/周知著名商標と出所混同)
審決分類
商標法第4条第1項第11号(同一又は類似)
商標法第4条第1項第15号(商品又は役務の出所の混同)
商標
本件商標:就活LINE(標準文字)
引用商標: 、 、LINE
結論
登録第5926049号商標の商標登録を取り消す。
本件商標の登録は、その指定役務中「広告業,企業の人事・労務管理・求人活動・採用活動に関する助言及び指導,経営の診断又は経営に関する助言」については、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであり、同じく「インターネット又は携帯電話を利用した職業のあっせん又は人材の紹介,職業のあっせん,派遣社員の募集,求人情報の提供(人材派遣によるものも含む),求人情報の提供に関する指導及び助言,インターネットを利用した職業のあっせん及び求人情報の提供,コンピュータデータベースへの情報編集」については、同項第15号に違反してされたものである。すなわち、本件商標の登録は、その全指定役務について、商標法第4条第1項第11号又は同項第15号に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
審決等の要点
引用商標は、いずれも申立人の業務に係る役務(ソーシャル・ネットワーキング・サービスの提供)を表示するものとして、本件商標の登録出願日前から需要者の間に広く認識されている商標であって、その状況は本件商標の登録査定日はもとより、現在まで継続しているものと判断するのが相当である。
本件商標は、「就活LINE」の文字からなり、その構成文字が漢字と欧文字であることから、容易に「就活」と「LINE」の2語を結合してなるものと認識し得るものである。 そして、該「LINE」の文字は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている引用商標の構成文字「LINE」と同一の文字であることから、本件商標に接する取引者、需要者が該文字に着目することが少なくないもの、すなわち、取引者、需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと判断するのが相当である。 そうすると、本件商標は、その構成中「LINE」の文字部分を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することが許されるものであって、該文字に相応し「ライン」の称呼、「(申立人のブランドとしての)LINE」の観念を生じるものといわなければならない。
引用商標は、いずれも「LINE」の文字からなるものであるから、該文字に相応し「ライン」の称呼を生じ、需要者の間に広く認識されている商標であるから、「(申立人のブランドとしての)LINE」の観念を生じるものである。
そうすると、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念を共通にする類似の商標というべきものであり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
申立人は、申立人役務の提供を行うほか、申立人役務を介してアルバイト求人情報サービス、ニュース配信サービス、電子マネーサービスなどの業務を行っている。そして、本件商標の指定役務中「インターネット又は携帯電話を利用した職業のあっせん又は人材の紹介,職業のあっせん,派遣社員の募集,求人情報の提供(人材派遣によるものも含む),求人情報の提供に関する指導及び助言,インターネットを利用した職業のあっせん及び求人情報の提供」と、申立人が行っている業務「アルバイト求人情報サービス」は、いずれも仕事の紹介に係るものであるから、両者の関連性の程度は高いものといえ、また、両者は需要者を共通にすることが少なくないものといえる。 また、申立人の提供する役務は、いずれもコンピュータにより提供される役務であり、本件商標の指定役務中「コンピュータデータベースへの情報編集」と、申立人が行っている業務とは、共にコンピュータやインターネットの利用者であり、需要者を共通にするものであって、関連性を有するものといえる。
上記の事情を総合してみると、本件商標の登録出願の時及び査定時において、商標権者が本件商標をその指定役務中「インターネット又は携帯電話を利用した職業のあっせん又は人材の紹介,職業のあっせん,派遣社員の募集,求人情報の提供(人材派遣によるものも含む),求人情報の提供に関する指導及び助言,インターネットを利用した職業のあっせん及び求人情報の提供,コンピュータデータベースへの情報編集」に使用した場合、これに接する需要者が引用商標を想起、連想し、当該役務を請求人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるものと判断するのが相当であり、本件商標は、上記指定役務について商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
コメント
本件商標の指定役務中、引用商標が商標登録を受けている指定役務と抵触する役務に関しては、商標法第4条第1項第11号に違反し、それ以外の役務に関しては、商標法第4条第1項第15号に違反すると判断され、商標登録全体が取り消しとなっております。
不服2017-15731(図+SHION/称呼同一商標の類否)
審決分類
商標法第4条第1項第11号(同一又は類似)
商標
本件商標: ※一部拡大:
引用商標:
結論
原査定を取り消す。本願商標は、登録すべきものとする。
両商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきであり、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は、妥当ではなく、取消しを免れない。
審決等の要点
本願商標は、別掲のとおり、ぶどうの房を有するつるが添え木に巻き付いたと思しき図形からなり、その構成中のつるに沿うように小さく「SHION」の文字を配してなるところ、該文字は、辞書等に載録された既成の語ではなく、かつ、特定の意味合いを有する語として一般に知られたものとはいえないものであるから、その構成文字に相応して「シオン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
引用商標は、「紫苑」の文字及び「シオン」の文字を上下二段に書してなるところ、その構成中の「紫苑」の文字は、「キク科の多年草」(広辞苑第六版)の意味を有する語であり、また、下段に書された「シオン」の文字は、上段の「紫苑」の文字部分の読みを特定したものとみるのが自然であるから、その構成文字に相応して「シオン」の称呼を生じ、「(キク科の多年草の)シオン」の観念を生じるものである。
本願商標と引用商標の構成は、全体の構成において明らかな差異を有するものであるから、両商標は、外観上、明確に区別できるものである。また、本願商標と引用商標は、「シオン」の称呼を同一にするものである。さらに、本願商標は、特定の観念を有しないものであり、引用商標からは「(キク科の多年草の)シオン」の観念を生じることから、両商標は、観念上、相紛れるおそれはない。
上記のとおり、本願商標と引用商標とは、「シオン」の称呼を同一にするとしても、外観において明確に区別でき、観念においても相紛れるおそれはないものであって、ほかに、本願商標と引用商標との間で商品の出所の混同を生じるおそれがあるとみるべき特段の事情も見いだし得ないことから、これらを総合勘案すれば、両商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
コメント
近年、称呼同一であっても、外観及び観念が異なるため非類似であると判断される事例が多くみられます。本件でも、本願商標は、その構成中ぶどうの房を有するつるが添え木に巻き付いたと思しき図形が大きく表され、「SHION」の文字が極めて小さく表されているため、外観上の差異が非類似の判断に大きな影響を与えていると思われます。
不服2017-12405(ベジピザ/商品の品質等)
審決分類
商標法第3条第1項第3号(商品の産地、品質等又は役務の質等)
商標
本願商標:ベジピザ(標準文字)
結論
原査定を取り消す。本願商標は登録すべきものとする。
本願商標は、これをその指定商品に使用しても、取引者、需要者をして、商品の品質や用途を表示するものと認識されることはなく、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものというべきである。したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
審決等の要点
本願商標は、「ベジピザ」の文字を標準文字で表してなるものである。そして、原審における拒絶理由通知書で示した参考情報の内容及び当審における職権による調査によれば、生地の上に野菜をのせたピザや、野菜を生地に仕立てたようなピザを「ベジピザ」と称することがあることはうかがえるものの、「ベジピザ」の文字が、特定の種類のピザを表示するものとして認識されるほどに広く一般に使用されているとまではいい難い。
また、本願の指定商品「ピザソース」を取り扱う業界において、特定の種類のピザ専用のソースであるなど、ピザの種類に応じた商品が一般に製造、販売されている事実も見いだせない。
そうすると、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、取引者、需要者をして、商品の品質や用途を表示するものと認識されることはなく、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものというべきである。
コメント
本願商標の出願当時の指定商品には、「ピザ」や「ピザ生地」が含まれておりましたが、指定商品を「ピザソース」に限定する補正を行っております。審決において、「ピザソースを取り扱う業界において、特定の種類のピザ専用のソースであるなど、ピザの種類に応じた商品が一般に製造、販売されている事実も見いだせない。」と述べられておりますので、当該補正が識別力の判断に影響した可能性があります。
不服2017-8920(セル・ドゥ・メール/周知著名商標と出所混同)
審決分類
商標法第4条第1項第15号(商品又は役務の出所の混同)
商標
本件商標:セル・ドゥ・メール(標準文字)
引用標章:セル・ドゥ・メール
結論
原査定を取り消す。本願商標は、登録すべきものとする。
本件商標は、その商品又は役務がユーリアル社又は同社と何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように、その商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれはないものであるから、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
審決等の要点
本願商標は、「セル・ドゥ・メール」の文字からなるところ、これは、「海の塩」を意味するフランス語の「Sel de Mer」の文字を片仮名で表したといえるものであるから、該文字は、全体として「海の塩」ほどの意味合いを有するものである。 そして、当審において職権をもって調査するに、「セル・ドゥ・メール」の文字は、フランスのユーリアル社が商品「発酵バター」について使用するものであることは認められるものの、該文字が、同社の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されている事実を発見することができなかった。
また、「セル・ドゥ・メール」の文字は、フランス語の「Sel de Mer」の文字を片仮名で表したものであって、その意味合いは品質表示とも理解されるものであるから、該語は造語としての独創性を有するものではないというのが相当である。
加えて、本願商標の指定商品及び指定役務は、ユーリアル社が「セル・ドゥ・メール」の文字を使用する商品「発酵バター」とは、その商品の製造業者や流通経路等を異にするものである。
以上を総合的に勘案すれば、出願人が本願商標をその指定商品又は指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者が、ユーリアル社の使用する標章を想起、連想することは無いというのが相当であるから、その商品又は役務が同社又は同社と何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように、その商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれはないものである。
コメント
本願商標の出願時の第29類の指定商品は、「食用油脂,乳製品,冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工水産物,食肉」であり、「発酵バター」を含む商品表示である「乳製品」が含まれておりましたが、補正書を提出し、第29類の指定商品から「乳製品」を削除して登録を受けております。審決では、引用標章の著名性が否定されておりますが、「本願商標の指定商品及び指定役務は、ユーリアル社が『セル・ドゥ・メール』の文字を使用する商品『発酵バター』とは、その商品の製造業者や流通経路等を異にするものである」と述べられておりますので、当該補正も少なからず判断に影響を与えたものと思われます。
不服2017-12293(図+FuJi/称呼同一商標の類否)
審決分類
商標法第4条第1項第11号(同一又は類似)
商標
本件商標:
引用商標:
結論
原査定を取り消す。本願商標は、登録すべきものとする。
本願商標と引用商標とは非類似の商標であるから、本願商標を商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は、取消しを免れない。
審決等の要点
本願商標は、青色の極太線による円輪郭内の上下に、それぞれ円輪郭と同じ太さで左向きと右向きの矢印状の図形を配し、該上下の矢印状の図形に挟まれて、その図形の先端に文字幅をあわせるように円輪郭の中央に青色で「FuJi」の文字を表してなるところ、その構成中の図形部分と文字部分とは、いずれも同じ青色で統一されており、「Fuji」の文字の配置も上下の矢印状の図形に挟まれ、該文字の両端が上下の矢印状の図形の先端にあわせるように表されていることから、外観上まとまりよく一体的な印象を強く与え、特定の部分が分離、抽出される構成態様とはいえないものである。そして、本願商標の図形部分は、我が国において特定の事物を表したもの又は意味合いを表すものとして認識され、親しまれているというべき事情は認められず、該図形部分からは特定の称呼及び観念を生じないものであり、また、「FuJi」の文字部分は、「富士」、「藤」又は「不二」等の語を連想、想起させる場合があるものの、特定の観念を生じるとまではいえないものである。そうすると、本願商標は、その構成中の「FuJi」の文字に相応して「フジ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
引用商標は、「FUJI」の文字を「FU」及び「I」の文字を紺色で、「J」の文字を黒色で表してなり、「U」の文字が、他の文字に比べ幅広に書され、各文字の間隔は、極めて狭く書された構成からなるところ、該「FUJI」の文字は、「富士」、「藤」又は「不二」等の語を連想、想起させる場合があるものの、特定の観念を生じるとまではいえないものである。そうすると、引用商標は、該「FUJI」の文字に相応して「フジ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
本願商標と引用商標とを比較すると、外観においては、図形の有無、色彩の相違などにおいて、印象が大きく異なり、また、文字部分を比較してみても、文字の構成態様や色彩の相違など顕著な差異を有するものであるから、両商標は、外観上、明確に区別できるものである。次に、称呼においては、両商標から生じる称呼は、共に「フジ」であり、称呼上、同一である。また、観念においては、本願商標と引用商標とは、いずれも特定の観念を生じないものであるから、両商標は、観念上、比較することができない。
そうすると、本願商標と引用商標とは、称呼において「フジ」の称呼を共通にするとしても、観念において比較することができず、外観において明確に区別できるものである。そして、外観における相違が顕著であることから、称呼の共通性が外観における差異を凌駕するものとはいい難く、外観、称呼及び観念を総合して考察すると、両商標は、役務の出所の誤認、混同を生ずるおそれのないものであり、全体として非類似の商標というのが相当である。
コメント
本件では、本願商標が特徴的に図案化されており、外観上の相違が顕著であるため、同一称呼が生じるものの、非類似と判断されたものと思われます。一方、同じ「FUJI」の文字に関する不服2015-13330では、以下の商標が類似すると判断されております(≒は類似を表す記号)。なお、この審決において、「Kale」の文字は、指定商品との関係において商品の原材料である「ケール」の欧文字を表したものと述べられております。
・不服2015-13330: ≒
不服2017-8532(nanoMisty Pro/結合商標の類否)
審決分類
商標法第4条第1項第11号(同一又は類似)
商標
本件商標:nanoMisty Pro(標準文字)
引用商標:
結論
本件審判の請求は、成り立たない。
本願商標と引用商標とは、互いに類似する商標であり、また、本願商標と引用商標の指定商品も類似するものであるから、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
審決等の要点
本願商標の構成中の「nanoMisty」の文字部分は、「10億分の1」を意味する「nano」及び「霧の(深い),ぼんやりとした」等の意味を有する「Misty」の文字を組み合わせたものといえるが、これらが広く一般に親しまれた平易な英語であるとはいえず、また、「nanoMisty」の文字が、本願商標の指定商品を取り扱う業界において、商品の品質等を表すものといえる実情も見いだせないから、全体として直ちに特定の意味合いを想起させるものとはいえない。一方、本願商標の構成中の「Pro」の文字部分は、「プロ(の),専門家(の)。professionalを短くした形。」の意味を有する広く一般に親しまれた平易な英語であり、また、本願商標の指定商品を取り扱う業界においては、「専門家用の商品」、「専門家用の商品と同等の高い品質を有する」ほどの意味合いにおいて、商品の内容や品質の誇称表示として使用されているものであるから、当該文字部分は、商品の出所識別標識として機能しないか又はその機能は極めて弱いものといえる。
してみれば、本願商標は、その構成中の「nanoMisty」と「Pro」の文字部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められず、かつ、「nanoMisty」の文字部分が、取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものというべきであるから、本願商標は、その構成中の「nanoMisty」の文字部分を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標(引用商標)と比較して商標の類否を判断することができるものである。したがって、本願商標からは、構成全体から生じる「ナノミスティプロ」の称呼のほか、要部である「nanoMisty」の文字部分から「ナノミスティ」の称呼が生じ、特定の観念は生じないというのが相当である。
引用商標は、「ナノミスティ」の片仮名と「NANO MISTY」の欧文字を上下二段に併記してなるものであるから、「ナノミスティ」の称呼が生じ、特定の観念は生じないというのが相当である。
本願商標の要部と引用商標とを対比すると、外観においては、片仮名の有無、欧文字部分のスペースの有無及び欧文字部分の大文字小文字の差異があるものの、両者は共に態様上の特徴が認められない普通の書体で表されていることに加え、本願商標の要部と引用商標の欧文字部分のつづりが共通であることに鑑みれば、両者における上記相違が、看者に対し、出所識別標識としての外観上の顕著な差違として強い印象を与えるとはいえない。そして、称呼においては、両者は、「ナノミスティ」の称呼を共通にする。また、観念においては、両者は共に特定の観念を生じないものであるため、両者を比較することができず、観念によって区別することはできない。
そうすると、本願商標の要部と引用商標は、「ナノミスティ」の称呼を共通にし、その外観において、称呼の共通性を凌駕するほどの顕著な差異があるとはいえず、また、観念によって区別できるものではないことから、これらの外観、称呼及び観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合勘案すれば、両者は、相紛れるおそれのある類似するものというべきである。
コメント
本件では、「Pro」の文字部分の識別力が弱いことに加え、「nanoMisty」の文字部分が二つの英単語から構成される造語であり、また、やや冗長な構成よりなることが影響して、両商標は類似すると判断されたものと思われます。「Pro」の文字の有無に関する事例として、以下の審決・異議の決定があります(≠は非類似を表す記号)。
・異議2013-900293: ≠
・不服2012-18944: ≠
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(文責・前田)