商標の審査・審判における判断の傾向は時代により変化しますので、その傾向を把握するためには審決や異議の決定を継続的にチェックする必要があります。商標審決アップデートでは、定期的に注目すべき商標審決をピックアップし、情報提供していきます。

今回は、商品の一般名称とその他の文字を組み合わせた結合商標の類否に関する審決を中心に取り上げております。

不服2018-5888(なのはなポーク/結合商標の類否)

審決分類

商標法第4条第1項第11号(同一又は類似)

商標及び指定商品・役務

本願商標:なのはなポーク(標準文字)
指定商品:第29類「豚肉,豚肉製品」

引用商標:
指定商品:第29類「食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,豆,食用たんぱく」

結論

原査定を取り消す。本願商標は、登録すべきものとする。

本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は、取消しを免れない。

審決等の要点

本願商標は、「なのはなポーク」の文字からなるところ、その構成文字は、同書、同大、等間隔で、まとまりよく一体に表され、該文字から生じる「ナノハナポーク」の称呼も、格別冗長というべきものでなく、無理なく一連に称呼し得るものである。

そして、本願商標の構成中の「ポーク」の文字が「豚肉」の意味を有するものであるとしても、本願商標の上記構成及び称呼を併せ考慮すれば、これに接する取引者、需要者は、殊更、「なのはな」の文字部分のみに着目することはなく、本願商標の構成全体をもって把握するというのが相当である。

したがって、本願商標の構成中「なのはな」の文字部分を分離抽出し、これを前提に、本願商標と引用商標とが類似するとして、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は、取消しを免れない。

コメント

「ポーク」の文字は「豚肉」を意味しますので、指定商品「豚肉」との関係では識別力を有しないか、極めて弱いものといえますが、審決では、本願商標は構成全体をもって把握されるため引用商標とは非類似であると判断されております。なお、本件の類似事案として、本願商標「まごころ豚」(指定商品:第29類「豚肉」等)と引用商標「まごころ」が非類似と判断され審決例があります(不服2018-3896)。

不服2018-8300(SHINSEI CORPORATION/結合商標の類否)

審決分類

商標法第4条第1項第11号(同一又は類似)

商標及び指定商品・役務

本願商標:
指定商品:第9類「ネットワーク用ルーター,無線ルータ?,スマートフォン,スマートフォンに取り付ける電波受信用アンテナ,スマートフォン用のカバー,スマートフォン用のケース,スマートフォン用保護フィルム,自撮り棒(手持ち用一脚),双方向タッチスクリーン端末機,腕時計型携帯情報端末,眼鏡型携帯情報端末,指輪型携帯情報端末,タブレット型携帯情報端末,光学式記録媒体,未記録の磁気記録媒体,SIMカード(未記録のもの),電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,電子出版物,カメラ,カメラモジュール,虹彩認証装置用カメラモジュール,虹彩認証のためのアルゴリズムを含むコンピュータソフトウェア,光学機械器具」

引用商標1:

指定商品:第9類「オゾン発生器,電解槽,理化学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電気磁気測定器,電気通信機械器具」、第10類「医療用機械器具」及び第11類「暖冷房装置,冷凍機械器具,業務用加熱調理機械器具,業務用食器乾燥機,業務用食器消毒器,電球類及び照明用器具,家庭用電熱用品類(美容用又は衛生用のものを除く。),アイスボックス,氷冷蔵庫,家庭用浄水器」

引用商標2:

指定商品:第9類「インクジェットプリンター,サーマルプリンター,バーコードプリンター,その他の電子応用機械器具(「ガイガー計数器・高周波ミシン・サイクロトロン・産業用X線機械器具・産業用ベータートロン・磁気探鉱機・磁気探知機・地震探鉱機械器具・水中聴音機械器具・超音波応用測深器・超音波応用探傷器・超音波応用探知機・電子応用扉自動開閉装置・電子顕微鏡」を除く。)及びその部品」等

結論

本件審判の請求は、成り立たない。

本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録することができない。

審決等の要点

本願商標の文字部分は、「SHINSEI」及び「CORPORATION」の文字からなるところ、「SHINSEI」の文字は、辞書等に掲載されている語ではなく、特定の観念を生じるとはいえないものであり、「CORPORATION」の文字は、「法人、株式会社」等の会社の種類を表す語として広く使用されており、さらに、「SHINSEI」の文字がやや太く表されていることからすれば、「SHINSEI」の文字部分が自他商品の識別標識としての機能を果たし得る要部として認識され、当該文字部分のみに着目し、その文字部分から生ずる称呼及び観念をもって取引に資する場合も決して少なくないというべきである。してみれば、本願商標は、その構成中の「SHINSEI」の文字部分を要部として抽出し、引用商標と比較して、商標の類否を判断することができるものである。したがって、本願商標は、全体から生じる称呼のほか、その構成中の「SHINSEI」の文字部分に相応して「シンセイ」の称呼をも生じ、特定の観念を生じないものである。

引用商標1は、「SHINSEI」の欧文字を横書きしてなり、引用商標2は、青色で「Shinsei」の欧文字を横書きしてなるところ、該文字は、一般的な辞書に掲載がなく、特定の意味合いを有する語として知られているとも認められないものであるから、特定の観念を生じることのない一種の造語を表したものと理解されるものである。したがって、引用商標は、該文字に相応して、「シンセイ」の称呼が生じ、特定の観念を生じないものである。

本願商標と引用商標とを比較すると、外観においては、それぞれ上記のとおりの構成からなるところ、その全体の構成においては、両者は差異を有するものであるが、本願商標の要部である「SHINSEI」の文字部分と引用商標とを比較すると、これらは、書体、色の相違及び大文字と小文字の差異はあるものの、そのつづりを共通にするものであるから、外観上、近似するものである。次に、称呼においては、両者は、「シンセイ」の称呼を同一にするものである。そして、観念においては、両者は特定の観念を生じないものであるから、観念上、比較することができないものである。そうすると、本願商標と引用商標とは、観念において比較できず、全体の外観において相違するものの、本願商標の要部である「SHINSEI」の欧文字部分と引用商標とは、外観上、近似するものであって、「シンセイ」の称呼を同一にするものであるから、これらを総合的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのある類似の商標と判断するのが相当である。

以上によれば、本願商標と引用商標とは、類似の商標であって、かつ、その指定商品も同一又は類似の商品であるから、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。

コメント

本件の類似事例として、本願商標「」と引用商標「」が類似すると判断した審決例があります(不服2010-14398)。当該審決においても、「CORPORATION」の文字部分は「法人、株式会社」の意味を表すものとして一般に使用されているものであるため、「oyodo」の文字部分が独立して自他役務識別標識としての機能を果たし得ると判断されております。

不服2018-580(マントクラーメン/結合商標の類否)

審決分類

商標法第4条第1項第11号(同一又は類似)

商標及び指定商品・役務

本願商標:
指定役務:第43類「ラーメンを主とする飲食物の提供」

引用商標:
指定役務:第42類「飲食物の提供」

結論

本件審判の請求は、成り立たない。

本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録することができない。

審決等の要点

本願商標は、「マントクラーメン」の文字を太字で横書きした構成からなるところ、構成中の「ラーメン」の文字は、「中華そば」(「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)を意味する語として広く親しまれた語であり、本願の指定役務との関係においては、提供される料理の名称と理解されるものであるから、本願商標に接する取引者、需要者をして、提供する料理を表したもの、すなわち役務の質を表示したものと認識させるにとどまり、当該文字部分は、役務の出所識別標識としての機能を有しないか、又は極めて弱いものといえる。そうすると、本願商標は、その構成中「マントク」の文字部分が取引者、需要者に対し役務の出所識別標識として強く印象付けられるものということができる。してみれば、本願商標は、その構成中「マントク」の文字部分を抽出し、他人の商標と比較することが許されるものであり、当該文字部分が独立して、役務の出所識別標識としての機能を果たし得るものというべきである。

したがって、本願商標は、その構成文字全体から「マントクラーメン」の称呼を生じるほか、その構成中「マントク」の文字部分から「マントク」の称呼を生じ、かつ「マントク」の称呼を生じる唯一の既成語である「万徳(多くの徳行)」(「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)の観念を生じるものというべきである。

引用商標は、「万」及び「徳」の漢字を、その漢字2文字分ほどの間隔を空けて配し、それぞれの漢字の上段に、「まん」及び「とく」の文字を、振り仮名のように配した構成からなるところ、その構成文字に相応して、「マントク」の称呼及び「万徳(多くの徳行)」の観念を生じるものである。

本願商標と引用商標との類否について検討すると、両商標は、外観においては、その全体の構成において差異を有するものである。次に、称呼においては、両商標からは、共に「マントク」の称呼が生じるものであるから、称呼上、同一である。そして、観念においては、両商標からは、共に「万徳(多くの徳行)」の観念が生じるものであるから、観念上、同一である。

そうすると、本願商標と引用商標とは、外観において相違するとしても、称呼及び観念を同一にするものであるから、外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して、全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。

コメント

本件審決では、本願商標は、その構成中「ラーメン」の文字が役務の出所識別標識としての機能を有しないか、又は極めて弱いものといえるため、引用商標とは類似すると判断されております。同じく「ラーメン」の文字の有無の差異を有する結合商標に関する以下の事案でも、同様の判断となっております(≒は類似を表す記号)。

・不服2004-018273:本願商標「」 ≒  引用商標「

不服2018-3994(虎菓子/結合商標の類否)

審決分類

商標法第4条第1項第11号(同一又は類似)

商標及び指定商品・役務

本件商標:虎菓子
指定商品:第30類「洋菓子及びパン」

引用商標1:
指定商品:第30類「菓子,パン」

引用商標2:
指定商品:第30類「茶,コーヒー及びココア,菓子及びパン,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,即席菓子のもと」

結論

本件審判の請求は、成り立たない。

本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録することができない。

審決等の要点

本願商標は、「虎菓子」の文字を標準文字で表してなるものであるところ、本願商標の構成中、「虎」の文字は「ネコ科の哺乳類。」等の意味を有し、「菓子」の文字は「常食のほかに食する嗜好品。和菓子と洋菓子とに大別。」等の意味を有する語(株式会社岩波書店「広辞苑第六版」)として、それぞれ広く一般に親しまれた語である。そして、本願商標の構成中「菓子」の文字部分は、その指定商品中の「洋菓子」との関係では、該指定商品を含む「菓子」の普通名称であって、商品の出所識別標識としての機能は有しないものとするのが相当である。さらに、本願商標の構成文字全体として、なんらかの特定の熟語的意味合いを形成する等、「虎」及び「菓子」の文字を常に一体不可分のものとしてのみ観察されなければならないとすべき特段の事情は認められない。してみると、本願商標は、その構成中、「虎」の文字部分が、取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識として強い印象を与えるものというべきであるから、本願商標は、その構成中の「虎」の文字部分を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することができるものである。

そうすると、本願商標は、その構成全体より生ずる「トラガシ」の称呼のほか、「虎」の文字部分に相応した「トラ」の称呼を生じ、「虎(ネコ科の哺乳類)」の観念を生じるものである。

引用商標1は、「虎」の文字を書してなり、また、引用商標2は、図案化してあるものの「虎」の漢字を表したものと容易に認識し得るものであるから、引用商標は、共に「トラ」の称呼を生じるものであって、この点は請求人も認めているところである。そして、観念については、引用商標の構成文字より、「虎(ネコ科の哺乳類)」の観念を生じるものである。

本願商標と引用商標とは、その構成全体をもって比較するときは、構成文字が異なり互いに類似するとはいえないものの、本願商標の構成中、自他商品の識別標識としての機能を有する要部である「虎」の文字部分と引用商標とを比較すると、本願商標と引用商標1とは同じ文字からなるものであるから、外観において類似し、「トラ」の称呼及び、「虎(ネコ科の哺乳類)」の観念において同一であるまた、本願商標と引用商標2とは、外観において近似した印象を与え、「トラ」の称呼及び、「虎(ネコ科の哺乳類)」の観念を同一とするものである。

そうすると、本願商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念を総合的に勘案すれば、互いに相紛れるおそれのある類似の商標といわざるを得ない。

コメント

本件審決では、本願商標の構成文字全体として、なんらかの特定の熟語的意味合いを形成する等、「虎」及び「菓子」の文字を常に一体不可分のものとしてのみ観察されなければならないとすべき特段の事情は認められないことを理由の一つとして、「虎」の文字部分が要部になると判断されております。一方、以下の事案では、全体として「なごやかにする菓子」のような意味合いを連想させるため、一体不可分に理解されると判断されております(≠は非類似を表す記号)。

・不服2015-009630:本願商標「」 ≠ 引用商標「

不服2018-9075(The Core of Satisfaction “TRUST”/結合商標の類否)

審決分類

商標法第4条第1項第11号(同一又は類似)

商標及び指定商品・役務

本願商標:
指定商品:第12類「自動車並びにその部品及び附属品,陸上の乗物用の機械要素,陸上の乗物用の交流電動機又は直流電動機(その部品を除く。),二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び付属品,陸上の乗物用の動力機械(その部品を除く。),乗物用盗難警報器」等

引用商標:
指定商品:第12類「船舶並びにその部品及び付属品(「エアクッション艇」を除く。),航空機並びにその部品及び付属品,鉄道車両並びにその部品及び付属品,自動車並びにその部品及び付属品,二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び付属品,乳母車,人力車,そり,手押し車,荷車,馬車,リヤカー,タイヤ又はチューブの修繕用ゴムはり付け片,エアクッション艇」
※引用商標は複数ありますが、一部省略させていただきます。

結論

原査定を取り消す。本願商標は、登録すべきものとする。

本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。

審決等の要点

本願商標は、「The Core of Satisfaction “TRUST”」の文字からなるところ、構成各文字は、いずれも同じ書体、同じ大きさで、等間隔に、視覚上まとまりよく一体的なフレーズとして表されており、これから生ずる「ザコアオブサティスファクショントラスト」の称呼も、やや冗長ではあるものの、よどみなく一連に称呼し得るものである。

そして、本願商標を構成する「Core」、「Satisfaction」及び「TRUST」の各文字は、それぞれ「中核、中心」、「満足」、「信頼」等の意味を有する平易な英語として理解されるものであり、また、「The」及び「of」の各文字は、それぞれ英語の定冠詞及び前置詞として、「“」及び「”」の記号は、引用符を意味する記号としていずれも知られているものであるから、本願商標全体からは、「『信頼』満足の中心」程の意味合いが理解されるものである。

そうすると、本願商標は、その構成全体をもって一体不可分の造語として認識され把握されるとみるのが自然であるから、その構成文字に相応して、「ザコアオブサティスファクショントラスト」の一連の称呼のみを生じるものであって、「『信頼』満足の中心」の観念を生じるものである。

したがって、本願商標から「トラスト」の称呼及び「信頼」の観念を生じるものとし、その上で、本願商標と引用商標とが、外観、称呼及び観念において類似するものとして、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は、取消しを免れない。

コメント

本願商標は冗長な構成よりなり、また、「TRUST」の文字がクォーテーションマーク(“”)で囲まれた態様であるため、引用商標に類似すると判断され、拒絶査定に至ったものと思われますが、本件審決では、全体から「『信頼』満足の中心」の観念が生じる一体不可分の造語と認識され、引用商標とは非類似であると判断されております。

不服2018-7653(エブリディパンツ/結合商標の類否)

審決分類

商標法第4条第1項第11号(同一又は類似)

商標及び指定商品・役務

本願商標:
指定商品:第25類「下着,パンツ」

引用商標:
指定商品:第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」

結論

原査定を取り消す。本願商標は、登録すべきものとする。

本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は、取消しを免れない。

審決等の要点

本願商標は、同じ書体、同じ大きさをもって、外観上まとまりよく一体的に表されている。そして、「Everyday」及び「エブリディ」の語は、「毎日の、日々の、日常の、ありふれた」の意味を有する親しまれた英語及びその表音を表したものであり(株式会社大修館書店 ベーシックジーニアス英和辞典)、「Pants」及び「パンツ」は、「運動する時などにはく短いズボン。スボン風の下ばき。」の意味を有する親しまれた英語及び外来語であるから(株式会社岩波書店 広辞苑第7版)、本願商標からは「エブリディパンツ」の称呼が生じるものと認められ、格別冗長でもなく、よどみなく一連に称呼できる。

本願商標の指定商品は、第25類「下着、パンツ」であるから、これらの取引者・需要者においては、本願商標中の「パンツ」及び「Pants」の文字が、前記の意味を有し、かつ、当該指定商品を指称する語であると理解するのは容易であって、当該文字は、当該指定商品との関係では、自他商品識別力を有しない語であると考えられるが、他方で、「エブリディ」(エブリデー)及び「Everyday」の語は、例えば、「エブリデー・ウェア(everyday wear)」及び「エブリデー・クローズ(everyday clothes)」(いずれも「ふだん着」を意味する。株式会社三省堂 コンサイスカタカナ語辞典)などのように、後ろに他の語を伴って前記の意味合いで複合語を形成することも一般に広く知られているものといえるから、本願商標中の「エブリディ」及び「Everyday」の文字部分は、本願商標の外観構成も併せ考慮すれば、「パンツ」及び「Pants」の語を修飾するような意味合いを暗示させるものである。

そうすると、本願商標は、全体として「毎日のパンツ」程の観念を生じるものであって、「エブリディ」及び「Everyday」の文字部分も上記指定商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであるとまでは認めることができない。以上よりすると、本願商標は、その構成中の「エブリディ」及び「Everyday」の文字部分だけを引用商標と比較して、本願商標と引用商標の類否を判断することは許されないというべきである。

したがって、本願商標は、「エブリディパンツ」の称呼及び「毎日のパンツ」程の観念が生じる一連一体の商標とみるのが相当であるから、本願商標の構成中「Everyday」及び「エブリディ」の文字部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとして分離、抽出した上で、本願商標と引用商標が類似する商標であるとして、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は、取消しを免れない。

コメント

本件では、本願商標は全体として「毎日のパンツ」の観念が生じる一連一体の商標とみるのが相当であるとして、引用商標とは非類似と判断されておりますが、同様に「パンツ」の文字を含む結合商標に関する以下の事案では類似と判断されております(≒は類似を表す記号)。

・不服2013-12165:本願商標「エアパンツ」 ≒ 引用商標「
・審判1996-16450:本願商標「ジオパンツ」 ≒ 引用商標「

不服2017-17267(CAT/結合商標の類否)

審決分類

商標法第4条第1項第11号(同一又は類似)

商標及び指定商品・役務

本件商標:
指定商品:第1類「工業用化学品,科学用化学剤(医療用及び獣医科用のものを除く。),写真用化学剤,農薬(殺菌剤、除草剤、殺虫剤及び寄生生物駆除剤を除く。),園芸用農薬(殺菌剤、除草剤、殺虫剤及び寄生生物駆除剤を除く。),林業用農薬(殺菌剤、除草剤、殺虫剤及び寄生生物駆除剤を除く。),未加工人造樹脂,未加工プラスチック,肥料,消火剤,焼戻し剤及びはんだ付け剤,食品保存用化学剤,なめし剤,工業用接着剤,壊れた物の修理用接着剤,不凍剤,冷却剤,冷却装置において使用する化学品,封止剤,金属ねじ部品の対向面との固着防止用・ガスケットからの漏出防止用の化学剤,バッテリー液,工業用つや出し剤,ろ過剤,水圧用及び油圧用の作動液,燃料用化学添加剤,乗物用タイヤ修理用合成物,人造及び合成樹脂(未加工のもの)」

引用商標:
指定商品:第1類「無機酸類,アルカリ類,無機塩類,単体,酸化物,硫化物,炭化物,水,空気,芳香族,脂肪族,有機ハロゲン化物,アルコール類,フェノール類,エーテル類,アルデヒド類及びケトン類,有機酸及びその塩類,エステル類,窒素化合物,異節環状化合物,炭水化物,アラビヤゴム,クレオソート,しょうのう,しょうのう油,はっかのう,はっか油,ボルネオール,たんぱく質及び酵素,有機りん化合物及び有機ひ素化合物,有機金属化合物,界面活性剤,化学剤」

結論

原査定を取り消す。本願商標は、登録すべきものとする。

本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。

審決等の要点

本願商標は、別掲のとおりの構成からなるものである。

引用商標は、まとまりよく一体に表された「HI-CAT」の文字からなるところ、これから生じる「ハイキャット」の称呼も、冗長ではなく、無理なく一連に称呼し得るものである。そして、上記引用商標の構成及び称呼からすれば、取引者、需要者は、引用商標の構成全体をもって、一体不可分のものとして認識し、把握するとみるのが相当である。さらに、引用商標の構成中「HI-」及び「CAT」の文字のそれぞれについて、原審説示の意味合いを理解する場合があるとしても、その構成中「CAT」の文字部分のみが取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めるに足りる事情は見いだせない。

そうすると、引用商標は、一体不可分のものであるといわなければならない。

以上からすれば、引用商標の構成中「CAT」の文字部分を分離抽出し、その上で、本願商標と引用商標とは、称呼及び観念において共通する類似の商標であるとした原査定は、その前提において妥当なものということはできない。

コメント

原査定の拒絶理由では、引用商標中「HI」の文字部分が「高価な、高級の」等を意味する英語「high」に通じ、その略語として看取され、品質表示語と理解されることから、自他商品識別機能を発揮するのは「CAT」の文字部分であると判断されておりましたが、本件審決では、一体不可分に認識されると判断されております。同様に、「HI」の文字を構成に含む商標が一体不可分と判断された事案として、以下の審決例があります(≠は非類似を表す記号)。

・不服2009-1496:本願商標「」 ≠ 引用商標「

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(文責・前田)