本年(令和3年)4月21日、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(通称「プロバイダ責任制限法」)の一部を改正する法律が第204回国会において成立し、同28日に公布されました。

今回の改正は、インターネット上の誹謗中傷などによる権利侵害の被害回復がより早期になされるよう、同法が定める発信者情報開示について新たな裁判手続(非訟手続)を創設する、ログイン型サービスに係る発信者情報に対応するなどの制度的見直しを行ったものとなり、実務上重要ですので紹介します。

ポイント

改正法案骨子

  • 従来の発信者情報開示に係る裁判手続に加え、新たな裁判手続として非訟手続を創設しました。
  • ログイン型投稿に係る発信者情報開示に対応すべく、開示請求を行うことができる範囲を拡大しました。
  • 開示請求を受けた事業者が発信者に対して行う意見照会において、発信者が開示に応じない理由の照会をできるようにました。

改正法案概要

法律名 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律
法律番号 令和3年法律第27号
成立日 令和3年4月21日
公布日 令和3年4月28日
施行日 公布から1年6月以内

解説

プロバイダ責任制限法

特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(通称「プロバイダ責任制限法」)は、特定電気通信(ウェブサイト・SNS等)による情報の流通によって権利の侵害があった場合に、特定電気通信役務提供者(プロバイダ等)の損害賠償責任の制度及び発信者情報の開示を請求する権利について定めています。

その目的は、削除措置を講じた場合等におけるプロバイダ等の責任範囲を限定することにより、削除されるべき情報をプロバイダ等において適切に削除等できるよう促すとともに、権利を侵害された者が発信者を特定して自ら被害を回復する手段を確保することにあります。

このような目的を持つプロバイダ責任制限法は、被害者救済と、適法な情報発信を行っている者の表現の自由、プライバシー及び通信の秘密という相反する利益の調整を行う法律ということになります。

改正の趣旨

本改正の趣旨は、同法の定める発信者情報開示について新たな裁判手続(非訟手続)を創設するとともに、ログイン型投稿における発信者情報の開示が可能となるよう条文を見直すこと等により、インターネット上の誹謗中傷などによる権利侵害についてより円滑に被害者救済を図ることにあります。

改正の項目

主な改正の項目は以下の3点となります。
1.新たな裁判手続の創設
2.開示請求を行うことができる範囲の拡大(ログイン型投稿への対応)
3.事業者による意見照会における発信者が開示に応じない理由の照会

1.新たな裁判手続の創設

現行制度の問題点

SNSやWEB掲示板に誹謗中傷する投稿を行った発信者に対し損賠賠償請求をするにあたり、被害者が当該発信者の情報を得ようとする場合、プロバイダ等から発信者情報が裁判外で任意に開示されることは少ないため、多くの場合で裁判手続による必要があります。

現行制度における裁判手続では、一般に、
①コンテンツプロバイダへの開示請求(仮処分申立て)をして、発信者の権利侵害投稿の際の通信記録、具体的にはIPアドレス及びタイムスタンプを取得し、それをもとに、
②アクセスプロバイダへの開示請求(訴訟提起に加え、消去禁止の仮処分申立てを伴う)をして、発信者の氏名及び住所を取得するという2段階の裁判手続が必要です。

そして、これにより取得した発信者の氏名と住所を利用して、③裁判上で損害賠償請求をするとなると、被害者が権利侵害による被害を回復するには、3段階も裁判手続を行う必要があるということになります。

このような裁判手続は長期に及ぶことから、短期保存のログが消えてしまう危険があるとともに、被害者にとって、金銭的・精神的負担も多大なものとなっていました。

新たな裁判手続の概要
  • 発信者情報の開示を一つの手続で行うことを可能とする新たな裁判手続(非訟手続)を創設する。
  • 裁判所による開示命令までの間、必要とされる通信記録の保全に資するため、提供命令及び消去禁止命令を設ける。
  • 裁判管轄など裁判手続に必要となる事項を定める。
非訟手続とは

訴訟手続は、具体的事件に法規を適用して権利義務の存否を判断する民事司法作用を規律する手続であるのに対し、その対概念である非訟手続は、国家が私人間の生活関係に後見的に介入してその調整を図る民事行政作用を規律する手続であると説明されます。紛争性の高いものでは、例えばDV防止法に基づく保護命令申立事件、紛争性の低いものでは、民法に基づく後見開始の審判申立事件などが非訟手続となります。

非訟事件は、各法で事件類型が定められていますが、その手続きは、原則として非公開であり、裁判所が職権で資料の探知や収集ができるなど、裁判所による柔軟かつ機動的な裁量権行使が認められ、またそれが期待されます。

現行の開示請求権との関係

改正法では、現行プロバイダ責任制限法上の開示請求権を存置し、これに加えて非訟事件としての手続を設けることとしました。

これにより、争訟性が低く訴訟に移行しない事件については非訟手続限りでの早期解決が図られる、非訟手続において異議ある場合には訴訟手続が保障される、異議ない場合には既判力が生じるため蒸し返しの防止が期待できる、請求権も存置されているため裁判外での開示も可能である、といったメリットがあるとされます。

新たな裁判の具体的手続

新たな裁判の具体的手続としては、被害者は、裁判所に対して、コンテンツプロバイダ(掲示板運営事業者・SNS事業者等)に対する開示命令を申し立てることにより、手続が開始されます。

コンテンツプロバイダにおいて、アクセスプロバイダ(通信事業者等)の名称と住所が判明する場合は、提供命令により、コンテンツプロバイダがアクセスプロバイダの名称と住所を被害者に提供します(改正法15条1項1号イ)。
これをもとに被害者が同じ裁判所に対して、アクセスプロバイダに対する開示命令を申し立てることにより、コンテンツプロバイダからアクセスプロバイダに対して、IPアドレス等アクセスプロバイダが発信者を特定するための発信者情報が提供されます(提供命令・同2号)。

そして、発信者情報開示請求の要件を満たすと裁判所が判断した場合、コンテンツプロバイダが保有するIPアドレスや、アクセスプロバイダが保有する発信者の氏名・住所等が被害者に開示されます(開示命令・改正法8条)。

第四章 発信者情報開示命令事件に関する裁判手続

(発信者情報開示命令)

第八条 裁判所は、特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者の申立てにより、決定で、当該権利の侵害に係る開示関係役務提供者に対し、第五条第一項又は第二項の規定による請求に基づく発信者情報の開示を命ずることができる。

(提供命令)

第十五条 本案の発信者情報開示命令事件が係属する裁判所は、発信者情報開示命令の申立てに係る侵害情報の発信者を特定することができなくなることを防止するため必要があると認めるときは、当該発信者情報開示命令の申立てをした者(以下この項において「申立人」という。)の申立てにより、決定で、当該発信者情報開示命令の申立ての相手方である開示関係役務提供者に対し、次に掲げる事項を命ずることができる。

一 当該申立人に対し、次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じそれぞれ当該イ又はロに定める事項(イに掲げる場合に該当すると認めるときは、イに定める事項)を書面又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって総務省令で定めるものをいう。次号において同じ。)により提供すること。

イ 当該開示関係役務提供者がその保有する発信者情報(当該発信者情報開示命令の申立てに係るものに限る。以下この項において同じ。)により当該侵害情報に係る他の開示関係役務提供者(当該侵害情報の発信者であると認めるものを除く。ロにおいて同じ。)の氏名又は名称及び住所(以下この項及び第三項において「他の開示関係役務提供者の氏名等情報」という。)の特定をすることができる場合 当該他の開示関係役務提供者の氏名等情報

ロ 当該開示関係役務提供者が当該侵害情報に係る他の開示関係役務提供者を特定するために用いることができる発信者情報として総務省令で定めるものを保有していない場合又は当該開示関係役務提供者がその保有する当該発信者情報によりイに規定する特定をすることができない場合  その旨

二 この項の規定による命令(以下この条において「提供命令」といい、前号に係る部分に限る。)により他の開示関係役務提供者の氏名等情報の提供を受けた当該申立人から、当該他の開示関係役務提供者を相手方として当該侵害情報についての発信者情報開示命令の申立てをした旨の書面又は電磁的方法による通知を受けたときは、当該他の開示関係役務提供者に対し、当該開示関係役務提供者が保有する発信者情報を書面又は電磁的方法により提供すること。

以下略

この間、発信者を特定することができなくなることを防止するため、裁判所は消去禁止命令を発令することができ、各プロバイダにおいて迅速なログの保全が行われます(改正法16条1項)。そのため、裁判所は個々の事案に応じて、発信者の特定について短期で迅速に判断することもでき、また、時間をかけて丁寧に判断することもできるということになります。

(消去禁止命令)

第十六条 本案の発信者情報開示命令事件が係属する裁判所は、発信者情報開示命令の申立てに係る侵害情報の発信者を特定することができなくなることを防止するため必要があると認めるときは、当該発信者情報開示命令の申立てをした者の申立てにより、決定で、当該発信者情報開示命令の申立ての相手方である開示関係役務提供者に対し、当該発信者情報開示命令事件(当該発信者情報開示命令事件についての第十四条第一項に規定する決定に対して同項に規定する訴えが提起されたときは、その訴訟)が終了するまでの間、当該開示関係役務提供者が保有する発信者情報(当該発信者情報開示命令の申立てに係るものに限る。)を消去してはならない旨を命ずることができる。

以下略

その他
裁判管轄

開示命令申立ての裁判管轄は、相手方の主たる営業所の所在地を管轄する裁判所に申立てが可能なほか(改正法10条2項)、管轄権を有する裁判所が東日本であれば東京地方裁判所、西日本であれば大阪地方裁判所にも申立てが可能とされるなど(同3項)、被害者に一定の便宜が図られています。

決定の効力

また、開示命令申立てに対する開示決定・不開示決定の効力として、当該決定に対し当事者に不服がない場合は、当該決定が確定判決と同一の効力を持つことになります(改正法14条5項)。そのため、非訟手続であっても紛争の蒸し返しが防止され、また、開示決定の場合は、その内容をもとに強制執行(間接強制)の手続ができます。
他方、決定に不服がある当事者は、異議の訴えを提起することができ、これに対する判決を得ることができます(同1項)。

2.開示請求を行うことができる範囲の拡大(ログイン型投稿)

現行制度の問題点

近年、SNS 等の中には、自らのアカウントにログインした状態で様々な投稿を行うことができるログイン型サービスが増加していますが、現行法では、このログイン型サービスによる投稿で権利侵害が生じた場合に被害者が発信者情報開示請求をしようとすると、以下のような問題が生じることが指摘されていました。

  • ログイン型サービスの中には、投稿時のIPアドレスが保存されず、ログイン時情報(ログイン時のIPアドレス及びタイムスタンプ)のみ保存されているという場合があるところ、投稿時ではなくログイン時の情報が現行法上の「発信者情報」に該当するか否かについては明確になっておらず、裁判例も肯定するものと否定するものとが分かれていました。
  • ログイン型サービスでは、パソコンやスマホ、タブレット等から同時にログインできるため、問題となっている投稿が、どのアクセスプロバイダを経由したものか不明であり、発信者の氏名等の開示請求が認められないという結論となることがありました。

範囲拡大の概要
  • 発信者の特定のために必要となる一定の場合については、ログイン時情報の開示請求を可能にする。
  • 権利侵害となる投稿に係る通信を媒介したアクセスプロバイダ(通信事業者等)とともに、ログイン時等の通信を媒介したアクセスプロバイダも開示請求の相手方に位置付ける。
発信者情報

「発信者情報」とは、氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいいます(改正法2条6号)。
なお、現行の総務省令(「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第四条第一項の発信者情報を定める省令」)で定める「発信者情報」(現行法4条1項)には、以下のものがあります。

① 発信者その他侵害情報の送信に係る者の氏名又は名称
② 発信者その他侵害情報の送信に係る者の住所
③ 発信者の電話番号(令和2年8月31日改正省令により追加)
④ 発信者の電子メールアドレス
⑤ 侵害情報に係るIPアドレス、ポート番号
⑥ 侵害情報に係る携帯電話端末・PHS端末からのインターネット接続サービス利用者識別符号
⑦ 侵害情報に係るSIMカード識別番号
⑧ ⑤~⑦の端末等から開示関係役務提供者の用いる設備に侵害情報が送信された年月日・時刻(タイムスタンプ)

条文の解説

改正法において、発信者情報の開示請求の根拠条文は下に引用するとおりですが、改正法5条は、概要、権利侵害投稿を媒介した各プロバイダへの請求権(同1項)に加え、当該投稿を媒介していないが、その投稿をするためのログイン等を媒介したプロバイダへの請求権(同2項)をも基礎付け、また、権利侵害投稿を媒介したプロバイダへの請求権の中でも、開示の対象としてログイン等情報(同1項柱書後段)とそれ以外の発信者情報(同1項柱書前段)とを分けて要件を定めるという構成からなっています。

(発信者情報の開示請求)

改正法第五条 特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者に対し、当該特定電気通信役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報のうち、特定発信者情報(発信者情報であって専ら侵害関連通信に係るものとして総務省令で定めるものをいう。以下この項及び第十五条第二項において同じ。)以外の発信者情報については第一号及び第二号のいずれにも該当するとき、特定発信者情報については次の各号のいずれにも該当するときは、それぞれその開示を請求することができる。

一 当該開示の請求に係る侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。

二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他当該発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。

三 次のイからハまでのいずれかに該当するとき。

イ 当該特定電気通信役務提供者が当該権利の侵害に係る特定発信者情報以外の発信者情報を保有していないと認めるとき。

ロ 当該特定電気通信役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る特定発信者情報以外の発信者情報が次に掲げる発信者情報以外の発信者情報であって総務省令で定めるもののみであると認めるとき。

⑴当該開示の請求に係る侵害情報の発信者の氏名及び住所
⑵当該権利の侵害に係る他の開示関係役務提供者を特定するために用いることができる発信者情報

ハ 当該開示の請求をする者がこの項の規定により開示を受けた発信者情報(特定発信者情報を除く。)によっては当該開示の請求に係る侵害情報の発信者を特定することができないと認めるとき。

2 特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、次の各号のいずれにも該当するときは、当該特定電気通信に係る侵害関連通信の用に供される電気通信設備を用いて電気通信役務を提供した者(当該特定電気通信に係る前項に規定する特定電気通信役務提供者である者を除く。以下この項において「関連電気通信役務提供者」という。)に対し、当該関連電気通信役務提供者が保有する当該侵害関連通信に係る発信者情報の開示を請求することができる。

一 当該開示の請求に係る侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。

二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他当該発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。

3 前二項に規定する「侵害関連通信」とは、侵害情報の発信者が当該侵害情報の送信に係る特定電気通信役務を利用し、又はその利用を終了するために行った当該特定電気通信役務に係る識別符号(特定電気通信役務提供者が特定電気通信役務の提供に際して当該特定電気通信役務の提供を受けることができる者を他の者と区別して識別するために用いる文字、番号、記号その他の符号をいう。)その他の符号の電気通信による送信であって、当該侵害情報の発信者を特定するために必要な範囲内であるものとして総務省令で定めるものをいう。

(1) 権利侵害となる投稿の場を提供したコンテンツプロバイダ・当該投稿に係る通信を媒介したアクセスプロバイダに対する開示請求

開示請求の相手方

まず、改正法5条1項について、上の図を例にすると、

開示請求の相手方となる
「当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者」
権利侵害となる投稿の場を提供したコンテンツプロバイダ(掲示板運営事業者・SNS事業者等)
・当該投稿に係る通信を媒介したアクセスプロバイダ(通信事業者等)

となります。
これらのプロバイダに対しては、同項により、一定の要件のもと、権利侵害に係る「特定発信者情報」(ログイン時情報等の発信者情報)やそれ以外の「発信者情報」の開示請求が認められます。

特定発信者情報以外の発信者情報の場合

これらのプロバイダに対する開示請求の要件は、ログイン時情報等の発信者情報以外の「発信者情報」の開示の場合は、従前の要件と変わりなく、
①権利侵害の明白性(改正法5条1項1号該当)
②開示を受ける正当理由(改正法5条1項2号該当)
が認められれば足ります。

特定発信者情報の場合

他方、「特定発信者情報」(ログイン時情報等の発信者情報)の開示の場合、
①権利侵害の明白性(改正法5条1項1号該当)
②開示を受ける正当理由(改正法5条1項2号該当)
のほか、
③補充性(改正法5条1項3号イ~ハのいずれかに該当・例えばログイン時情報しか保有していないなど)
が必要です。
この補充性の要件は、権利侵害投稿とは関係の薄い他の通信の秘密やプライバシーを侵害するおそれがあることを考慮して付加されたものです。

(2) 当該投稿時の通信を媒介していないが、当該投稿をするためのログイン時等の通信を媒介したアクセスプロバイダに対する開示請求

次に、改正法5条2項について、

開示請求の相手方となる
「関連電気通信役務提供者」
当該投稿時の通信を媒介していないが、当該投稿をするためのログイン時等の通信を媒介したアクセスプロバイダ(通信事業者等)

となります。
このプロバイダに対しては、
①権利侵害の明白性(改正法5条2項1号該当)
②開示を受ける正当理由(改正法5条2項2号該当)
を満たす場合、ログイン等通信に係る氏名・住所等の「発信者情報」の開示請求が認められます。

3.事業者による意見照会における発信者が開示に応じない理由の照会

現行法では、開示請求手続はプロバイダが直接的な当事者となるため、プロバイダが発信者に対し、開示請求に応じるかどうかの意見照会をすることにより、発信者の権利利益の確保を図るという構造をとっています。
この点については、改正法における新しい裁判手続においても、同様の構造が維持されています。

この意見照会に関する改正点として、発信者の意見を踏まえプロバイダがより適切に対応することができるよう、任意開示を含む開示請求を受けたプロバイダが発信者に対して行う意見照会において、発信者が開示に応じない場合には、「その理由」も併せて照会することとするなどの改正がなされました(改正法6条1項)。

コメント

SNS等での投稿による重大な権利侵害が社会問題となる中で、本改正は、迅速な被害回復を目指す取り組みとして、一定の評価ができるものと思われます。改正法の施行に向けて、現在、関係省令の整備や逐条解説、業界ガイドラインの改訂作業が進められているものと思われ、それらの公表も待たれるとともに、施行後の実務運用にも着目していただければと思います。

本記事に関するお問い合わせはこちらから

(文責・村上)