本年7月にスターバックスやマクドナルドといったグローバル企業が全世界でプラスチック製ストローを段階的に廃止することを発表し、日本でも大きな話題になりました。また、8月17日には、すかいらーくホールディングスが国内企業として初めて、2020年までにプラスチックストローを全廃する方針を発表しました。

このような企業の決断の背景には近年国際的に議論されているプラスチックごみによる海洋汚染の問題があります。本稿では、このプラスチックごみの問題とそれに対する国内外の動向について解説します。

ポイント

骨子

  • 海洋におけるプラスチックごみの問題は、海洋の生態系や人間の生活に大きな影響を与えるものとして、国際的に非常に重要な環境問題として認識されています。
  • プラスチックごみの削減のための国際的な動きはここ最近加速してきており、プラスチック製品の提供禁止などの措置を採る(または採ろうとしている)国や地域も出てきています。また、プラスチック製ストローなどの廃止を決めた企業もあります。
  • 日本でのプラスチック製品に対する具体的な規制は現時点ではなく、議論が始まったばかりであるため、今後の具体的な規制の動向が注目されます。

解説

海洋におけるプラスチックごみ問題とは

プラスチックは現代社会においてはあらゆる製品に使用され、私たち生活に欠かせないものとなっています。しかしながら、特に近年、海洋に放出されるプラスチックごみによる生態系や人間の生活への悪影響が国際的に大きな問題として議論されています。

国連の発表によれば、プラスチックごみの9割が、リサイクルされておらず、毎年800万トン以上のプラスチックがゴミとして海に流れ込んでいます。これは毎分トラック1台分のプラスチックごみを海洋投棄するに等しい量です。

プラスチックごみはレジ袋などそれ自体を海洋生物が誤って体内に取り込んでしまうという問題もありますが、その中でも特に地球環境や人間の生活に悪影響を及ぼすと言われているのは、マイクロプラスチックと呼ばれる大きさが5mm以下の微細なプラスチックです。マイクロプラスチックには、洗顔料などに含有されるスクラブなどの元々小さな粒子(一次的マイクロプラスチック)と、発砲スチロールやビニール袋などのプラスチックごみが海に流れ込んで漂流している間に劣化して壊れてできたもの(二次的マイクロプラスチック)があります。

マイクロプラスチックは漂流中に有害な化学物質を吸着して濃縮する特徴があり、誤ってこれを取り込んだ魚や鳥からの食物連鎖による生態系への悪影響が懸念されています。また、魚などを通じて人間の体内に取り込まれる恐れもあります。

国際的動向

国連及び国際会議における議論の状況

2015年に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」とその17の持続可能な開発目標(SDGs)においては、目標の1つとして「海洋環境の保全」を挙げています。そこでは、世界の海に流れ込むゴミの量が増えていることが、環境と経済に大きな影響を及ぼしつつあることが指摘されています。

海洋の環境問題を取り上げた初の国連会議として、2017年6月、国連海洋会議が開催されました。同会議においては、各国の自主的な取組を呼びかける「行動への呼びかけ」(call for action)が採択されました。この呼びかけにおいては、レジ袋や使い捨てプラスチック製品をはじめ、プラスチックとマイクロプラスチックの利用を減らすための長期的かつ本格的な戦略の実施などが合意されました。

また、「海洋プラスチックごみ及びマイクロプラスチック」に関する決議が採択され、海洋プラスチックごみ及びマイクロプラスチックに対処するための障害及びオプションを精査するための専門家グループ会合を招集することが決定されました。

更に、2018年6月9日に開催されたG7サミットでは、日本と米国を除く参加国(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、イギリス及びEU)の首脳により「G7海洋プラスチック憲章」が承認されました。

このプラスチック憲章では、以下のことが確認されています。(Sustainable Japan/2018/06/11のNewsより引用)

  • 2030年までに、プラスチック用品を全て、再利用可能あるいはリサイクル可能、またどうしても再利用やリサイクル不可能な場合は、熱源利用等の他の用途への活用(リカバリー)に転換する
  • 不必要な使い捨てプラスチック用品を著しく削減し、プラスチック代替品の環境インパクトも考慮する
  • プラスチックゴミ削減や再生素材品市場を活性化するため政府公共調達を活用する
  • 2030年までに、可能な製品について、プラスチック用品の再生素材利用率を50%以上に上げる
  • プラスチック容器の再利用またはリサイクル率を2030年までに55%以上、2040年までに100%に上げる
  • プラスチック利用削減に向けサプライチェーン全体で取り組むアプローチを採用する
  • 海洋プラスチック生成削減や既存ゴミの清掃に向けた技術開発分野への投資を加速させる
  • 逸失・投棄漁具(ALDFG)等の漁業用品の回収作業に対する投資等を謳った2015年のG7サミット宣言実行を加速化する。

なお、日本がこの憲章に署名を行わなかった理由については、「産業界と調整する時間が足りなかった」からであると釈明されています(日経新聞2018年8月18日朝刊)。

EU 及び英国

海洋のプラスチックごみの対応について、最も早い段階からドラスティックな対応を採っているのはEUです。EUは2015年12月に資源循環のための枠組みである「サーキュラー・エコノミー行動計画」を定め、廃棄物や容器包装の削減やリサイクルを具体的に推し進めてきました。

また、欧州委員会は、2018年5月28日、海洋におけるプラスチックごみの削減のために新たな規制案を提案しました。同規制案においては、プラスチック製品の品目毎に、消費削減、市場規制、製品デザイン要求、ラベル要求、拡大生産者責任、デポジット制度の利用、意識向上といったとるべき措置を定めています。最近話題となっているプラスチック製ストローは、プラスチック製のカトラリー、皿、マドラーとともに市場規制(代替物が容易に手に入る製品は禁止する)が採られることとされています。詳細はEUのプレスリリースもご参照下さい。

英国も、2018年4月、プラスチックストロー、マドラー及び綿棒の販売を禁止する意向を発表し、早ければ来年にも規制を含む新しい法律が施行される予定です。

米国

前述のとおり、米国は、日本同様、海洋プラスチック憲章に署名しませんでしたが、連邦制を採る同国においては、先駆けて規制を採り始める州が出てきています。

まず、カリフォルニア州及びニューヨーク州においては、プラスチックス製ストローを禁止する法案が検討されています。また、2018年7月1日以降、シアトル、マイアミ・ビーチ、オークランドなど10を超える市で飲食店におけるプラスチックストロー等の供給禁止か、消費者が必要な旨を伝えなければ供給できないとする規制がなされています。

また、レジ袋に関しては、カリフォルニア州が大規模小売店による使い捨てレジ袋の提供を禁止し、ハワイ州が生分解性でないレジ袋の会計時における提供を禁止するなど、複数の州で規制が行われています。

アジア諸国

アジア諸国の中では、中国が2008年にレジ袋の禁止と有料化に着手し、薄手プラスチックバッグの使用禁止及び厚手のプラスチックバッグの有料化を実施し、プラスチックバッグの使用を3分の1に削減することに成功しました。さらに、2018年には、プラスチックごみの輸入を禁止し、これまでプラスチックごみの処理を中国への輸出に依存していた国々に大きな衝撃を与えました。

台湾では、2018年2月にEPAが「台湾における海洋ごみ管理のアクションプラン」(”the Action Plan of Marine Debris Governance in Taiwan”)を発表し、ここには、2030年までにレジ袋などのリサイクルできないプラスチック製品を禁止することが含まれています。また、同プランでは、2019年からプラスチック製ストローの供給禁止に取り組むとされており、来年にも具体的な規制が始まることになります。

また、インドのムンバイでは、2018年6月より、使い捨てプラスチック製品の使用が禁止されるようになったほか、首相が2022年までに全ての使い捨てプラスチック製品を禁止すると述べるなど、国全体としても規制に向かった動きがあります。

日本国内の動向

日本においては、循環型社会形成推進基本法が循環型社会の形成について、基本原則を定め、また、循環型社会形成推進基本計画の策定その他循環型社会の形成に関する施策の基本となる事項を定めています。2018年6月19日、第4次循環型社会形成推進基本計画が閣議決定され、プラスチックの資源循環を総合的に推進するための戦略の策定及びこれに基づく施策を進めていくことが明記されました。

また、家庭から排出されるプラスチックごみとして大きな割合を占める容器包装については、容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(容器包装リサイクル法)が容器包装廃棄物の排出の抑制、分別収集及びリサイクル促進のための措置を定めています。もっとも、レジ袋等のプラスチック製品を規制したり、その使用に一定の支払を義務付ける法律は現時点においてはありません。

日本国内における海洋プラスチックごみ対策としては、2018年6月に、「美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境の保全に係る海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律」(海岸漂着物処理推進法)が改正され、マイクロプラスチック対策などが盛り込まれるとともに、法律名も「美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境並びに海洋環境の保全に係る海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律」に改められました。

改正法においては、マイクロプラスチック対策として、以下の3点を規定しています。(新第6条第2項、新第11条の2、附則第2項)。もっとも、この法律は事業者に努力義務を定めるにとどまっています。

  1. 海岸漂着物対策は、プラスチック類の円滑な処理及び廃プラスチック類の排出の抑制、再生利用等による廃プラスチック類の減量その他その適正な処理が図られるよう十分配慮されたものでなければならない
  2. 事業者は、マイクロプラスチックの海域への流出が抑制されるよう、通常の用法に従った使用の後に河川その他の公共の水域又は海域に排出される製品へのマイクロプラスチックの使用の抑制に努めるとともに、廃プラスチック類の排出が抑制されるよう努めなければならない
  3. 政府は、最新の科学的知見及び国際的動向を勘案し、海域におけるマイクロプラスチックの抑制のための施策の在り方について速やかに検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる

また、平成30年度の予算として、海岸漂着物地域対策推進事業に補助金が出されることが決まっています(平成30年度予算:4億園、平成29年度補正予算:27.1億円)。今後は、2019年6月に大阪で開催されるG20で議論するために対応策を検討していくこととされています。詳細は環境省公表の資料(海洋プラスチック問題について)もご参照下さい。

前述のとおりG7会議で海洋プラスチック憲章がまとまったことを受けて、環境省は、中央環境審議会循環型社会部会プラスチック資源循環戦略小委員会を設置し、2018年8月17日、第1回の委員会が開催されました。同委員会では今後議論すべき論点として、以下の7つを挙げています。

【1.リデュース・リユース】
◯ 我が国は一人当たり容器包装排出量が多く、また、使い捨てプラスチックの容器包装や製品の代替・回避等を通じた大幅削減が国際的に求められている中、環境負荷の低減に資するプラスチックの使用削減をどのように進めるべきか。

【2.回収・リサイクル】
◯ アジア大の禁輸措置のトレンドや未利用プラスチックが相当程度あること等を踏まえ、使用済プラスチックの徹底的かつ効果的・効率的な回収・リサイクルをどのように進めるべきか。

【3.再生材・再生可能資源の利用】
◯ リサイクルで得られた再生材や再生可能資源であるバイオマスプラスチック等について、需要拡大、実用性向上や化石資源由来のプラスチックからの置き換えなどの利用促進をどのように図るべきか。

【4.海洋プラスチック対策】
◯ 我が国の陸域から年間数万トンのプラスチック廃棄物が海洋流出しているとの推計を踏まえ、プラスチック廃棄物の海洋流出防止や海岸漂着物等の海洋プラスチック対策をどのように進めるべきか。

【5.国際展開】
◯ 資源・廃棄物制約はグローバルな問題であり、プラスチックの海洋流出が途上国を含む世界全体の課題であることを踏まえ、世界のプラスチック対策をリードしていくため、我が国として国際協力をはじめ、どのように国際展開を図るべきか。

【6.海洋プラスチック憲章】
◯ 海洋プラスチック憲章に掲げられた期限付き数値目標や各種取組事項について、どのように評価し、踏まえるべきか。

【7.効果】
◯ こうしたチャレンジを通じて、環境負荷低減はもとより、技術やライフスタイルのイノベーション、資源循環関連産業の振興、雇用創出等のプラスの効果をいかに発揮できるか。

同審議会では、関係各所へのヒアリングを行った上で議論を進め、今年度(2018年度)中に意見の最終とりまとめを行うことが予定されています。さらに、8月20日には、環境省が、「プラスチック資源循環戦略」に海洋プラスチック憲章の数値目標を反映させる方針を固めたことも報道されました。

これまで日本ではレジ袋の有料化などが繰り返し議論されてきてはいるものの国としての抜本的な解決策は採られていないのが現状です。具体的規制に関する議論はまだ始まったばかりですが、今後は具体的な数値目標が設定された上で、それを実現するための法律が制定されることが予想されます。

コメント

プラスチックごみ問題は最近になって議論が急に活発になり、今後、世界中の国と地域で規制が実施されることが予想されます。日本でも具体的な規制が進んでいくことになるでしょう。

第4次循環型社会形成推進基本計画では、具体的施策の1つとして、生分解性のバイオプラスチックの実用性向上と化石燃料由来プラスチックとの促進が謳われており、代替品の製造や、プラスチックリサイクル技術の向上といった新たな取組も必要になると思われます。

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(文責・町野)