商標の審査・審判における判断の傾向は時代により変化しますので、その傾向を把握するためには審決や異議の決定を継続的にチェックする必要があります。商標審決アップデートでは、定期的に注目すべき商標審決をピックアップし、情報提供していきます。 

異議2016-900344(PARSONS XTREME GOLF/周知著名商標と商標の類否)

審決分類

商標法第4条第1項第11号(同一又は類似)

商標

本件商標:PARSONS XTREME GOLF
引用商標:Golf

結論

登録第5873233号商標の商標登録を取り消す。

本件商標は、引用商標と類似する商標であり、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。

審決等の要点

引用商標は、本件商標の登録出願時には、申立人の業務に係る商品「自動車」を表わすものとして、我が国の自動車に関連する商品及び役務を取り扱う分野の取引者、需要者の間に広く認識されていたものといえ、その周知性は、本件商標の登録査定時においても継続していたものと認められる。

本件商標は、全体が17文字よりなり、極めて冗長な構成といえるばかりでなく、これより生ずると認められる「パーソンズエクストリームゴルフ」の称呼も15音と冗長にわたるものである。末尾に位置する「GOLF」の欧文字部分は、「(スポーツとしての)ゴルフ」を意味する英単語(前出、ランダムハウス英和大辞典(第2版))として、我が国の一般の需要者によく知られているものであるばかりか、申立人の業務に係る商品「自動車」を表示するものとして、我が国の自動車に関連する商品及び役務を取り扱う分野の取引者、需要者の間に広く認識されている引用商標と欧文字による同一のつづりからなるものである。してみると、本件商標をその指定商品について使用した場合、本件商標の構成中「GOLF」の欧文字部分が、取引者、需要者に対し、商品の出所を識別する標識として強く支配的な印象を与えるものというべきであり、かつ、その全体の構成及び称呼も冗長であることから、本件商標は、その構成中の「GOLF」の欧文字部分を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標(引用商標)と比較して商標の類否を判断し得るものである。

引用商標は、「Golf」の欧文字を横書きしてなるものであるから、その構成文字に相応して、「ゴルフ」の称呼及び「(スポーツとしての)ゴルフ」又は「申立人の業務に係る自動車のブランド名(Golf)」の観念を生ずるものである。

本件商標の構成中、要部として認識される「GOLF」の欧文字部分と引用商標とは、語頭の「G」の欧文字を同じくし、他の文字は同じ欧文字のつづりであって、大文字であるか小文字であるかの差異にすぎないものであるから、外観上近似した印象を与えるものである。また、本件商標の構成中、要部として認識される「GOLF」の欧文字部分と引用商標とは、「ゴルフ」の称呼を共通にするものである。さらに、本件商標の構成中、要部として認識される「GOLF」の欧文字部分と引用商標とは、「(スポーツとしての)ゴルフ」又は「申立人の業務に係る自動車のブランド名(Golf)」の観念を共通にするものである。

以上によれば、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれの点についても、互いに紛れるおそれがある類似の商標というべきである。

コメント

本件では、引用商標の周知性が影響して、商標登録取消の判断となっておりますが、商標法第4条第1項第15号に該当するとの主張はなされておらず、同法同条項第11号に該当すると判断されております。商標法第4条第1項第11号の判断に引用商標の周知性が影響した事例として参考になるものです。

異議2017-900179(チバニアン/公序良俗)

審決分類

商標法第4条第1項第7号(公序良俗違反)

商標

本願商標:チバニアン(標準文字)

結論

登録第5929242号商標の指定商品中、第16類「印刷物」についての商標登録を取り消す。

本願商標は、その指定商品中「印刷物」について、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、その他の登録異議の申し立ての理由について判断するまでもなく、同法第43条の3第2項によって、結論のとおり決定する。

審決等の要点

本件商標は、「チバニアン」の片仮名を標準文字で表してなるところ、「千葉セクション」の名称である当該文字は、共同研究チームの一員である国立極地研究所が複数の候補の中から選択した造語であって、本件商標の登録出願日前までに、「千葉セクション」が地質年代の境界を代表する地層(GSSP)の候補として国際機関に申請されることが数多く報道等されたことから、その事実は、一般に広く知られていたものと認められる。そして、「チバニアン」の名称の「千葉セクション」は、国立大学、国立の博物館・研究所等の公共機関による共同研究チームにより、GSSPの候補として国際機関に申請されるなど公益性が高いものであること、「千葉セクション」が、国際機関にGSSPとして承認された場合には、その名称である「チバニアン」の語は、地質時代の一時代を特定する学術用語となることが十分想定される。

そうすると、本件商標は、これを本件商標権者が第16類「印刷物」に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、公的機関である共同研究チームに係る千葉セクション(GSSP)に関する書籍、論文等であるかのごとく、誤認するおそれがあり、ひいては、商取引の秩序を乱し得るおそれがあり、また、社会公共の利益を害することになるものであって、公の秩序を害するおそれがあるものというべきである。

コメント

本件商標は、第14類、第16類、第28類の指定商品について登録を受けておりますが、本件異議申立における登録取消の対象は、第16類「印刷物」のみであったため、当該商品についてのみ登録取消の判断となっております。なお、本件以外にも、第30類等の分野で「チバニアン」に関連する商標が複数出願されておりますが、商標法第4条各号(おそらく7号)に該当するとの拒絶理由通知を受けております。

取消2016-300606(マージ/MA-JI/社会通念上同一)

審決分類

商標法第50条(不使用による取り消し)

商標

本件商標:
使用商標:MA-JI LUX、マージリュクス、MA-JI/LUXE、MAJI

結論

登録第2385483号商標の商標登録を取り消す。審判費用は、被請求人の負担とする。

被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、その請求に係る指定商品について、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていたことを証明したものとは認められない。

審決等の要点

被請求人が提出した証拠中、被請求人(商標権者)の名称、使用商標及び使用商品の全てを確認できる証拠はなく、被請求人は、その主張においても、本件商標の使用者について明らかにしていない。なお、乙第4号証の「MA-JI LUXE 企画明細書」には、「Sumitex International Co.LTD」の記載があり、ブランド欄に「MA-JI LUXE」の記載があることからすれば、スミテックス社が「MA-JI LUXE」の商標を使用していると推認することはできるものの、スミテックス社が本件商標に係る専用使用権者又は通常使用権者である旨の主張及び証拠の提出はない。

被請求人が提出した証拠中、確認できる使用商標は、「MA-JI LUXE」、「マージリュクス」、「MA-JI/LUXE」及び「MAJI」であり、「シャツ、ブラウス、スーツ、ワンピース、ジャケット、Tシャツ」等に使用していることがわかる。しかしながら、業務委託契約書によれば、被請求人は、スミテックス社との間で、「ジュピターショップチャンネル株式会社」を販売先とする「『MA-JI LUXE』(マージリュクス)ブランド商品」に関する製品の企画を受託しているものの、被請求人が本件商標に係る指定商品「被服」について、これを生産又は販売している等の事実については何ら証明されていないことから、被請求人が「被服」について商標を使用したとする蓋然性も認められない。

本件商標は、「マージ」の片仮名及び「MA-JI」の欧文字を上下2段に横書きした構成からなり、上段の「マージ」は、下段の「MA-JI」の読みを特定したものとみるのが相当であるから、本件商標からは「マージ」の称呼を生じるものであり、上記各使用商標は、いずれも、まとまりよく一体的に表されており、それぞれの構成文字の全体に相応して「マージリュクス」又は「マジ」の称呼を生じるものである。してみれば、本件商標と各使用商標とは、その構成態様及び構成文字において相違し、称呼も異なるものであるから、社会通念上同一の商標とみることはできない。

上記によれば、使用商標の使用者は判然とせず、被請求人(商標権者)が本件商標に係る指定商品「被服」に使用したものとみることもできない上、提出された証拠から確認できる各使用商標は、いずれも、本件商標とは異なるものであって、社会通念上同一ということもできない。その他、被請求人(商標権者)が、本件商標に係る指定商品「被服」について、本件商標又はこれと社会通念上同一の商標を使用したことを認めるに足りる証拠の提出はない。

してみれば、商標の使用時期等に言及するまでもなく、被請求人(商標権者)が、本件商標に係る指定商品「被服」について、本件商標又はこれと社会通念上同一の商標を使用したものと認めることはできない。

コメント

本件商標は、「マージ」の片仮名文字及び「MA-JI」の欧文字を上下2段に横書きした構成よりなるところ、使用商標は、「MA-JI LUXE」、「マージリュクス」、「MA-JI/LUXE」及び「MAJI」であり、いずれも社会通念上同一とみることはできないと判断されております。特に、使用商標中「MAJI」からは「マージ」の称呼が生じず、社会通念上同一とは認められないと判断された点が、実務上参考になると思われます。

取消2015-300622(QRコード/請求に係る役務に関する使用証拠)

審決分類

商標法第50条(不使用による取り消し)

商標

本件商標:

使用商標:

結論

登録第4882830号商標の指定商品及び指定役務中、第35類「全指定役務」については、その登録は取り消す。審判費用は、被請求人の負担とする。

審決等の要点

被請求人の商品・サービスのパンフレット(乙5)の3頁、7頁及び8頁には、本件商標と社会通念上同一の商標が表示されている。そして、パンフレットには、被請求人に係る2次元コードに関する内容等が紹介されているものであり、また、7頁には、被請求人の「事業概要」として「ダイレクトマーケティング」の記載がある。しかしながら、このパンフレットによっては、被請求人が、上記「ダイレクトマーケティング」を含め、本件審判請求に係る指定役務である第35類の役務について、その役務を提供している内容の記載を見いだすことができないものであって、かつ、本件商標をその指定役務について使用していると認められる事実を見いだすこともできない。その他、提出されている証拠においては、本件商標を本件審判の請求に係る役務について使用している事実は見いだせない。

以上のとおり、被請求人が提出した全証拠によれば、本件商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、要証期間内にその請求に係る指定役務について、本件商標を使用していた事実は認められない。

なお、被請求人は、パンフレットの7頁において、本件商標と同一の商標が表示され,その下部の「事業内容」として、市場調査に該当する「ダイレクトマーケティング」が記載されていることから、本件商標を市場調査に使用している旨主張し、その証拠として乙第8号証の1及び2並びに乙第9号証の1ないし3を提出している。しかしながら、該頁には、「事業概要」が記載されている以外は、被請求人が目標とするビジネス構想と被請求人の主な取引先が掲載されているのみで、本件商標を使用していると主張する第35類の上記役務について、被請求人自身が、本件商標を使用している事実を見いだすことができない。また、パンフレット全体からも被請求人自身が、これらの役務に関する業務を行っている事情も認められず、また、その業務によって提供される役務について、本件商標を使用している事実を証明する記載はどこにも見当たらない。

コメント

パンフレットに本件商標と社会通念上同一の商標が表示されていたものの、同パンフレットの事業概要欄に「ダイレクトマーケティング」と記載があるのみで、役務内容の記載がなかったために取消の判断となっております。

不服2017-9396(元祖/石釜豆腐/図案化された商標の識別力)

審決分類

商標法第3条第1項第3号(商品の産地、品質等又は役務の質等)

商標

本願商標:

結論

原査定を取り消す。本願商標は、登録すべきものとする。

本願商標は、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものいうべきであり、商標法第3条第1項第3号に該当するものではないから、これを理由として本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。

審決等の要点

本願商標は、別掲のとおり、ところどころに凹凸やはねを有する黒色の横長の円形内に、上段には、「元祖」の漢字及び「元」と「祖」の間に「がんそ」の平仮名を、中段には、「〇釜豆腐」(「〇」は、特定の文字を直ちに認識できない文字。以下同じ。)の文字を、下段には、「いしがまとうふ」の平仮名を、それぞれ白抜きで表した構成からなるものである。その構成中、下段の「いしがまとうふ」の文字中の、「いしがま」は、その指定商品との関係においては、「福岡県石釜地域」を表す「石釜」を、また、「とうふ」の文字は、「豆腐」を、それぞれ平仮名表記したものと理解されるものであるから、該「いしがまとうふ」の文字は、「福岡県石釜地域産の豆腐」ほどの意味合いを理解させるものであって、該文字部分は、自他商品の識別標識としての機能を果たすものと認めることはできない。

しかしながら、その構成中、中段の「〇釜豆腐」の文字は、「〇」の部分が、看者に、特定の文字を表すものとして、直ちに認識されるものとはいえず、何らかの文字を図案化したものとして理解されるというのが相当であり、また、当審において、職権をもって調査するも、該「〇」の部分が、本願の指定商品の分野において、特定の意味合いや商品の品質等を認識させる文字として使用されている事実や、その書体が、指定商品の分野において広く用いられている書体として、取引上普通に使用されている事実を発見することはできなかった。そうすると、本願商標の構成中、「〇釜豆腐」の文字部分は、別掲の構成態様においては、一種独特の態様からなる標章として、把握、認識され、商取引に資されるものとみるのが相当である。

してみれば、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、商品の品質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とはいえず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものというべきである。

コメント

本願商標は、「いしがまとうふ」の平仮名文字を含んでいるにもかかわらず、中断部分は「〇釜豆腐」(「〇」の部分は特定の文字を表すものとして直ちに認識されない)であり、一種独特の態様からなる標章と理解されると判断されております。審決において、「いしがまとうふ」は「石釜豆腐」の平仮名表記と理解され、自他商品の識別標識としての機能を果たすものと認められない旨述べられておりますので、第三者が「いしがまとうふ」や「石釜豆腐」の文字を使用する行為に対する商標権の行使は困難であると思われます。

不服2017-13167(GUEST HOUSE 心家/結合商標の類否)

審決分類

商標法第4条第1項第11号(同一又は類似)

商標

本願商標:GUEST HOUSE 心家
引用商標:こころ屋

結論

原査定を取り消す。本願商標は、登録すべきものとする。

本願商標と引用商標とは非類似の商標であるから、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当ではなく、取消しを免れない。

審決等の要点

本願商標の構成中の「GUEST HOUSE」の文字部分は、例えば、株式会社研究社「新英和中辞典」の「guest house」の項には、「 (高級)下宿、 簡易ホテル、 ゲストハウス」の記載があることから、該文字部分からは、「宿泊施設」程の漠然とした意味合いを理解させるものであり、「『心家』という名称の宿泊施設(ゲストハウス)」程の意味合いを想起させ、「心家」の文字部分を自他役務の識別標識としての機能を発揮する要部と捉える場合があるとしても、引用商標と抵触する役務である「飲食物の提供」との関係においては、「GUEST HOUSE」の文字部分が、例えば、「西洋料理店」を意味する語である「Restaurant (レストラン)」などのように、飲食物を提供する場所や施設を表す語として一般に親しまれている事情は見いだせない。そうすると、「GUEST HOUSE」の文字部分が、「飲食物の提供」の役務の具体的な提供の場所等を表し、識別力が弱い文字であるとはいい難く、また、上記のとおり、本願商標は、同書、同大でまとまりよく表された構成からなることから、殊更、その構成中の「GUEST HOUSE」の文字部分を捨象して、「心家」の文字部分のみが自他役務の識別標識としての機能を果たすとみるべき格別の事情はないというべきである。

本願商標と引用商標の類否について検討するに、本願商標と引用商標とは、外観においては、その構成文字及び構成態様において明らかな差異を有するものであるから、外観上、明確に区別できるものである。次に、称呼においては、本願商標から生じる「ゲストハウスココロヤ」の称呼と引用商標から生じる「ココロヤ」の称呼とは、その音構成及び音数において明らかな差異を有するものであるから、称呼上、明確に聴別されるものである。そして、観念においては、本願商標からは、「『心家』という名称の宿泊施設(ゲストハウス)」の観念が生じるのに対し、引用商標は、特定の観念を生じないものであるから、両者は、観念上、相紛れるおそれはない。

そうすると、本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点についても、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。

コメント

指定役務中「宿泊施設の提供」との関係において、本願商標の構成中「GUEST HOUSE」の文字は識別力が弱いと考えられますが、引用商標の指定役務が「飲食物の提供」のみであり、当該役務との関係においては「GUEST HOUSE」の文字の識別力が弱いとはいえず、非類似と判断されております。指定商品・役務との関係によって、識別力の強弱が変わり、類否判断に影響を及ぼすことがあることを示す事案です。

不服2017-14002(サネイ/称呼同一商標の類否)

審決分類

商標法第4条第1項第11号(同一又は類似)

商標

本願商標:サネイ(標準文字)
引用商標:

結論

本件審判の請求は、成り立たない。

本願商標と引用商標は、互いに類似する商標であり、その指定商品も同一又は類似するものであるから、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

審決等の要点

引用商標は、「Sanei」の欧文字を筆記体風の書体で表してなるところ、該「Sanei」の文字は、英語辞書等に載録された成語ではなく、引用商標の指定商品の分野において特定の意味合いを表す語として使用されている実情も見受けられないものであるところ、そのような欧文字からなる商標については、我が国において広く親しまれている英語風又はローマ字風の発音をもって称呼されるのが一般的といえるものである。そうすると、本願商標は、その構成文字に相応して、これを英語風又はローマ字風に発音した「サネイ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。加えて、本願商標は、その構成を「Sa」「n」「e」「i」と区切ってローマ字風に読むことも可能であることから「サンエイ」の称呼をも生じ、これを読みとする日本語「山影」は、「山の姿。また、物にうつった山のかげ。」を表す語として株式会社岩波書店発行広辞苑第六版に掲載されてはいるものの、かかる意味合いにおいて、漢字ではなく欧文字で表すことが我が国で一般的に慣れ親しまれている語とはいい難いことから、特定の語義を想起しない一種の造語として認識され、これより、特定の観念は生じないと判断するのが相当である。

本願商標と引用商標とは、外観においては、片仮名及び欧文字という文字種を異にするところがあるものの、称呼においては、本願商標と引用商標は、「サネイ」の称呼を共通にするものであり、また、観念においては、両者はいずれも特定の観念を生じないから、比較することができないものである。そして、商標の使用においては、商標の構成文字を同一の称呼を生じる範囲内で平仮名、片仮名及びローマ字等相互に変更したり、デザイン化したりすることが一般に行われている取引の実情があることに加え、特定の観念を有しない文字商標においては、観念において商標を記憶できず、称呼において記憶し、これを頼りに取引に当たることがすくなくないというのが相当である。

以上によれば、本願商標と引用商標は、その外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合し、上記取引の実情を考慮すると、両者の外観が相違するとしても、観念において比較できず、取引上必要な役割を果たす称呼を共通にするものであるから、商標の出所について誤認混同を生じさせるおそれのある類似の商標と判断するのが相当である。

コメント

近年、称呼が同一であっても、外観及び観念が異なり非類似であると判断される事案が散見されますが、本件では、「特定の観念を有しない文字商標においては、観念において商標を記憶できず、称呼において記憶し、これを頼りに取引に当たることがすくなくない」と述べた上で、同一称呼を生じる本願商標と引用商標を類似の商標と判断しております。

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(文責・前田)