知的財産高等裁判所第2部(本多知成裁判長)は、令和4年(2022年)9月21日に、特許権侵害に基づく損害賠償請求事件において、水分に関する数値限定を伴う原告特許について、進歩性欠如を理由に無効であるとして損害賠償請求を棄却しました。同特許による差止請求事件では、知財高裁の先使用権に関する判断が話題となりましたが、結論として被告の先使用権の主張が退けられ、さらには特許無効の抗弁も認められず差止判決が確定しています。ところが、損害賠償請求事件では進歩性欠如により特許無効と判断されました。差止請求事件の判決から損害賠償請求事件において特許無効と判断されるまでの経緯を追い、数値限定特許に対して、どのような無効主張が効果的であったのか検討します。

なお、先使用権に関する争点(差止請求事件)については、こちらの記事をご覧ください。

ポイント

骨子

  • 水分含量に関する数値限定発明(いわゆる水分特許)について進歩性欠如により無効と判断した知財高裁の判決
  • 同特許に係る差止請求事件では、別の証拠に基づいて進歩性について判断されたが進歩性欠如は認められないとされた
  • 本記事では、同特許に関する、差止請求事件、無効審判、及び損害賠償請求事件における進歩性の判断を中心に検討し、サポート要件にも触れる
  • また本記事では、進歩性欠如の認められなかった証拠と、認められた証拠の違いを対比して、数値限定発明(水分特許)において無効主張として効果的な証拠について検討する

判決概要

裁判所 知的財産高等裁判所第2部
判決言渡日 令和4年9月21日
事件番号
事件名
令和4年(ネ)第10052号
特許権侵害に基づく損害賠償等請求控訴事件
原判決 原審・東京地方裁判所平成30年(ワ)第17586号(第1事件)、平成31年(ワ)第7191号(第2事件)、令和2年(ワ)第7989号(第3事件)、令和3年(ワ)第8097号(第4事件)
裁判官 裁判長裁判官 本 多 知 成
裁判官    浅 井  憲
裁判官    中 島 朋 宏

解説

数値限定発明の特許性に関する論点整理

・進歩性
特許出願に係る発明について、特許を受けようとするとき進歩性を有することが求められます。進歩性は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(いわゆる「当業者」)が、出願時当時に公知であった発明に基づいて容易に発明できたときは、その発明については特許を受けることができないとする要件です(特許法29条2項)。
数値限定発明は、主引例との相違点が数値限定のみにあるとき、特許庁の審査基準上、「通常、進歩性を有しない」と説明されています。

請求項に数値限定を用いて発明を特定しようとする記載がある場合において、主引用発明との相違点がその数値限定のみにあるときは、通常、その請求項に係る発明は進歩性を有していない。実験的に数値範囲を最適化又は好適化することは、通常、当業者の通常の創作能力の発揮といえるからである。
しかし、請求項に係る発明の引用発明と比較した効果が以下の(i)から(iii)までの全てを満たす場合は、審査官は、そのような数値限定の発明が進歩性を有していると判断する。

(i) その効果が限定された数値の範囲内において奏され、引用発明の示された証拠に開示されていない有利なものであること。
(ii) その効果が引用発明が有する効果とは異質なもの、又は同質であるが際だって優れたものであること(すなわち、有利な効果が顕著性を有していること。)。
(iii) その効果が出願時の技術水準から当業者が予測できたものでないこと。

なお、有利な効果が顕著性を有しているといえるためには、数値範囲内の全ての部分で顕著性があるといえなければならない。
また、請求項に係る発明と主引用発明との相違が数値限定の有無のみで、課題が共通する場合は、いわゆる数値限定の臨界的意義として、有利な効果の顕著性が認められるためには、その数値限定の内と外のそれぞれの効果について、量的に顕著な差異がなければならない。他方、両者の相違が数値限定の有無のみで、課題が異なり、有利な効果が異質である場合には、数値限定に臨界的意義があることは求められない。

(第III部 第2章 第4節 特定の表現を有する請求項等についての取扱い「6. 数値限定を用いて発明を特定しようとする記載がある場合」)

しかしながら、数値限定発明に係る特許は、頻繁に成立しております。上記の(i)~(iii)を満たすことで、進歩性に関する拒絶理由は解消するため、出願時の発明の内容検討によって、対策が可能な場合も少なくありません。しかし、特に、従来知られていない課題であって有利な効果が異質である場合には、比較的特許が認められやすくなる傾向にあります。

・サポート要件
数値限定発明は、従来知られていなかった知見に基づく発明等、技術的に非常に高度な事案も多くみられます。そうすると、技術常識の適用範囲も限定的となり、明細書中に示された実験結果から特許請求の範囲に記載の発明まで一般拡張することが難しくなり、特許法36条6項1号に規定されるサポート要件の問題が生じることはしばしばあります。
なお、サポート要件については、偏光フィルム大合議事件で示された規範に従って以下の基準で判断されます。

特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり、明細書のサポート要件の存在は、特許出願人(特許拒絶査定不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟の原告)又は特許権者(平成15年法律第47号附則2条9項に基づく特許取消決定取消訴訟又は特許無効審判請求を認容した審決の取消訴訟の原告、特許無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟の被告)が証明責任を負うと解するのが相当である。

(偏光フィルム大合議事件(知財高判平成17年11月11日、平成17年(行ケ)第10042号)

数値限定発明は、特許請求の範囲にて、先行文献に記載されていない数値の範囲を特定することで権利化できる場合があります。中には、従来技術を通常どおり実施すると当然にその数値範囲内に含まれるものもあります。そのような場合、第三者は特許権侵害をするおそれがあるため、成立した特許権について慎重に検討することとなります。対策としては、無効理由(新規性・進歩性欠如、サポート要件違反・実施可能要件違反)、先使用権の有無、設計変更などについての検討が挙げられます。ここでは、本件で争点となった進歩性欠如、サポート要件違反の無効主張について取り上げます。(先使用権についてこちらの記事をご覧ください。)

事案の概要

本件の損害賠償請求事件の他に、同特許権に基づく差止請求事件、特許庁における無効審判が提起されています。本判決は、損害賠償請求事件の控訴審における判決です。

判旨

事案

興和株式会社(控訴人、原審原告、以下「A社」という)は、特許第5190159号の請求項6ないし9に係る発明の技術的範囲に東和薬品株式会社(被控訴人、原審被告、以下「B社」という)の被告各製品が属するとして、本件特許権侵害を理由に、B社に対し損害賠償等を請求しました。請求は、侵害期間を1年ごとに区切った第1事件(平成27年4月~平成28年3月分、約35億円等)、第2事件(平成28年4月~平成29年3月分、約45億円)、第3事件(平成29年4月~平成30年3月分、約48億円)、第4事件(平成30年4月~平成31年3月分、約56億円)の4件に分けて順次提起されました。原審は、原告の請求を全部棄却し、原告が控訴(なお控訴審で請求項7及び8に基づく主張は撤回)しました。

本件特許に関して

・本件特許(特許第5190159号)
特許請求の範囲は、以下のとおりです。差止請求事件で問題とされた請求項1及び2についても併せて示します。

【請求項1】
次の成分(A)及び(B):
(A)ピタバスタチン又はその塩;
(B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上;
を含有し、かつ、水分含量が2.9質量%以下である固形製剤が、気密包装体に収容してなる医薬品。
【請求項2】
固形製剤の水分含量が1.5~2.9質量%である、請求項1記載の医薬品。
【請求項6】
次の成分(A)及び(B):
(A)ピタバスタチン又はその塩;
(B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上;
を含有し、かつ、水分含量が2.9質量% 以下である固形製剤。
【請求項7】
水分含量が1.5~2.9質量%である、請求項6記載の固形製剤。
【請求項8】
ピタバスタチン又はその塩を投与単位当たりピタバスタチンカルシウム換算で0.1~16mg含有する、請求項6又は7記載の固形製剤。
【請求項9】
固形製剤が錠剤である、請求項6~8のいずれか1項記載の固形製剤。

本件発明は、「ピタバスタチン又はその塩のラクトン体生成が抑制された固形製剤及び当該固形製剤を用いた医薬品に関し」(【0001】)、「ピタバスタチン又はその塩と、カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上とを含有する、ラクトン体生成の抑制された固形製剤、及び当該固形製剤を用いた医薬品を提供することを課題とする」(【0009】)とされています。
本件発明に関し、「混合物中の水分含量とラクトン体量の間に相関があり、水分含量が増加するに従い脱水縮合物であるラクトン体の生成量が増加することが明らかとなった。固形製剤の水分含量を一定値以下とすることによって、ピタバスタチン又はその塩由来のラクトン体生成が抑制できることを見出した」(【0010】)とされています。

本件特許の明細書において、試験例1として以下の結果が示されています(【0058】~【0062】)。

成分(A)のみ(つまり、ピタバスタチンカルシウムのみ)では約70℃3日保存後のラクトン体生成率は、0.03%とされるのに対し、請求項に記載された成分(A)と成分(B)との組み合わせで、ラクトン体の生成率(%)が高くなることが示されています。

試験例2として、ピタバスタチンカルシウム、クロスポビドン及び結晶セルロースが含まれる処方(表2)により調製した口腔内崩壊型錠剤の水分含量を、真空乾燥にて表3に示す各水分含量に調整し、気密包装(PTP包装及びアルミピロー包装)した包装体を40℃、75%相対湿度の条件下で2ヵ月間保存し、錠剤調製直後、1ヶ月保存後及び2ヶ月保存後の、錠剤中のラクトン体の生成率を評価した結果が示されています(表3)。

試験例3として、試験例2と同一の方法により種々の水分含有量の口腔内崩壊型錠剤を気密包装した包装体を40℃、75%相対湿度の条件下で2ヶ月間保存し、錠剤調製直後、1ヶ月保存後及び2ヶ月保存後の、錠剤中の5-ケト体の生成率を評価した結果が示されています(表4)。

水分含量の測定方法に関して、「本発明の固形製剤の水分含量は、カールフィッシャー法により測定される。具体的には、第十六改正日本薬局方の水分測定法(カールフィッシャー法)に準拠し、容量滴定法又は電量滴定法を適宜選択して行えばよい。」とされています(【0027】)。

経緯概略

本件に関しては、損害賠償請求事件のほかに、同一特許に係る差止請求事件、及び特許庁における無効審判事件が提起されています。
差止請求事件において、A社は、B社の製品(被告製品)が請求項1及び2の発明の技術的範囲に属するとして、その差止めを求めました。B社は先使用権及び進歩性欠如による特許無効の抗弁を主張していましたが、東京地方裁判所及び知財高等裁判所はこれを認めず、いずれも差止認容判決を下しました。
差止認容判決後、A社は、東京地方裁判所に特許権侵害に基づく損害賠償請求事件を提起します。これに対し、B社はサポート要件違反、実施可能要件違反、及び、差止請求事件で提示したものとは異なる証拠を提示して進歩性欠如による無効理由があると主張しました。さらに、B社は、特許庁で無効審判を請求し(第1無効審判)、請求項1及び2について無効審決(請求項3~5については訂正請求により削除)を得ました。なお、第2無効審判は、第1無効審判の請求項1及び2に対する無効審決が確定したため、請求却下とされました。B社は、第3無効審判は、第1無効審判の審決確定後に請求項6~9について無効審決を求める第3無効審判を請求しました。結果、請求項7及び8は訂正請求により削除され、請求項6及び9は、進歩性欠如及びサポート要件違反により無効と判断されております。

東京地方裁判所は、A社の特許にサポート要件違反があるとして無効と判断しました。その後A社が、控訴して本件事件に至ります。

事件 管轄 事件番号 対象請求項 対象製品 判断
差止請求
事件
東京地裁 平成27年(ワ)第30872号 請求項2 4mg製品 差止認容
先使用権:認めず
進歩性:あり
知財高裁 平成29年(ネ)第10090号 請求項2 4mg製品 差止認容
先使用権:認めず
進歩性:あり
第1無効審判 特許庁 無効2018-800092 請求項1-5 進歩性:欠如
第2無効審判 特許庁 無効2018-800029 請求項1-2 請求却下
第3無効審判 特許庁 無効2020-800121 請求項6-9 進歩性:欠如
損害賠償
請求事件
東京地裁 平成30年(ワ)第17586号等 請求項6-9 1mg, 2mg, 4mg製品 サポート要件:違反
知財高裁
(本件)
令和4年(ネ)第10052号 請求項6,9 1mg, 2mg,
4mg製品
進歩性:欠如
差止請求事件

<東京地方裁判所>
本件は、A社が、B社の製品であるピタバスタチンCa・OD錠4mg「トーワ」の製造・販売等について、発明の名称を「医薬」とする特許第5190159号(本件特許)に基づく差し止めを求めた事件です。

原審の東京地裁では、以下の点が争点となりました。

<争点>
先使用権(特許法79条)の有無
進歩性欠如(同法29条2項)
なお、請求項1に関する差止請求については、裁判期日の中で原告により撤回されています。被告は、被告製品が請求項2に係る発明(本件発明2)の技術的範囲に属することを認めています。

以下、本記事においては進歩性欠如の争点のみを取り扱います。

<被告の主張>
B社は、乙7(特許4981194号)及び周知の技術事項(乙8~14)に基づいて容易に発明をすることができたものであり、進歩性を欠くと主張しました。

差止請求事件での進歩性欠如の主張(対比表)

本件発明 乙7
(特許4981194号)
相違点に関して



次の成分(A)及び(B):
(A)ピタバスタチン又はその塩;
一致 ピタバスタチンカルシウムと、
(B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上;
を含有し、かつ、
一致 クロスポピドン又は結晶セルロースを含む
水分含量が2.9質量%以下である固形製剤が、 相違 記載なし 乙8~14に記載の旨主張
気密包装体に収容して 相違 記載なし 日本薬局方にも規定されているような通常の気密包装を行ったものにすぎない(本件明細書【0046】)
なる医薬品。 一致 医薬組成物



固形製剤の水分含量が1.5~2.9質量%である 相違 乙8~14に記載の旨主張

本件発明2と乙7発明との相違点(固形製剤の水分含量1.5~2.9質量%の数値限定の有無)について、①水分による薬物分解を防ぐための乾燥が技術常識であったこと(乙8~10)、②HMG-CoA還元酵素阻害剤とクロスポビドンを含有し水分量を5%未満(好ましくは3%未満)とする製剤(乙11)、ピタバスタチンと微結晶セルロースを含有し水分量を0.73%・0.51%とする製剤(乙12)が知られていたこと、③ピタバスタチンカルシウム原薬について含水率低減によりラクトン体等の不純物生成が抑制されることが結晶形態を問わず(乙13)又は特定の結晶形態で(乙14)知られていたこと、を踏まえれば、乙7発明に接した当業者は水分量を低減して1.5~2.9質量%と適宜規定できたと主張しました。
なお、水分含量の下限値1.5%について、本件明細書には1.5%の実験値以外に下限値とする意義の記載や示唆がなく、製剤の水分量を大きく下げることは困難であることが知られている(乙10)ことからすれば、乙12記載の製剤の水分量と実質的な差はないと主張しました。

<裁判所の判断>
裁判所は、本件発明2と乙7発明とは、相違点①(気密包装体の有無)及び相違点②(水分含量1.5~2.9質量%の数値範囲)で相違すると認定しました。相違点②の数値範囲は、上限2.9質量%がラクトン体生成抑制、下限1.5質量%が5-ケト体生成抑制の観点から規定されたものと理解されるとしました。その上で、乙7公報や他の証拠(乙8~14)には、水分含量の下限値と5-ケト体生成抑制との関係を示唆する記載がなく、乙7発明に接した当業者が水分含量を低く調整しようとしても当然に1.5~2.9質量%の範囲内に収まるとは限らず(乙12(CN1969849号)記載のものは下限値を下回る)、あえて1.5質量%を下回らないようにする動機付けもないことから、相違点②に係る構成に想到することは容易ではなかったと判断しました。

東京地裁の判決について、B社は知財高裁に控訴しました。

<知的財産高等裁判所>
B社は、控訴審で乙13及び乙20から、ピタバスタチン原薬の水分量をコントロールして5-ケト体の生成を抑制できること、ピタバスタチン原薬の水分量5%未満になると類縁物質が増加することは知られていた旨主張しました。
これに対し、知財高裁は、B社は本件発明2に係る特許権について先使用権を有するとは認められず、本件発明2に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものとも認められないとしてB社の控訴を棄却しました。知財高裁は、乙13には、水分含量が約5質量%である結晶性形態のピタバスタチンカルシウムが安定していたことを示す根拠として、3か月間にわたる5-オキソを含む複数の類縁物質の増減値が記載されるにとどまり(【請求項1】、【0044】、【表1】)、乙20は、ピタバスタチンカルシウムの水分含量を5~15%に調節すれば、類縁物質の生成を抑制することができる旨記載されるにとどまり(【請求項1】、【0010】、【表1】)、いずれも、5-ケト体の生成抑制と水分含量の相関関係に着目し、その相関関係に基づいて、さらに、製剤においても水分含量の下限値を調整することを示唆するものではないとしました。

第1無効審判事件<特許庁>

B社は、特許庁に対し以下の無効審判を請求しました。

審判番号:無効2018-800092
審判請求日:平成30年7月19日
確定日:令和2年10月30日
請求対象:請求項1~5
訂正:請求項1~5(請求項3~5は削除)
審決概要:請求項1及び2:無効
甲第12号証(国際公開第2004/071403号)+技術常識

訂正後の請求項1及び2(以下、本件訂正発明1、2とする)は、以下のとおりです。

本件訂正発明1 本件訂正発明2
 次の成分(A)及び(B):
(A)ピタバスタチン又はその塩;
(B)クロスポビドン;
を含有し、
(C)カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有せず、
かつ、水分含量が1.5~2.9質量%である固形製剤が、気密包装体に収容してなる医薬品。
 次の成分(A)及び(B):
(A)ピタバスタチン又はその塩;
(B)クロスポビドン;
を含有し、
(C)カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有せず、
(D)ヒドロキシエチルセルロース及びポリビニルアルコールをいずれもフィルム形成剤として含有せず、
かつ、水分含量が1.5~2.9質量%である固形製剤が、気密包装体に収容してなる医薬品。

訂正請求後の請求項1は、水分含量の下限値1.5質量%を追加しています。
また、訂正請求後の請求項1及び2は、共通して、
・成分(B)をクロスポビドンに限定し、
・(C)カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有せず、
という限定を付しています。
請求項2では、更に、(D)ヒドロキシエチルセルロース及びポリビニルアルコールをいずれもフィルム形成剤として含有せず、と限定しています。

B社は、無効理由1、2、6を主張しました(なお、無効理由3~5は要旨変更で不許可)。合議体は、無効理由1及び2については理由がないとしましたが、無効理由6については理由があるとしました。

<合議体の判断>
無効理由1(甲1:国際公開第2004/071402号に基づく進歩性欠如)
甲1は、環境影響(pH、湿度等)に敏感なHMG-CoA還元酵素阻害剤(好ましくはアトルバスタチン)を含み、水分含量を医薬剤形全体の3.5重量%未満・好ましくは3重量%未満とし、アルカリ化物質を含まない安定な医薬剤形に関する発明です。
相違点として、①本件発明1「(A)ピタバスタチン又はその塩」に対し、甲1発明「アトルバスタチンCa」である点、②クロスポビドンを含みカルメロース・結晶セルロースを含まないとする点、③コーティングの有無が挙げられています。
審決は、甲1発明の実施例では結晶セルロース(ProSolv SMCC90)がピタバスタチン等の安定性に寄与する重要な成分として配合されているため、これを除外する(結晶セルロースを含まない構成とする)ことは当業者が容易になし得たとはいえないと判断し、相違点②の容易想到性が否定された結果、無効理由1には理由なしとされました。

無効審判事件での無効理由1(対比表)

本件訂正発明1 甲1
(WO2004/071402)
相違点に関して
次の成分(A)及び(B):
(A)ピタバスタチン又はその塩;

アトルバスタチンCa 甲1には、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤としてイタバスタチン(ピタバスタチン)が記載等
(B)クロスポビドン;
を含有し、
(C)カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有せず、かつ、

ラウリル硫酸ナトリウム、Prosolv SMCC90、アルファデンプン化されたコーンスターチ、架橋したカルボキシメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール ・クロスポビドンを含有させる動機づけ無
・甲1発明において、結晶セルロースである「Prosolv SMCC90」は活性物質の安定性を与える重要な成分であるといえるためこれを代替させることは容易でない
水分含量が1.5~2.9質量%である
水分が2.73、1.99、1.55又は1.73%
固形製剤が、気密包装体に収容してなる
錠剤を乾燥剤を用いたHDPEプラスチック瓶にパッケージ
医薬品。
医薬剤形

無効理由2(甲8:特表2010-533210に基づく進歩性欠如)
甲8(差止請求事件における乙11)は、アルカリ剤を含まないHMG-CoAレダクターゼ阻害剤の安定な医薬組成物に関する発明で、水分含量5%未満・好ましくは3%未満と記載されています。
相違点として、①本件発明1「(A)ピタバスタチン又はその塩」に対し、甲8発明「フルバスタチンナトリウム」である点、②甲8発明は、さらに「低水分トウモロコシデンプン、タルク、ステアリン酸マグネシウム」を含有する点、③水分含量が1.5~2.9質量%である点、④気密包装体への収容の有無が挙げられています。
審決は、甲8の記載から水分含量と分解物生成との相関関係自体を見出すことができず、フルバスタチンナトリウムをピタバスタチンに置き換える動機付けも認められないとし、さらに請求人が主張した甲1・甲12の知見(アトルバスタチンCaでの酸化分解物抑制効果)を甲8に適用する動機付けも否定しました。特に水分含量の下限値1.5質量%を設定することについて、当業者が容易になし得たことを示す主張・立証がないとして、無効理由2にも理由なしとされました。

無効審判事件での無効理由2(対比表)

本件訂正発明1 甲8
(特表2010-533210)
相違点に関して
次の成分(A)及び(B):
(A)ピタバスタチン又はその塩;

フルバスタチンナトリウム 甲8には、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤としてピタバスタチンの記載が無い。
フルバスタチンナトリウムをピタバスタチンに置き換える動機づけなし
(B)クロスポビドン;
を含有し、
(C)カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有せず、かつ、

・クロスポビドン含有
・カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有しない
水分含量が1.5~2.9質量%である
記載なし 特定の水分含有量としたことによるラクトン体の生成及びケト体の生成を抑制するという効果を、甲8の記載からは予測することができない
固形製剤が、気密包装体に収容してなる
記載なし
医薬品。
医薬品

無効理由6(甲12:国際公開第2004/071403号に基づく進歩性欠如)
甲12から以下の甲12発明1及び甲12発明2が認定されています。

甲12発明1 甲12発明2
 次の成分(A)、(B')を含み
(A)イタバスタチン(ピタバスタチンの従前名)、
(B')以下の群から選択される1種類以上の医薬賦形剤
(a)1種類以上のフィラー;(b)1種類以上のバインダー、(c)1種類以上の崩壊剤、(d)1種類以上、の滑沢剤または滑剤、(e)1種類以上の緩衝化要素、(f)1種類以上のアルカリ化要素、(g)1種類以上の界面活性剤および(h)着色剤、香味剤および吸着物質からなる群から選択される従来技術で知られている固形剤形のための他の成分
(D')ポリビニルアルコールおよびセルロース誘導体またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるフィルム形成物質、
を含有し、
含水量が、3重量%未満である固形医薬剤形が、パッケージの壁および蓋を介する酸素の透過性が制御される包装を用いてなる医薬品。
次の成分(A)及び(B):
(A)HMG-CoAレダクターゼ阻害剤であるアトルバスタチンCa;
(B)カルメロース(架橋カルボキシメチルセルロース)及び結晶セルロース(Prosolv SMCC90
);
を含有し、水分含量が2.73重量%、1.99重量%、1.55重量%又は1.73重量%である固形製剤が、気密包装体に収容してなる医薬品。
甲12の請求項1、25、27、29、32より 甲12の実施例8より

・甲12発明1を出発点とする進歩性判断
合議体は、イタバスタチンは、ピタバスタチンの従前名であるとして一致点として認めています。
相違点としては、①気密包装体への収容の有無、②本件発明1は、「(B)クロスポビドン;を含有し、(C)カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有せず」と特定している点、③本件発明1は水分含量が1.5~2.9質量%であり、甲12発明1は、「含水量が、前記医薬剤形全体の3重量%未満である」としている点、④ピタバスタチン又はその塩について、本件発明1は、「含有」するとしか特定されていないのに対し、甲12発明1は、「HMG-CoAレダクターゼ阻害剤」であるとされ、混合物である上記「コーティングされた粒子」及び/又は「コーティングされていない粒子」に含まれるものとされている点を挙げています。審決は、甲12発明1のコーティングは必須の構成ではなく任意成分と解されるため、コーティングの有無に関する相違点は実質的な相違点とはならず、また崩壊剤をクロスポビドンに限定しカルメロース・結晶セルロースを除外する点、水分含量を1.5~2.9質量%とする点はいずれも当業者が容易に想到し得た事項であると判断しました。なお、水分含量1.5~2.9質量%に係る相違点については、実施例においてアトルバスタチンCaを用いた例で水分含量2.73、1.99、1.55又は1.73質量%が開示されているため容易であるとされております。

無効審判事件での無効理由6(対比表 甲12発明1)

本件訂正発明1 甲12発明1
(WO2004/071403)
相違点に関して
次の成分(A)及び(B):
(A)ピタバスタチン又はその塩;

イタバスタチン ピタバスタチンの従前名
(B)クロスポビドン;
を含有し、
(C)カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有せず、かつ、

以下の群から選択される1種類以上の医薬賦形剤
(a)・・・(c)1種類以上の崩壊剤、・・・からなる群から選択される・・・他の成分
(D‘)ポリビニルアルコール・・・から選択されるフィルム形成物質、を含有し、
崩壊剤としてクロスポビドンを含有するものとすることは当業者が容易になし得た事項であり、カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有しないとすることは容易
水分含量が1.5~2.9質量%である
含水量が、3重量%未満である その含水量を、2.73, 1,99, 1.55又は1.73質量%程度(アトルバスタチンCaの実施例であるが、含水量が2.73、1.99、1.55又は1.73質量%の錠剤が記載)にするのは容易
固形製剤が、気密包装体に収容してなる
医薬剤形が、パッケージの壁および蓋を介する酸素の透過性が制御される包装を用いてなる 水分等の侵入を防ぎ、製剤の安定化を図るために、気密包装体に収容してなるものとすることは容易
医薬品。
医薬剤形

請求項2に追加された(D)フィルム形成剤(PVA・セルロース誘導体)の除外要件についても、甲12発明1のコーティングが必須構成ではないと解される以上、これを避ける限定を加えたところで進歩性を基礎付けないとされました。この結果、無効理由1・2とは対照的に、無効理由6には理由があるとされ、請求項1及び2に係る発明の特許は無効と結論づけられています。

・甲12発明2を出発点とする進歩性判断
合議体は、相違点として①(A)HMG-CoA還元酵素阻害活性を有する化合物について、本件発明1は、「(A)ピタバスタチン又はその塩」であるのに対し、甲12発明2は、「アトルバスタチンCa」である点、②本件発明1は、「(B)クロスポビドン;を含有し、(C)カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有せず」と特定するのに対し、甲12発明2は、「ラウリル硫酸ナトリウム、Prosolv SMCC90、アルファデンプン化されたコーンスターチ、架橋カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール」を含有する点、③本件発明1は、コーティングについて特定していないのに対し、甲12発明2は、コーティングされている点を挙げました。

相違点①に関して、甲12には、環境影響(pH・湿度・光・温度・酸素等)に敏感なHMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン類)の例として、アトルバスタチンとイタバスタチン(ピタバスタチン)が並べて挙げられており、このような活性物質を保護・安定化することが発明の目的として記載されており、また、実施例ではアトルバスタチンカルシウム錠について分解生成物(ラクトン及び酸化分解生成物)の増加を測定し、安定性を確認しています。加えて、他の証拠(甲3~8等)から、HMG-CoA還元酵素阻害剤の分解生成物(ラクトン体・酸化分解生成物)は、スタチン類に共通するジヒドロキシカルボン酸骨格に由来して生じることが、出願当時の技術常識であったとされました。なお、アトルバスタチンとピタバスタチンはいずれもこの共通骨格を有します。以上を踏まえ、甲12の実施例に具体的に記載されたアトルバスタチンカルシウムを、同じく甲12に記載され、共通骨格を持ち、同様に環境影響に敏感なスタチン類であるイタバスタチン(ピタバスタチン)に置き換えることは、当業者が容易になし得たことと認定されました。

相違点②に関して、甲12発明2において、崩壊剤としてクロスポビドンを含有するものとすることは当業者が容易になし得た事項であるとしました。

甲12発明2に含まれる「架橋カルボキシメチルセルロース」「カルボキシメチルセルロースナトリウム」「Prosolv SMCC90(結晶セルロース)」は、本件訂正発明1で除外される「カルメロース及びその塩」「結晶セルロース」に相当します。これらはフィルム形成剤又は医薬賦形剤の選択肢の一つに過ぎず、甲12にはこれら以外の物質も利用可能と記載されており、また、水分等から保護するフィルム形成剤としてポリビニルアルコールやカルメロース以外のセルロース誘導体を用いることも周知(甲5、甲6、甲20)であり、さらに、カルメロース・結晶セルロースを含まないピタバスタチン系固形製剤も周知(甲16、甲53)としました。

以上から、甲12発明2中のこれら3成分を、甲12に記載された他の成分や周知のセルロース誘導体に置き換えることで、カルメロース及びその塩・結晶セルロースをいずれも含有しない構成とすることは、当業者が容易になし得た事項と認定されました。

相違点③に関して、本件訂正発明1では、コーティングについて特定していないものの、本件明細書には、「【0039】本発明において、固形製剤は、第十六改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の方法にしたがって、種々の剤形にすることができる。・・・なお、これらの固形製剤は必要に応じてフィルム、糖衣等でコーティングされていてもよい。」と記載されており、本件訂正発明1の固形製剤はコーティングする態様を当然に含むと理解されるから、本件訂正発明1と甲12発明2は、この点では実質的に相違しないと認定されました。

<効果に関して>
発明の効果として、①ラクトン体生成が抑制され、②崩壊性に優れ、③5-ケト体の生成も抑制されることが記載されていることを指摘しました。

上記の①及び②に関して、甲12には、低湿度で、活性物質HMG-CoAレダクターゼ阻害剤がヒドロキシル酸形態からラクトン形態へと変換するのを防ぐこと等が記載され、崩壊剤を配合すれば崩壊性が優れることも自明であるとしました。

③の5-ケト体について、甲12に具体的な記載はないものの、酸化及び環境湿度に敏感な活性物質として、アトルバスタチン、イタバスタチンとともに例示されているロスバスタチンについて、甲4(特開2001-206877)には、「形成される主要な分解生成物は、相応する(3R、5S)ラクトン(以下では「ラクトン(the lactone)」と呼ぶ)およびその中で炭素-炭素の二重結合に隣接しているヒドロキシ基が酸化されてケトン官能基になっている酸化生成物(以下では「B2」と呼ぶ)である。」との記載があり、当該記載を参考にすると、甲12における酸化分解生成物とは、ピタバスタチンの場合には、ロスバスタチンと同様に、炭素-炭素の二重結合に隣接しているヒドロキシ基を有することから、当該ヒドロキシ基(5位ヒドロキシ基)が酸化された5-ケト体であることは当業者が容易に推認し得ることであるとし、当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するとはいえないとしました。

参考

ロスバスタチン イタバスタチン
(ピタバスタチンの従前名)

無効審判事件での無効理由6(対比表 甲12発明2)

本件訂正発明1 甲12発明2
(WO2004/071403)
相違点に関して
次の成分(A)及び(B):
(A)ピタバスタチン又はその塩;

アトルバスタチンCa 甲12に記載され、共通骨格を持ち、同様に環境影響に敏感なスタチン類であるイタバスタチン(ピタバスタチン)に置き換えることは容易
(B)クロスポビドン;
を含有し、
(C)カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有せず、かつ、

ラウリル硫酸ナトリウム、Prosolv SMCC90、アルファデンプン化されたコーンスターチ、架橋カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール 崩壊剤としてクロスポビドンを含有するものとすることは当業者が容易になし得た事項であり、カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有しないとすることは容易
水分含量が1.5~2.9質量%である
水分が2.73、1.99、1.55又は1.73%
固形製剤が、気密包装体に収容してなる
HDPEプラスチック瓶にパッケージ
医薬品。
医薬剤形

以上の理由により本件訂正発明1及び2を無効と判断しました。

損害賠償請求事件<東京地方裁判所>(本判決原審)

原告(A社)は、被告(B社)に対し、被告製品(ピタバスタチンCa・OD錠1mg「トーワ」、ピタバスタチンCa・OD錠2mg「トーワ」、ピタバスタチンCa・OD錠4mg「トーワ」)が特許第5190159号(本件特許)を侵害するとして、損害賠償を求めました。

A社は、被告製品が請求項6ないし9の記載の発明(以下、順に「本件発明6」ないし「本件発明9」)の技術的範囲に属するとして、損害賠償を請求しました。

本件では、乙12発明1(後述)、乙12発明2(後述)及び乙62発明のそれぞれに基づく進歩性欠如の無効理由等の争点が多数ありましたが、サポート要件違反の有無、訂正の再抗弁の正否、及び本件訂正により以下の無効理由が解消されたかについて判断しました。

サポート要件に関しては、前提知識で示した規範(前掲)に基づいて判断されました。

・本件各発明の課題及び解決手段について
裁判所は、「本件各発明は、ラクトン体の生成率を抑制した医薬品を提供することを課題とするものであり、本件各発明の固形製剤の水分含量を2.9質量%以下にすることが記載されている」と認定しました。
本件明細書の「発明が解決しようとする課題」、「課題を解決するための手段」、「発明の効果」には、5-ケト体の生成抑制について何らの記載もないことからすれば、5-ケト体の生成を抑制するという点は、本件各発明のすべての発明についての解決しようとする課題には当たらないと解するのが相当であるとし、水分含量を1.5質量%以上とする構成を加えることで、5-ケト体の生成の抑制に関する追加的な効果が奏されることを示すものにすぎないものといえるとしました。

・課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かについて
明細書の記載によれば、処方例1に基づき製造された口腔内崩壊型錠剤については、固形製剤の水分含量を2.9質量%以下にすることによって、ラクトン体の生成を相当量に抑制することができ、本件各発明の課題が解決されたことが記載されているといえるとしました。
本件各発明は、(A)ピタバスタチン又はその塩、(B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上からなる固形製剤であり、結晶セルロースを含まない構成を包含する固形製剤であるとしました。

「本件明細書の表2の処方例1の成分及び分量として、結晶セルロースが処方例1の口腔内崩壊型錠剤120mg中に45.0mg含まれているところ、結晶セルロースについては、一般的に主薬の化学的変化を抑制する安定化剤としての効果があることは周知技術といえること(前記2⑵ないし⑻)、乙1公報にはスタチン系製剤(HMG-CoAレダクターゼ阻害剤)の安定性に結晶セルロースが寄与することが開示されていること(前記2⑴)、処方例1の口腔内崩壊型錠剤に含まれている結晶セルロースの分量は上記安定性を発揮するには十分なものといえることに照らせば、処方例1に基づき製造された口腔内崩壊型錠剤に含有する結晶セルロースがピタバスタチンカルシウムの安定性に寄与した可能性があるというべきである。」

加えて、①本件明細書には、本件各発明の固形製剤の水分含量を2.9質量%以下にすることによって、ラクトン体の生成が抑制される具体的な作用機序についての記載はないこと、②表2の処方例1に基づき製造された口腔内崩壊型錠剤以外の構成について、固形製剤の水分含量を2.9質量%以下にすることによって、ラクトン体の生成率がどのようになるか示した実施例の記載もないこと、③処方例1に基づき製造された口腔内崩壊型錠剤の結晶セルロースを除いた構成によってラクトン体の生成率を抑制した医薬品を提供することができるとの技術常識もないことを指摘しました。

これらの理由から、サポート要件違反を認定しています。

なお、訂正発明については、いずれも結晶セルロースを任意成分とするものであるから、同様にサポート要件違反があるとしています。

本判決の判断

争点の概要

原告は、請求項7及び8に係る請求を取り下げ、請求項6及び9に基づいて損害賠償請求を行いました。

本件争点は、サポート要件違反の有無、実施可能要件違反の有無、乙12発明1、乙12発明2及び乙62のそれぞれによる進歩性欠如などがありましたが、裁判所は、乙12発明2(以下、単に「乙12発明」)による進歩性欠如について取り上げました。(なお、裁判所が取り上げた「乙12」は、第1無効審判における「甲12」と同一の証拠であり、「乙12発明2」と、「甲12発明2」も同一です。)

争点: 本件発明6及び9の進歩性

本件発明6との相違点として下記の点を認定しました。

(相違点1)
HMG-CoAレダクターゼ阻害剤である化合物について、本件発明6は、「ピタバスタチン又はその塩」であるのに対し、乙12発明は、「アトルバスタチンCa」である点

<置換容易性>
アトルバスタチンCaとピタバスタチンはいずれもスタチン類で薬効及びラクトン体生成・抑制機序が共通するため、乙12発明のアトルバスタチンCaをピタバスタチンに置換することは、当業者が適宜なし得たことと認められるとしました。

<本件発明6の効果に関して(水分含量の下限値なし)>
本件発明6の効果として、ラクトン体の生成を抑制すること、崩壊性に優れることとについて判断しました。
ラクトン体の生成抑制に関して、乙12公報(実施例8)にも、水分含量を抑えた錠剤において本件相関関係が認められる旨の記載があるとし、本件明細書の記載(試験例1及び2)は、水分含量を2.9重量%以下とすることによって初めて本件相関関係が認められることを示すものではないとしました。
崩壊性に関して、「カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上」崩壊性に優れることは、自明としています。
本件発明9についても上記の相違点(1)のみを有し、相違点に係る容易性についても同様に判断しました。

争点: 本件訂正発明6及び9の進歩性

本件訂正発明6及び9は以下のとおりです。

本件訂正発明6 本件訂正発明9
次の成分(A)及び(B):
(A)ピタバスタチン又はその塩;
(B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロース
よりなる群から選ばれる1種以上;
を含有し、かつ、
(C)水分含量が1.5~2.9質量%である固形製剤であって、かつ、錠剤であって、気密包装体に収容される固形製剤(但し、固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤、及び、アルカリ化物質を含まない固形製剤を除く)。
次の成分(A)及び(B):
(A)ピタバスタチン又はその塩;
(B)クロスポビドン;
を含有し、
(C)カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有せず、かつ、水分含量が1.5~2.9質量%である固形製剤であって、かつ、錠剤であって、気密包装体に収容される固形製剤(但し、固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤を除く)。

本件訂正発明6と乙12発明との相違点に関し、上記の本件発明6における相違点(1)に加えて、以下の相違点(2)及び相違点(3)を認定しました。

(相違点2)
本件訂正発明6は、固形製剤がコーティングされていることは特定されておらず、固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤を除くものであるのに対し、乙12発明は、固形製剤がカルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール及び水からなる分散物でコーティングされている点
(相違点3)
本件訂正発明6は、アルカリ化物質を含まない固形製剤を除くものであるのに対し、乙12発明は、そのような固形製剤を除くものではない点

相違点2に関し、乙12発明の「コーティング」の材料として、「カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール及び水からなる分散物」に代え、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE等の「ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体」を含まない周知のものを採用することは、乙12公報に接した本件出願日当時の当業者において適宜なし得たことであると認めるのが相当であるとしました。
相違点3に関し、乙12発明において「アルカリ化物質」を含む固形製剤とすることは、本件出願日当時の当業者が容易になし得たことであると認めるのが相当であるとしました。

<本件訂正発明6の効果に関して(水分含量の下限値あり)>
本件訂正発明6の効果として、①気密保存可能な包装体により、包装体の内部の固形製剤の水分含量が安定的に保たれることでラクトン体の生成が抑制され、②水分含量が1.5質量%以上の場合、5-ケト体の生成も抑制されることを挙げました。
上記①の気密保存可能な包装体によるラクトン体の生成抑制について、乙12には、異なる乾燥剤を用いたパッケージ(HDPEプラスチック瓶)の中のコーティングされた錠剤を試験した結果、乾燥剤を加えた錠剤では、水分率が低いことに起因して、錠剤中のラクトンの生成が抑制された旨の記載があることなどを根拠に、本件出願日当時の当業者が予測し得た範囲内のものにすぎないというべきであり、これが格別顕著なものであるということはできないとしました。
上記②の5-ケト体の生成を抑制するとの効果について、乙4(特開2001-206877)及び乙7(特開平5-246844)の記載から、「ピタバスタチンのように炭素-炭素の二重結合に隣接するヒドロキシ基を有するスタチン類において、当該二重結合に隣接するヒドロキシ基の酸化等により分解物である5-ケト体が生成されることが本件出願日当時に知られていたものと認められる。」としました。
さらに、本件明細書(段落【0068】以下の試験例3)には、PTP包装及びアルミピロー包装を施した口腔内崩壊型錠剤(水分含量・1.5~2.9質量%)について、調製直後に0.13~0.14%であった5-ケト体の生成率が、40℃、75%相対湿度の条件下で2か月間保存した結果、0.14~0.18%となった旨の記載があるとしました。
PTP包装及びアルミピロー包装を施した口腔内崩壊型錠剤については、ピタバスタチン又はその塩が存在する錠剤の内部と、ピタバスタチン又はその塩に影響を与えて5-ケト体を生成させる外部の環境(酸素、光等)との接触が遮断され、又は抑制されるものであること等から、当該接触の遮断又は抑制により、5-ケト体の生成が低く抑えられることは、本件出願日当時の当業者が知られていた技術的事項に基づいて予測することのできる範囲内のものであって、これが格別顕著なものであるということはできないとしました。

損害賠償請求事件での進歩性欠如(対比表 乙12発明2)

本件訂正発明6 乙12発明2
(WO2004/071403)
相違点に関して
次の成分(A)及び(B):
(A)ピタバスタチン又はその塩;

アトルバスタチンCa 甲12に記載のピタバスタチンに置き換えることは容易
(B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上;
を含有し、かつ、

カルボキシメチルセルロース、クロスカルメロース、Prosolv SMCC90(結晶性セルロース)
(C)水分含量が1.5~2.9質量%である固形製剤であって、かつ、錠剤であって、
水分含量が2.73、1.99、1.55又は1.73%の錠剤
気密包装体に収容される固形製剤。
HDPEプラスチック瓶に収容される固形製剤
但し、固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤、及び、アルカリ化物質を含まない固形製剤を除く
・固形製剤がカルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール及び水からなる分散物でコーティングされている
・アルカリ化物質を“含む”ものではない
・乙12に記載のアミノアルキルメタアクリレートコポリマーE等の「ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体」を含まない周知のものを採用する
・乙12に記載のアルカリ物質を含むものにすることは容易である

なお、本件訂正発明9についても乙12発明に基づく本件発明9の進歩性欠如が解消されたということはできないとしました。

コメント

進歩性に関して

進歩性欠如に関して、各手続きにおける判断をまとめました。

手続 主引用文献 主な相違点 進歩性欠如の判断
差止請求事件
(地裁)
乙7(JP4981194) ①気密包装体の有無
②水分含量1.5〜2.9%(特に下限1.5%)
認められず(有効)
①は容易想到だが②(特に下限値)への動機付けなし
差止請求事件
(高裁)
同上 同上 認められず(有効)
5-ケト体抑制効果の技術的意義を認め、下限値の容易想到性を否定
無効審判 甲1
(WO2004/071402)
①有効成分
②崩壊剤
(結晶セルロース除外)
③コーティングの有無
認められず(有効)
②甲1の実施例は結晶セルロース(ProSolv)を安定化必須成分として使用、除外は容易でない
無効審判 甲8
(JP2010-533210)
①有効成分
②甲8が更に「低水分トウモロコシデンプン」等を含有する(実質的相違点でない)
③水分含量1.5~2.9%
④気密包装体の有無
認められず(有効)
水分含量と分解物生成の相関関係が甲8に見出せず、下限値への動機付けなし
無効審判 甲12
(WO2004/071403)
発明1
①気密包装体の有無
②崩壊剤
(クロスポビドン限定・結晶セルロース除外)
③水分含量1.5〜2.9%
認められた(無効)
・水分含量は実施例に記載(2.73, 1,99, 1.55又は1.73%)
・甲12は崩壊剤・コーティングを選択的な構成として記載しており、除外は容易想到
無効審判 甲12
(WO2004/071403)
発明2
①有効成分
②崩壊剤
③コーティング材料を含まない
認められた(無効)
・有効成分は置き換え可能(甲12に例示)
・甲12は崩壊剤・コーティングを選択的な構成として記載しており、除外は容易想到
損害賠償請求事件(高裁) 乙12
(WO2004/071403)
発明2
①有効成分
②崩壊剤(ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体を除く)
③アルカリ化物質を含む
認められた(無効)
・有効成分は置き換え可能(乙12に例示)
・乙12は崩壊剤・コーティングを選択的な構成として記載しており、除外は容易想到

差止請求事件では、東京地裁及び知財高裁は、B社の提示した証拠乙7に対して本件特許の進歩性欠如はないと判断しました。これに対して、後の損害賠償請求事件の知財高裁の判断においては進歩性欠如のため無効と判断されました。サポート要件、進歩性欠如について争点となっている中、知財高裁は、乙12(特に乙12発明2(実施例8))を主引例とした進歩性について判断し、本件特許が進歩性欠如により無効であると判断しました。

・本件発明の特徴的な構成要件を開示した文献を主引例に

以下、進歩性欠如の主張が認められなかった乙7(特許第4981194号)と進歩性欠如の主張が認められた乙12(国際公開第2004/071403号)とを比較検討します。

乙7は、有効成分や崩壊剤の種類において共通するものの、気密包装体や、固形製剤中の水分含量が開示されていませんでした。つまり、本件発明の特徴部分に関する開示がありませんでした。また、当該相違点に基づく効果として、ラクトン体の生成抑制及び5-ケト体の生成抑制が認められ、特に水分含量の下限値1.5質量%以上とする構成に関連する5-ケト体の生成抑制効果が得られることについて自明であることが十分に示されていない点で進歩性欠如の無効理由が認められなかったと考えられます。

一方、乙12に関して、特にその明細書内で開示された乙12発明2(実施例8)は、水分含量2.73、1.99、1.55又は1.73質量%を開示していました。この点で本件発明が特徴とする固形製剤中の水分含量1.5~2.9質量%が相違点とされていません。

知財高裁は、発明の効果に関しても認定していますが、ラクトン体の生成抑制については乙12の開示内で示されていました。加えて、5-ケト体の生成が予想されることを示す文献(乙4(特開2001-206877)及び乙7(特開平5-246844))について触れ、気密包装体による外部の環境(酸素、光等)との接触が遮断又は抑制されることで5-ケト体の生成が低く抑えられることは、予測することができたとしています。

差止請求事件において知財高裁は、5-ケト体の生成抑制と水分含量の相関関係に着目し、その相関関係に基づいて、さらに、製剤においても水分含量の下限値を調整することを示唆するものが示されていないことを理由に進歩性欠如はないとしましたが、本件発明が固形製剤中の水分含量1.5~2.9質量%であることが相違点として認定されている前提の下で当該判断がなされていると考えられます。水分含量について相違点として認められていないため、特定の水分含有量における5-ケト体の生成抑制の効果が予測できたことの立証を求められず、上記のように気密包装体による外部との接触の遮断又は抑制による5-ケト体の生成抑制の効果の予測性について証明する証拠で進歩性欠如が認められたものと考えられます。

・5-ケト体の生成抑制の効果の予測を示す証拠

5-ケト体の生成抑制を示す証拠ですが、乙4(特開2001-206877)及び乙7(特開平5-246844)の記載から、「ピタバスタチンのように炭素-炭素の二重結合に隣接するヒドロキシ基を有するスタチン類において、当該二重結合に隣接するヒドロキシ基の酸化等により分解物である5-ケト体が生成されることが本件出願日当時に知られていたものと認められる。」としました。ここでは、乙4における「形成される主要な分解生成物は、相応する(3R,5S)ラクトン(以下では「ラクトン(the lactone)」と呼ぶ)およびその中で炭素−炭素の二重結合に隣接しているヒドロキシ基が酸化されてケトン官能基になっている酸化生成物(以下では「B2」と呼ぶ)である。」(乙4【0003】)とする記載を引用しています。また乙7では「フルバスタチン及び関連HMG−CoAリダクターゼ化合物の上述した不安定性は、ヘプテン鎖上のβ,δ−ヒドロキシ基が非常に動きやすいこと及び二重結合が存在することによると思われる。即ち中性〜酸性pHにおいてこの化合物は脱離又は異性化又は酸化反応を容易に受けて共役不飽和芳香族化合物、並びにトレオ異性体、対応するラクトン、及び他の分解生成物を生成する。」(乙7【0005】)とする記載を引用しています。つまり、ピタバスタチンそのものが分解され5-ケト体を生成するとの記述ではなく、「炭素-炭素の二重結合に隣接するヒドロキシ基を有するスタチン類」とする化学構造の共通する構成に関してケト体が生成することについて記載された文献から効果の予測ができるとするものです。

・主引例が有効成分で相違する点について

上述のとおり、損害賠償請求事件において進歩性欠如が認められた理由として本件発明の特徴部分の構成要件が示された文献を提示できたことが挙げられます。しかしながら、本件発明と乙12発明2とは、①有効成分、②コーティング材料、及びアルカリ化物質を含まないことなどで相違点がありました。有効成分に関して本件発明と乙12発明2は、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤であり上位概念で共通しているものの、本件発明は「ピタバスタチン又はその塩」であるのに対し、乙12発明2は「アトルバスタチンCa」である点で相違していました。しかしながら乙12は、スタチン類(HMG-CoAレダクターゼ阻害剤)の例示として、ピタバスタチン(ここでは従来名の「イタバスタチン」として記載)が挙げられていたことから、当該変更は当業者が適宜なし得たと判断しています。
ただし、いくつかの文献では、有効成分の相違について変更の動機づけが無いとされたものもあります。無効審判の認定ではありますが、甲8(特表2010-533210)を主引例とすると、有効成分に相違点が認められます。甲8は、有効成分がフルバスタチンナトリウムであり、本件のピタバスタチンに置き換える動機づけが無いと判断されました。甲8の中に、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤としてピタバスタチンの記載が無いことが理由として挙げられています。

サポート要件に関して

損害賠償請求事件において東京地裁は、本件特許をサポート要件違反により無効と判断しています。(なお、知財高裁はサポート要件に係る争点について判断を示していません。)
本件発明は、有効成分である「ピタバスタチン又はその塩」について、「カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上」の崩壊剤が存在することでラクトン体の生成が促進されるところ、水分含量を2.9質量%以下にすることでラクトン体の生成を抑制できたとするものです。
これに対して、本件明細書で実際に水分含量の変更によるラクトン体生成抑制が確認されているのは処方例1に示される一例のみでした。東京地裁は、結晶セルロースが処方例1の口腔内崩壊型錠剤120mg中に45.0mg含まれていることを指摘し、結晶セルロースの主薬の化学的変化を抑制する安定化剤としての効果や、本件明細書にラクトン体の生成が抑制される具体的な作用機序についての記載はないことなどを指摘してサポート要件違反と認定しました。
数値限定発明では、実施例で示された実験データに基づいて数値範囲が特定されますが、前提となる条件が異なれば、特定の閾値も変化する可能性は高く、本件特許においても処方例1においては水分含量1.5~2.9質量%の数値範囲となったかもしれませんが、他の処方例では別の数値範囲となっていた可能性もあります。数値限定発明において特定数値範囲を決めるにあたり特定の組成で行った実験結果にのみ依拠していることもあり、前提となる組成について広く一般的に特定の数値範囲となるかという視点でサポート要件違反を検討すると、対象となる特許が無効理由を有しているといえる可能性もあります。

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(文責・山下)